「東京都立大学廃止と新大学設立」案に対する意見表明

 

平成15年11月6日
東京都立大学大学院理学研究科生物科学専攻
身体運動科学専攻
院生および研究生有志一同

 現在行われている「都立大学廃止・新大学設立」案に関して、その内容に大きな不安と疑問をもたざるを得ないので、以下に意見を表明します。

  1. 今年8月1日に出された「都立の新しい大学の構想」は、それまでの都立大学の先生方の新大学設立準備にかけた多大なる労力をまったく無視し、総長をはじめとする都立大学関係者の知らないところで短期間に作られたものであることを知りました。あたかも学生の意見を反映したかのように言われて出された構想ですが、その内容は、都立大学が開学以来積み重ねてきた「研究と教育」の実績・伝統を破壊するかのような学部構成であることからも、我々院生および研究生はこれに到底賛同できません。

  2. このような「新大学」が、「都立4大学からの移行ではなく、都立大学の廃止である」という構想に、今後も現研究室にて継続的に研究活動を行おうとする我々院生・研究生は、その研究活動の保障が脅かされる意味で、最も強い危機感を持ちました。10月31日に出された「お知らせ」の内容も、大学院の存続期間や暫定大学院の設置についての形式的な説明に終始し、研究体制の存続の実際についてなんら説明するものではありませんでした。「研究とは、環境が整備された上で時間をかけて遂行されるものだ」「研究遂行に必要な技術や思考過程は、学生が一人で知識を増やしても習得できるものではない」という認識が全く欠けているのではないか?と疑われます。このような新構想を受け入れることはできません。

  3. 特に、人間科学に関する最先端の研究者をそろえて近年設置されたばかりの理学研究科身体運動科学専攻の関連分野が、新構想に組み込まれていないことを聞き、この事態を生命科学分野の院生・研究生として看過できません。都立大学の新しい特色であり、人間科学分野において有能な博士号取得者を全国に輩出し始めた新進気鋭の研究室群の存続を考慮できない構想には、大きな欠陥があるとしか思えません。

  4. さらに、東京都が教員に対して、「新構想に賛同すること」と「検討内容を口外しないこと」を求めた「同意書」を提出させようとしていることが、我々の新構想への不信感をますます強固なものにしています。このような非民主的な体制が新大学設置後も継続されれば、新大学・大学院で、研究と教育が正常に行われることは期待できません。

  5. 我々は、今年7月末まで行われていた大学改革準備体制のような、開かれた議論のもとでの大学改革の推進を切に希望します。都立の大学が教育や研究分野においてさらに発展できるような真の改革が、現在目標としている開学予定期日にとらわれることなく、十分な検討と議論を踏まえた上で行なわれるように、強く要望します。