東京都立大学の改革に関する要望書 

 
                                        
                                        東京学芸大学史学会

 私たち東京学芸大学史学会は、東京学芸大学の教員・学生・院生・卒業生の有志で構成され、歴史学・歴史教育に関する研究に取り組んでいる団体であります。こうした立場から、私たちは現在進められている東京都立大学の改革について注目してまいりました。
 ご承知のように、東京都立大学はこれまで首都東京における高等教育機関としてもっとも高いレヴェルに位置し、研究者養成において重要な役割を果たしてきました。東京学芸大学からも多くの学生が都立大学大学院に進学しております。こうした関係から、私たちは今後東京都立大学人文学部史学科との連携を強め、さらなる学問の発展を期そうと考えております。しかし、本年八月一日に発表された新しい大学の構想には、大きな不安を抱かざるを得ません。私たちは現在の東京都立大学が日本の歴史研究・歴史教育の中で有している重要な役割が失われることを強く危惧しております。ここに、要望書を提出し、新しい東京都立大学が真に首都東京における教育研究拠点として発展することを切に望むものであります。
 そのためにまず第一に、改革が民主的な手続きによって推進されることを要望いたします。現在推進されている改革が、それまで蓄積されてきた討議を無視し、関係者の自由な意見陳述を許さない形で強引に進められていることに、私たちは強い危惧の念を抱きます。改革推進にあたっては、幅広い大学構成員との間に開かれた協議の場を設け、民主的な手続きに則って行われるべきであると考えます。
 また第二に、改革に対する様々な疑問に関して、明快に説明されることを要望いたします。既に、今次改革に対しては声明や意見書が各所より提出され、これらを通じ、多くの都民や国民が不安と疑問を感じています。しかし、東京都からは、こうした不安・疑問に対する納得のいく説明は、現在のところ行われておりません。東京都は今次改革に関し、大学関係者から発せられている疑問に回答すると同時に、学生・院生をはじめ、多くの研究者たちが共有すべき学習研究環境を保証する責務があると考えます。
 そして第三に、人文学部を含む学部再編構想の慎重な再検討を要望いたします。歴史学分野を専攻する学生・院生を養成する場として、東京都立大学がこれまで果たしてきた重要な役割が弱められることのないよう、是非ともご配慮いただきたいと思います。
 以上、私たちは、東京都立大学の今次改革が長期的視野に立って、他の大学改革の鑑とされるような有意義なものとなるよう、重ねて要望する次第であります。ご高配のほど、よろしくお願いいたします。                                 

2003年12月6日
東京学芸大学史学会
 東京都小金井市貫井北町4−1−1
 東京学芸大学歴史学研究室内
 e-mail : rekishi@u-gakugei.ac.jp