質 問 事 項


 1.独立行政法人についての「検討の中間まとめ 法人化・大学運営分科会関係」(都立新大学設立準備委員会 2002年9月5日、
  同封の『「大学改革」問題報告集』所収)では、経営部門と教学部門の役割が区別され、総長の役割について以下のように書
  かれています。

    「学長は全学事項に関する教学の最高責任者として、全学的な執行、調整が必要な事項について権限をもつ。」
   これについて、どのようにお考えですか。

2.前掲「中間まとめ」には、教学部門の役割が次のように書かれています。
     「教学部門は教育研究の実施について基本的に全ての権限を持ち、責任を負う。教学部門の専管権限としては
    教育研究の内容、学生の身分、教員人事
(原則として個別選考に限る)などである。」 
   これについて、どのようにお考えですか。

3.大学における助手の役割、位置づけをどう考えますか。

4.教職員を非公務員にすることについて、どのようにお考えですか。

5.新大学における教員・職員の労働条件が、最低限現在よりも悪くならないよう努力していただけますか。

6.組合が行った「人事異動に関する全職員へのアンケート」によれば、多くの職員が、新大学に残る気持ちを持っていません
 (同封の『手から手へ2169号』を参照)。これについてどう思い、どのように対処しますか。


7.2000年1月の石原都知事発言以降、東京都の大学改革の方向に大きな変化がありました。大学改革について、知事に要望し
  たいことがありましたら、お聞かせください。


鈴木 浩平

年   齢    60 歳

研究分野    機械力学

現   職    東京都立大学工学研究科教授

1.総長の役割について

 本学は中規模の大学ではありますが、専門分野のバランスのとれた高レベルの総合大学であり、学問分野や社会的立場を異にしながらも多くの優れた人材の育成や研究発展に貢献してきたと感じています。その基盤には、評議会・教授会を核とした学内の自主的な意思決定が大きな役割を果してきており、学長に最高責任者としてより多くの権限を委譲することが必要であるとしても、評議会や教授会の有する従来の責務は、組織的合理化がなされても、依然として重要と理解しています。

2.教学部門の役割について

 「教学部門」の設立を前提とした質問と思いますが、自主的な教育研究の発展には、教育システム、研究システムの新設・改変を含む一歩高い視点での権限が不可欠であると考えており、この「中間のまとめ」には賛成できません。教員、学生についても、専攻・学科などの教員組織の編成、学生受入システムの策定も当然この分野の業務に含められるべきでしょう。

3.助手の役割・位置づけについて

 助手の役割と位置づけのとらえ方が学部等により差異があるようですが、工学系については助手層の果している役割は極めて大きいと認識しています。私自身の長い研究室生活を顧みても、その時々の若い助手のアクティビティにより研究・教育活動が支えられてきたと実感しています。特に実験系の研究教育の発展を願う立場からも、助手(名称は変えたほうがよい)の待遇改善を強く望んでいます。

4.教職員の非公務員化について

 大学管理本部などでは、法人化された新大学においては教職員を非公務員化することが検討されていると伺っていますが、学内でこの問題についての議論が決定的に不足していると思います。例えば、教員には独法化された国立大や私立大へ移る自由度が多少あるとしても、職員の方々の都庁との異動はどうなるかなど多くの課題がありそうです。討議や合意が不十分なままでの非公務員化には同意できません。

5.教職員の労働条件について

 総長の立場として実現可能な努力の中身についての認識が不足しており、責任ある回答ができず申訳ありません。しかし近年教員・職員の勤務状況が相当劣悪になっていることは充分認識しており、一教授としても相応の努力をするのは当然のことと考えています。

6.人事異動アンケート結果について

 このアンケートの結果を拝見し、強いショックを受けました。「異動」と「改革」について寄せられた個々の御意見もどれもが切実で厳しいものであり、改めて職員の方々の現況を認識しました。本学に勤めて25年以上たちましたが常に技術系・事務系の職員のお世話になりその重要性を実感してきたので、「職員に愛される都立大学」とするよう全学の努力が望まれていると思います。

