声明

         
東京都立大学廃止に強く抗議する

                          平成15年10月31日
              東京都立大学大学院工学研究科電気工学専攻
                    東京都立大学工学部電気工学科
                         学生・院生有志一同

 今年8月1日,2005年度開学の「都立の新しい大学の構想」が石原慎太郎東京都知事により発表されたことは報道により周知となっている。しかし,今年7月末まで都立大学の教員が本来,研究・教育に向けるべき時間を費やしてきた(2001年「東京都大学改革大綱」に基づく)新大学設立準備体制を大学管理本部が唐突に廃止し,「新構想」が2ヶ月という短期間に,総長を始め都立大学関係者の誰も知らない密室でつくられていたことは,広くは知られていない。
 そして東京都大学管理本部長は,新大学設立を都立4大学からの移行とせず,2004年度末に都立大学を廃止すると宣言した。また,9月25日に東京都が教員に対して,「新構想」に賛成し,検討内容の「口止め」を求める書類の提出を要求していたことは,報道により全国に知られている。
 大学とは本来,研究の成果・過程を教育に還元する高等教育機関であり,研究を充実させるため,工学部は1997年に大学院工学研究科の部局化を行い,「大学院大学」となった。しかし,「新構想」では大学院の構想はまったく示されていない。また,「都市教養」,「システムデザイン」,「保健福祉」,「都市環境」という学部構成は学問体系に沿わず,内容を見るに「専門学校」の模 写というべきであり,研究軽視で大学に対する社会の要請とはかけ離れている。 さらに,人文学部文学系専攻や理学研究科身体運動科学専攻の研究室が「全滅」になっているが,これは学界における都立大学の位置を無視した行為であり,これらの研究室の廃止は文化の破壊である。言うまでもなく,大学は一昼夜にしてできるものではなく,都立大学で言えば1949年開学以来積み重ねてきた研究があり,これらの蓄積が「無」に帰す恐れのある「新構想」には当然賛同できない。
 第2次世界大戦後,日本では教育と政治は切り離されるべきとして「日本国憲法」および「教育基本法」にその精神が盛り込まれた。今日にあって,東京都によって一方的に都立大学廃止の方針が公表されたことは諸法規から見ても誠に憂慮すべき事態である。新制大学制度が始まって以来の教育の危機に際し,我々学生有志は特に以下の5点について意見を表明する。

1. 東京都は,東京都立大学廃止を撤回し,新大学の設立を都立大学の有形無形の資産を活かすために,都立4大学の統合とするべきである。

2. 東京都は,短期間に,かつ密室でつくられた粗末な「都立の新しい大学の構想」を撤回し,独裁的な新大学設立準備体制を止め,大学という「現場」の意見を尊重するべきである。また,新大学設立の過程は学生および都民に公開することが望まれる。

3. 政治的意図を排除するためには,新大学の名称は「東京都立大学」(英語名:Tokyo Metropolitan University)をおいて他に考えられない。

4. 新大学設立準備が新大学開学予定期日に間に合わないのであれば,2005年4月開学を急ぐ必要はない。

5. 東京都立大学総長は,全ての教員および学生によって公選された大学の代表者として,「民主教育」と「学問の自由」の死守のための尽力を続けて頂きたい。



(追伸)
本声明は,10月31日から開催される「都立祭」で配布致しますので,来場者はだれでも本声明を読むことができます。