東京都知事 石原慎太郎様
東京都大学管理本部長 山口一久様

     東京都による大学「改革」に対する抗議声明
                                     
 現在、石原慎太郎都知事の意向を受けた東京都大学管理本部によって、都立4大学(東京都立大学・科学技術大学・保健科学大学・都立短期大学)は廃校を宣告され、管理本部と一部の有識者だけで構想された新大学が設置されようとしている。中でも、東京都立大学人文学部および大学院である人文科学研究科は、特に不条理な「改革」を押し付けられている。
 総合女性史研究会は、今次の東京都による大学「改革」に対して、以下の観点から強く抗議する。
 東京都立大学は、日本における人文科学研究の拠点であり、優れた人材を多く学界に送るとともに、生涯学習にも貢献してきた。特に、日本の女性史研究分野においても、第一線で活躍する研究者には東京都立大学の卒業生が少なくない。このことは、東京都立大学人文学部および人文科学研究科の自由な学風と新しい問題関心を育てる気風の反映であり、充実した研究環境のあかしでもある。
 しかし、このたびの「改革」において、現東京都立大学人文学部の教員は半数以下に削減され、新大学においては現人文学部における文学・語学系専攻は廃止、史学を含めた他の専攻は、「都市教養学部」という学問的には何ら裏付けのない学部に包摂されようとしている。他学部ではここまでの改編・リストラはなく、東京都が人文科学系学科を解体しようとしていることは明らかである。
 このような大学「改革」が実現した暁には、日本における人文系学問の発展に大きなマイナスになるばかりか、学生・院生は学習・研究の場を失い、創立以来国内はもとより国際的にも高い評価を受けてきた学術的財産が失われることは必至である。女性史を研究するものとして、この東京都立大学人文学部および人文科学研究科に対する攻撃を、絶対に見過ごすわけにはいかない。
 本会は、石原慎太郎都知事および東京都大学管理本部に対し、この大学「改革」を一から見直し、日本の知的財産たる東京都立大学人文学部および人文科学研究科の成長を支え、真に都民の立場に立った改革を実現するよう求めるものである。

                           2003年11月29日
                           総合女性史研究会役員会