7.知事に要望すること

 現在、知事が本学及び新大学の改革に対しどのような展望をもたれているかの理解が不十分ですが、本学が50年以上の歴史の過程で蓄積してきた実績、特に都庁を含む学外への対社会的貢献についての御理解が不足していると感じています。本学からのアピールも不足しているのでしょうが・・・。                             



茂木 俊彦

     年   齢    60 歳

     研究分野    教育心理学

     現   職    東京都立大学人文学部教授(人文学部長)

1.総長の役割について

仮に法人長と学長が別人になる場合でも、経営と教学の連携・協力の実をあげるためのしっかりしたシステムが作られる必要があると思います。引用部分については賛成です。ただし、いわゆる経営的事項に含まれる諸事項も教学的事項と完全な区別は不可能である場合が多いことに鑑み、教学に係る全学的事項、部局からの要望や意見を「役員会(仮称)」等に反映させ、必要な措置等を要求できる仕組みを明確な形で作るべきだと考えます。

2.教学部門の役割について

教員人事に関しては、「原則として個別選考に限る」とされている部分については意見があります。「原則として」の文言があるので許容できるとも言えます。しかし、各部局、各専攻の教育研究の蓄積と展望を考慮しつつ、どのような人事計画をもつかに関して教学部門の権限が限りなく縮小され、経営部門による決定の枠内でのみ個別人事がすすめられるということになれば、部局、専攻の必要最低限の自律性も失われかねないと考えます。

3.助手の役割・位置づけについて

助手は現在、若手研究者として研究をすすめ力量を高める、教授会メンバーと学生の間をつなぎつつ教育と研究において種々の役割を果たす、研究室運営に係る実務を担当する等々、相当に多くの仕事を担っていると思います。最後にあげた実務についても、各専攻の教育と研究を知悉しながら行われなければならないものが多いので、現行の定数の確保が最低限必要であり、配置状況によっては増員も考慮されるべきだと考えています。

4.教職員の非公務員化について

国立大学の法人化の行方とも深く関わります。教員に関しては、国立大学が非公務員化の方向であれば、新しい都立の大学も非公務員化でよいと考えます。要は私学と併せて国立大学との間でもスムーズな人事交流をできるように配慮することだと思います。事務系職員については全員を非公務員とするのには賛成できません。都の職員との人事交流を可能にする仕組みを残すべきであると思います。

5.教職員の労働条件について

誰が総長となるにしても、努力すべきだと思います。

6.人事異動アンケート結果について

まことに残念なことだと思います。抽象的になりますが、学生も職員も教員も喜んで活動できる大学とするためにお互いに努力する以外にないと思います。

7.知事に要望すること

大学に種々の意味での社会貢献が求められるのは当然ですが、社会貢献は必ずしも直接にかつ短期間に、その成否を問えるものに限られません。その意味では地味な基礎研究も大いに重視した大学改革を進めるべきだと考えます。


渕   倫 彦

     年   齢    61 歳

     研究分野    西洋法政史

     現   職    東京都立大学法学部教授

 まもなく大学を去る身ですので、差し出がましい発言は控えさせていただきます。Eのアンケート結果は残念です。教職員が愛着を持てないような学校で良い教育ができるとは思われませんので、そんなことにならないように、立派な改革を実現していただきたいと思います。


生駒 俊明

年   齢    61 歳

      研究分野    電気電子工学、電気デバイス・機械工学

現   職    一橋大学大学院国際企業戦略研究科客員教授


1.総長の役割について
意見:原則、よいと思います。ただし学長と理事長の関係については要検討です。

2.教学部門の役割について

意見:原則、よいと思います。ただし研究教育に直接関する予算配分権は教学部門が持つべき。

3.助手の役割・位置づけについて

一般論としては「助手」の期間に雑用におわれず、存分に教育、研究に従事できる期間であると位置付け、次のステップへの飛躍の期間として有効活用が可能であると思われる。あたかもアメリカのポストドックに類似した期間。しかし、現実はこのような状況が作られている大学は少ないであろう。都立大の場合には、具体にどういう状況にあるか承知していない。各学部の相違もあろう。もし万年助手として、教授、助教授の手伝いとか、本来の助手の職務以外の仕事をしているなら、改善の必要があろう。

4.教職員の非公務員化について

賛成です

5.教職員の労働条件について

現状を知らないので、なんともいえない。一般論としては組織の改変によって無作為に労働条件を悪くするというのは良くないであろう。しかし、他に比べて労働条件が著しく異なり変更の必要性があり、必ずしも最低限現状維持することに社会的な合意が得られないような状況であれば、これを維持することは難しいであろう。

6.人事異動アンケート結果について

驚きである。現状を知らないのでそれ以上のコメントはできない。こちらからの質問としては、アンケート数が非常に少ないのはなぜなんですか?

