“エクステンションセンターに関わって提案する大学院のあり方等を含め、
 全学的な資源を使って、定員の減ることに対応する院生、
 学生の学習研究に係る条件整備を追求すべき”

“任期制・年俸制については、できるだけ早く大学の見解を
 表明すべき”

“「教養教育」と「大学院」については都立大学案を大学管
 理本部・教学準備委員会に提出し、教学 準備委員会で扱
 うよう要請している” 

−12月3日「大学改革説明会」で都立大学茂木総長−


 都立大学「大学改革の現況と本学の取り組みについて」説明会概況

1 日 時:12月3日(水)4’ 時限(実時間は16:25〜18:21)
2 場 所:講堂大ホール
3 概 況:阿知波学生部長の司会で進められ、最初に総長が以下の3点にわたって報告、その後、教養教育WG報告(丹治教養部長)と大学院WG報告(中林都市科学研究科長)が配布資料に基づいてあり、質疑(発言は延べ18人(学部学生7人、大学院生3人、教員7人、職員1人))が行われました。なお、WG報告と質疑の内容については、紙面の都合で割愛させていただきます。(WG報告の資料の一部を「手から手へ」第2244号に掲載します。)また、総長の発言内容については、組合の責任でまとめさせていただきましたが、正確を期して、当日の発言を総長が若干修正した部分があります。


 総長 みなさん授業の合間、お仕事の合間にお集まり頂き、ありがとうございます。学生対象の説明会を10月15日に行い、教職員対象の説明会を10月16日に行ったが、その後の経過の中から3点に絞って報告・説明したい。
 一つは10月31日に学内に掲示した大学管理本部からのお知らせに関わる問題である。もう一つは教員の任期制・年俸制についての問題である。3つ目がこの間学内で立ち上げ、検討してきたワーキンググループについてのことである。

10月31日に管理本部からのお知らせというものを学内に掲示した。この掲示は、同日、事務局長が管理本部から持ち帰り、当日のうちに学内に掲示してほしいとの依頼があったので、これに基づき掲示したものである。その後、この「学生・院生の皆さんへ」と題するものは、大学管理本部のホームページに掲載されたので、皆さんも直接見ることができる。私は10月31日に掲示することとしたが、掲示してほしいという内容について全面的には責任が持てないというふうに判断した。そこで、横線を引いて、その線より下が管理本部から送られてきた文書であることが判るようにして掲示した。また、掲示に当たっては、元の文書の中から2カ所を削除した。1カ所は、17年度開設とされる新大学の大学院に関する記述で、大学管理本部の文書は「便宜的かつ暫定的に」と書いてあった。「便宜的に」というのは、いかにも現在いる学生の皆さんやあるいはそれを見る学外の方にとっても大学院の位置づけが軽いというふうに受け取られかねない表現なので、私の判断で、「便宜的かつ」というのをはずした。「暫定的」というのは残した。それからもう一つは、最後のところに、「具体例等」という項目があったが、そのうちの最初の二つは残して三つ目ははずした。はずした部分は何かというと、15年度以前の入学者の在学期間に関して、休学期間をこれに組み入れるという表現があったので、これは学則改正にも関わる問題であるので、軽々に管理本部のケースといえども出すのは混乱を招くと判断したので、はずした訳である。この2点をはずしたが、なにか非常に素っ気ない説明を都立大学総長はしているとどこかで耳にしたが、私はむしろかなり正確に管理本部の文書を紹介したと考えている。なお、管理本部は22年度まで現大学を存続させ、23年度に、必要なものは新大学への編入など個別具体的な措置を検討する、としていることについて現段階での総長見解を述べたいと思う。これは、総長としての見解であり、まだ部長会あるいは評議会等で披露し、了解を得たというものではないが、大方の支持が得られるだろうと考えて、今考えていることを紹介するわけである。この見解をとると言うことをもう少し早くしていれば、掲示をしたこと自体軽率であったと非難される可能性があるが、その点は批判を甘受したいと思う。実はその後勉強して、このような見解をとることとしたという経過があるので、お許しいただきたい。つまり、国立大学の例をとると、例えば東京商船大学と東京水産大学が合併あるいは統合して海洋大学になる、ということは皆さんご存じのとおりである。二つの大学が一つの大学になるということであるが、その措置を見ると、国立大学設置法の廃止によって法的にはなくなる。しかし、ヴァーチャルにだが、東京水産大学も存続し、東京商船大学も存続し、新しい海洋大学が設立されるという関係になる。したがって、例えば東京水産大学の学生は、入学したときの教育課程あるいは在学期間を含む学則がその後も保障される。学生証は「東京水産大学○○学部の学生であることを証する」という学生証が出される。出す主体は、海洋大学の学長である。また、例えば水産大学の学生が課程を修了した場合は、卒業証書は「東京水産大学の課程を修了したことを認める」となるのかもしれない。とにかく、教育課程その他学則の諸規定、その他いろいろ、身分上処遇上基本的な変化がない、ということになるわけである。国立大学の場合は二つの大学が合体する場合でも、それに伴う教員の削減などは大幅にあるわけではない。したがって、現大学の教育課程の保障等が比較的容易であると判断されるわけである。都立大学の場合どうかというと、大学管理本部はあの掲示にも見られるとおり、22年度まで現大学を存続させることとしたい、言い換えると22年度をもって廃止するとしたわけであるが、これは具体的に法令に関わることで言えば、都立大学条例の廃止を行うということになるのであろう。学内ではそれに伴って現在の学則の改正を行う必要があるかという問題が出てくるが、そもそも、国立大学の例を見るまでもなく、あるいは見ればいっそうはっきりするということであるが、その必要はない、あるいはあってはならない、ということであって、現在の都立大学の学生は、公立大学法人東京都立大学というように位置づけは変わるかもしれないが、教育課程の保障、あるいは学生証その他について基本的には変えないでいける、そして卒業証書も「都立大学の課程を修了した」というのが出ると考えるべきだと思うわけである。このように考えるのが正しいと私は思っておりまして、管理本部と見解を異にするのではないかと思う。しかし、都立の新大学の場合、国立大学と違って、教員定数に大幅な削減が予想される部分がある。どの学部も同じようにというわけではないが、実際にそういうことが予想され、あるいは予定されている。特にそうすると現在の教育課程に沿った学習権の保障、カリキュラムの保障などが大変な困難を抱えることが、予想できる。とりわけ、大学院などの場合に、かなり専門性の高いところで勉強し指導を受けているので、その指導教授が仮にいなくなった場合に、それにかわる教育研究組織がない場合には、かわりの人が指導を受け継ぐと言うことができないわけで、大変な困難を抱えることになる。このことは、通常ではほとんどないことであり、非常に心配な点である。私は、学内のワーキンググループでエクステンションセンターはどうあるべきかと言うことを考えたり、いろいろ検討していただいているが、それらを含め、エクステンションセンターに関わって提案する大学院のあり方なども含めて、全学的な資源を使ってなんとか、定員の減ることに対応する院生、学生の学習研究に係る条件整備を追求すべきだと考えている。

