質 問 状
                        2003年12月8日
 文部科学大臣殿
                       自由法曹団東京支部
                       支部長  松 井 繁 明
                     〒112-0002
                     文京区小石川2-3-28-201
                        03-3814-3971
                        fax03-3814-2623


 いま、東京都立4大学の統廃合問題が社会的に注目されています。これは、本年8月1日に、石原慎太郎東京都知事が、「新しい都立の大学の構想について」(以下、「構想」という。)を突如公表したことに端を発しています。
 「構想」は、その手続において唐突かつ強権的であるのみならず、その内容においても、大学人の協議を全く行わないままに、「都市教養学部」や「エクステンションセンター」の設置を打ち出すなどしており、これらのことが、大学関係者のみならず、受験生や父母、高校などにも不安と混乱をもたらしています。
 教職員にとっては、今後の仕事のあり方、身分・雇用にかかわる重大問題であります。また、都の「新しい大学の学部構成・入試概要のお知らせ」には「※文部科学省への設置認可申請の結果等により、記載内容が変更となる場合があります。」、「※学部・学科・コースの名称は、いずれも仮称です。」との記載があり、受験生、父母、高校などは、きわめて不安的・不確定な情報にもとづく進路選択を余儀なくされているのです。
 そこで、新大学の認可を所管する貴殿に対し、下記の点を明らかにすることを求めます。ご回答は2003年12月25日までに文書でお願いします。

              記

第1 都の「新大学設立までの主なスケジュール」によると、「文部科学省事前相談 書類提出11/26〜1/5」、「審査1/19」、「新大学設置認可申請(4月末)」、「新大学設置認可(7月末)」、「新大学・法人設立(4月)」とされている。
 1 すでに、事前相談の書類は提出されているか。
 2 2004年1月19日が審査という日程に誤りはないか。

第2 現在、都立4大学では、新大学設置構想が現行大学の代表者が参加できないままにすすめられ、かつ、教職員の雇用不安が生じている。これらの事態は広く報道されているのですでに承知のことと思うが、このような不正常な状態での新大学認可はありうるのか、あるいは認可にあたって何らかの指導をする意向があるか。

第3 第1に記載した新大学設立のスケジュールについて
 1 4月末申請、7月末認可という日程は、教員審査が省略される場合しかありえず、仮に教員審査を行えば、都のスケジュールは成り立たないと考えるがどうか。
 2 今回の都立の新大学の場合は、教員審査が省略されると承知してよいか。その法的根拠を併せて教示されたい。

第4 都大学管理本部「新大学の大学院設置時期及び現大学等の取扱い、経過措置等について」(平成15年10月31日)によると、「○都立新大学の新たなコンセプトに基づく大学院を平成18年度に開設する。」、「○新大学における大学院教育・研究のあり方(分野の設定、カリキュラムの組み立て方、教員組織等)を今後十分に検討の上で、詳細な制度設計・再編成を行う。」、「○17年度においては、暫定的に現都立4大学の大学院構成を新大学の大学院として設置し、学生を募集する。」とされている。要するに、平成17年度は、学部は新大学だが大学院は現行大学院ということになる。
 1 このような形態で認可することは可能か。可能とすれば、その法的根拠は何か。
 2 同様の形で認可した前例があるか。

第5 地方独立行政法人法の付帯決議は、「公立大学法人の定款の作成、総務大臣及び文部科学大臣等の認可に際しては、憲法が保障する学問の自由と大学自治を侵すことのないよう、大学の自主性、自律性が最大限発揮しうる仕組みとすること。」と明記している。
 ところが、新大学への統合・移行は、現行都立4大学の教授会・評議会に諮られることもなく都の独断専行で進められている。
本件認可審査に際して、前記付帯決議に照らして、貴殿としては、学問の自由と大学自治を守るため、いかなる措置をとる考えか。

                    以  上