7.知事に要望すること

実情を知らないので、具体な要望はいえないが、都庁内において大学改革を検討するにあたっては、大学問題に関してあるレベル以上の見識を持った人を当てるべきである。大学改革は行政改革とはまったく異なった視点と見識が必要であるので、知事自身が大学の問題にどれだけの知識と見識を持っておられるのかまず伺ってみたい。


阿知波 洋次

年   齢    54 歳

      研究分野    反応物理化学

現   職    東京都立大学理学研究科教授(学生部長)

今回の総長選挙にあたり、次期総長を引き受ける意思はありませんので、総長候補者としての意見は特にありません。誠に申し訳ありませんが、何卒、ご了承ください。


桑澤 清明

年   齢    64 歳

      研究分野    制御情報生物学

現   職    東京都立大学名誉教授

1.総長の役割について
  これは現行の実質的体制を明文化したものである。経営にも参加出来るようにした方が良い。

2.教学部門の役割について

教員人事の「個別選考」の意味が不明。他は基本的に了。

3.助手の役割・位置づけについて

現行助手は3年程度の任期制として、任期終了時に審査により講師に昇格させる事ができるようにする。

4.教職員の非公務員化について

この機に条件が良くなる事を考えるべきである。

5.教職員の労働条件について

 大学業務に精通した職員を公務員並みの待遇で雇用する過渡的方途を残すべきである。

6.人事異動アンケート結果について

7.知事に要望すること

東京都は文化(教育・科学・生涯学習等)の面でも国におんぶされる事なく、東京自治の精神を発揚して
ほしい。特に、海洋を含む自然保護、環境保全の行政と科学的調査研究の遅れを回復してほしい。             


磯 部   力

年   齢    58 歳

      研究分野    行政法

現   職    東京都立大学法学部教授(大学改革実施本部長)

1.総長の役割について
 新大学法人においては、経営と教学の分離とともに、教学に関する全学事項と各部局に任せるべき事項の合理的な区分が課題になるので、このことを前提に、学長はもっぱら全学事項に関しての執行や調整につき権限と責務を有することを述べた文章と理解します。なおこの直前には「学長は、教育研究機関としての大学を代表する」ことが明記されており、経営と教学の間に相互の尊重と連携関係をいかに確保するかが重要課題と思います。

2.教学部門の役割について

公立大学法人制度の内容に関しては未確定の部分が多いのですが、東京都が考えているように経営機能と教学機能の組織的分離を前提にしたとしても、大学という組織の核心部分である教育研究機能については、あくまでも教学部門が全面的な権限と責務を有すること、また教育研究の内容、学生の身分、教員の個別人事については教学部門(具体的には教授会・評議会)が専管的権限を持つことを確認した重要な文章であると思います。

3.助手の役割・位置づけについて

大学が教育研究機能を十全に発揮するためには、助手という職務が不可欠であることは自明であると思います。同時に助手の役割や位置づけが、研究科や学部ごとに相当異なること、またさまざまな問題点を内包することも否定できません。新大学への移行を契機に、国立大学における助手制度の改革動向をも十分に見極めながら、必要な改革をなすべきものと考えています。

4.教職員の非公務員化について

公立大学という組織は、一般行政組織とも企業組織とも異なります。したがって何よりも大事なことは、大学という独自の使命を持った組織に勤務する教職員の特性に過不足なく適合した安定的な勤務形態を制度化することだと思います。そのためには旧来型の公務員制度を乗り越え、もちろん国立大学法人とも足並みを揃えつつ、非公務員型の新たな可能性を探ることに魅力を感じています。