第二点目に教員の任期制・年俸制についてだが、これには重大な問題点が含まれていると認識している。この点は私個人ではなく、すでに部長会、評議会その他でもいろいろ重要な疑問点あるいは意見が出てきている。ただし、まだ十分に管理本部が何を考えているのか、問題はどこにあるのか、中心的な問題と周辺の問題といろいろあろうかと思うが、これらが整理できていない。したがって、できるだけ早く整理をして、大学としての見解を表明すべきだと考えている。これについて、本日も時間があれば皆さんの意見をいただきたいと思っている。同時に私としては、ただ任期制・年俸制に反対と言うだけではなくて、大学としての、あるいは教職員のアクティビティを格段に向上させるような方策についてどうあるべきか、われわれも積極的に検討して提案していくようにしたい。これは、教育・研究・社会貢献その他を中心として、学内にやはりワーキンググループを形成し、そこで合意形成をはかりながら、提案していきたい、だから、任期制・年俸制について見解を表明すると同時にさらに積極的に、あるいは大学がよく発展するような形での提案づくりをしていきたい。この場合、まだ十分検討していないが、最低限助手の方々まで含めたワーキングを作る方向を今念頭に置いているが、この辺はまた意見を伺いたいと思っている。
 
  三番目であるが、この間四つのワーキンググループの設置を行ってきた。@教養教育、A大学院、Bセンター問題(基礎教育センター、エクステンションセンター)、C法人化、大学統合に関わる法的問題についての各ワーキンググループである。このうち、教養教育と大学院については、管理本部・教学準備委員会に都立大学からの提案として届けてある。教学準備委員会で扱うよう要請しているが、現段階では扱われていない。私としては管理本部が扱ってくれるのを希望すると同時に、他の3大学とも話し合いを深めていきたいと思っている。センター問題については、いろいろと検討しているが、そのうちのエクステンションセンターについてだけ今日は言っておきたい。生涯学習に関する都民のニーズに積極的に応える、かなり高度な学習要求にも応え得るようなものをつくる、都民とのインターフェースをつくりたい、同時に大学院をこれに関連して立ち上げながら、センターで学んだ人が希望するならば大学院に受験できる(もちろん他の分野からも受験できるが)、そういう機能を担う、ただ、大学院であることによって研究機能を持っているのでセンターの都民とのインターフェースのところもかなり高度で豊かなものができるというふうに考え、全体としてセンターは都立の新大学に必須の部分として提案したい、つまり、いずれ切り離すのではなく、切り離したらもったいないというものとして提案したいと考えている。

 最後にお願いであるが、いろいろとご批判・ご意見・疑問などをいただきたい。今後できるだけ学内・学外各層の意見が反映できるような場としていきたい。