科技大で教員の8割が定年延長を至急検討するよう学長に要請

121日に科技大で教員定年延長に関する教員懇談会が開かれました。これは定年を延長するために教授会として検討するよう求める世話人会が、学長へ要請したことにより開催されたものです。4大学統合にともない都の定員不補充政策のもと、定年で多くの教員が辞めていくので講義など学生の教育や研究指導が非常に困難となり、大学としての十分な対応が難しくなる状況が、確実に予想されるという科技大固有の問題、および定年延長が、東大、東工大をはじめとした多数の国公立大で決定され、65才定年が大勢となっていること(別記1参照)とも結びついて教員の間から提起されたものです。また、年金制度が改悪され、将来的には年金の満額支給年齢が65才となることも重要な点です。このような観点から、教員有志の提起に対して、教授会構成員の約8割の賛同署名(主旨は別記2参照)が集まったことは注目すべきことです。

現在、都立の大学においては、大学教育研究予算の削減により、教員研究費・図書費・備品費・設備費等が6年前の約半分近くまで削減され、技術専門職・事務職もかつての半分の定員に削減され、教育研究条件が劣悪化しており、さらに教員定員の18.6%削減計画が、学部学生定員維持・大学院生定員の拡充計画のもとで、大きな矛盾を生じさせています。また、教員については、国立大・国立研と比べて給与が低いだけでなく、退職金も低い(大学院手当などが調整額となっておらず、退職金算定の単価に組み入れられていない)状態で、有能な教員を引きつける条件が欠落しており、教員の不満を増大させています。

大学改革で、よりよい教育研究のためには、有用な人材の確保は死活問題であり、そのためにも新大学における教育研究条件の向上や教員の処遇改善等の課題の中で、定年延長は避けて通れない課題であり、重要な検討事項です。若い教員にとって昇格の若干の遅れが想定されますが、各個人にとっては、勤続年数の延長は生涯賃金総額が増加するだけではなく、私大や企業出身の異動教員の場合には、勤務年数の延長による退職金や年金へのメリットは特に大きく、優秀な教員を獲得する上で重要な雇用条件となります。現在、科技大でも都立大でも有能な教員が、他大学へ流出していることに対しても大学管理本部は危機感を持つ必要があります。

また、定年延長の決定は、そもそも法律的には教育公務員特例法第8条第2項「教員の停年については、大学管理機関(=単科大では教授会、総合大では評議会)が定める」という条項により教授会または評議会で決める事項であり、条例事項ではありません。法人化後には、法人が就業規則で定年を決定することになる可能性が強いのですがが、この問題は被雇用者の権利として重要な問題であるにもかかわらず、これまでまったく議論もされてこなかったことは重大です。さらに、定年延長が決定されたとしても、退職金支払いが延期されることから当面新たな財源を必要としないので、議会による予算措置の決定は不要であり、すぐにでも実施は可能です(予算措置については別記3参照)。

都立大学、都立短大、保健科学大学の各管理機関でも、至急に論議すべき問題です。                     

<別記>

1.各大学の教員定年年齢

国立大

61歳−東大(65歳とする過渡期)

63歳−東工大(65歳とする過渡期)、京大、阪大、筑波大、広島大、名古屋大、九州大(漸次65歳へ延長)

65歳−横浜国大、埼玉大、千葉大、電通大、東京学芸大(H16.4実施)、山形大、新潟大、信州大、山梨大、豊橋技術科学大、金沢大、滋賀大、岡山大、愛媛大、佐賀大、長崎大、鹿児島大、香川医大、佐賀医大、上越教育大、名古屋大(文化勲章・ノーベル賞受賞者のみ)

70歳−京大法科大学院準備部門 

公立大

63歳−大阪府立大、大阪市立大(医学部をのぞく)

65歳−横浜市立大学、滋賀県立大、兵庫県立姫路工大、愛知県立芸術大、岡山県立大学、下関市立大、大阪市立大(医学部)、科技大の短大時代

70歳−鳥取県立大

私立大

65歳−慶応大、東京理大、東洋大、武蔵工大、芝浦工大、北星学園大、帝京大(助教授以上、他は60歳)、同志社女子大(さらに5年間の再雇用制度有り)、前橋工科大、会津大短大

67歳−広島修道大

68歳−近畿大

70歳−早稲田大、中央大、日大(65歳以降、定員外の特任教授で、権限・機能内容が減少)、神奈川大(新規採用者は65歳)

諸外国

65歳未満の定年を定めている大学はほとんどない。米国には定年がない。

2.要請の主旨

 

国立大学が定年(停年)延長に動いている現在、定年退職年齢を延長することを考慮すべきですし、至急検討をする必要があります。すなわち以下の理由から、東京都立科学技術大学教員の定年年齢を引き上げることが必須と考えられます。そこで、この件に関して賛同し、十分に検討し審議するための教授会開催を求めます。

(理由)

(1) 60および63歳を定年としている国立大学などが、65歳またはそれ以上への延長に動いている現在、都立の大学も定年延長を検討する必要があります。

(2) 現在の定年退職年齢では、都立の大学に優秀な教員を確保する上で不利であるだけでなく、優秀な教員が他大学へ転出してしまう可能性があります。

(3) 長寿日本になった現在、65歳でも体力、気力、能力など充実している教員が多くおり、教育研究に関しても学生・院生の指導や外部資金獲得などに大いに力を発揮しています。

(4) 現行の定年年齢により、科技大教員が退職することになれば、定員不補充政策のもとで新旧大学の並立時期に、残った教員の負担が大幅に増加し、学生の授業・研究指導等に重大な支障を来す恐れがあります。また教員の研究にも非常に大きな影響があります。

3.予算措置の検討

58才以上の給与は昇級停止となっており、33年以上の勤続者の退職金の額は一定である。もし各級(教授、助教授等の格付け)の定員が不変であれば、制度として定常状態となったときには、高位号給の給与の昇級カーブの傾斜が、下がることから考えて、むしろ大学全体の教員人件費総額は現在よりも減少する可能性すらある。