5.教職員の労働条件について

新大学における教職員の労働条件が現在よりも悪くならないように努力することは、当然の責務だと思います。

6.人事異動アンケート結果について

新大学法人の事務組織や職員の勤務形態がどのようなものになるのか、まだ議論はこれからという状況ですから、不安が先に立ってしまうことも当然だと思います。法人化後は、大学経営や教務事務、図書館業務など、専門性の高い固有職員も不可欠ですし、都庁との関係で一時法人に出向し、また都庁へ戻る職員など、多様な形態が生じると思われますが、いずれにせよ安心して働ける活力ある職場をめざすべきことは言うまでもありません。

7.知事に要望すること

万感胸に迫り、200字という制約の中では、到底言い尽くせるものではありません。


古川 勇二

     年   齢    59 歳

     研究分野    精密加工学

     現   職    東京都立大学工学研究科教授(工学研究科長)

拝啓

総長候補者に対する組合からのご質問状を126日付にていただきました。

推敲する時間がありませんでしたので、以下やや雑駁ですがわたしの考えを報告させていただきます。

 1と2の「大学の独立行政法人化関係」はまとめて回答します。

私は新大学設立準備委員会企画調整委員会の委員を委嘱されておりますので、この課題について検討の情況は存じておりますが、これを専門的に検討する法人化・大学運営分科会の委員ではありませんので、正直いって細部に亘って理解できているのかどうか少し不安に思います。

ご指摘の教学部門と経営部門を分けるべきではないかとの考え方は管理本部としての原案であり、かつ運営諮問会議の強い意向でもあると理解しております。この方針に関して都立大学内にも賛否両論があろうかと存じますが、私は大学内でのマジョリティー意見は、「公立大学協会の基本的主張を反映したもので、国立大学の独立行政法人化の方向とできるだけ軌を一にすべきである」と理解しておりますし、私自身も大学人としてそのように考えて参りました。

併行して国においても公立大学の法人化に向けての検討がなされているようであり、当然のことですが、新大学法人は改正されるであろう国法と整合したものでなければなりません。

以上のような状況ですので、この重要課題に関して法人化・大学運営分科会等で更なる検討がなされることが先ず保証され、そこに学内意見を反映できることが欠かせないでしょう。もっとも大切なことは、新大学が社会から附託されている教育・研究・そして最近では社会貢献に関して、新大学の主体性が十分に保障されることにあると考えています。

3の助手の役割と位置付けについてですが、新大学は研究型大学院大学を目指すのですから、現在以上の研究教育レベルを確保するためには、助手および研究スタッフを充実させなければならないのは当然の帰結ともいえます。国では研究者の流動性確保の観点から、大学における若手研究者である助手を中心に任期制の導入が実施され、本学でも一部で採用されてきておりますが、その場合、任期制研究者の不利にならないよう待遇面での特段の配慮が不可欠です。

4の非公務員化の件ですが、国の方針がそうなっているときに新都立の大学だけが別になるというのは現実的ではないと考えます。非公務員化によってもたらされる利点を最大限引き出し、かつ、現在からの継続性が十分に保障される配慮が欠かせないことは論を待たないところでしょう。

これに関連して5の労働条件のことですが、私の学部長経験からしますと、現行の学務処理はあまりにも煩雑で無駄が多いように思います。この改善をかねてより主張してきましたが、なかなか思い切った改善に着手できなかったのも事実ですから、新大学設置の機会に、まず学務処理のリエンジニアリングを徹底して無駄を省き、その上で必要な定数を100パーセント確保して、結果として労働条件が改善できるのではないでしょうか。

6のアンケート結果のことですが、非公務員化によって現行からの継続性が失われる懸念があり、かつ労働条件が悪くなるのでしたらば誰だって新大学に残りたくはないでしょう。多分アンケートはその反映ではないでしょうか。新大学は上述したような革新を進めて、皆さんが働きやすく生きがいを感じられる職場になってほしいものです。

最後の7ですが、知事に要望できる立場にはありませんが、敢えて申し上げれば、4つの大学が真剣に取り組んで新大学設置に向けて検討を重ねてきているのですから、是非とも検討結果を尊重していただきたいことです。

                                      敬具