2314号
 

団体交渉中断
交渉ルール無視、未確定文書の教授会への持ち帰りを求めた部長会での説明に抗議―組合
管理職内部の事務的検討と言い逃れ、謝罪せずー当局

                                 
 12月20日に行われた団体交渉は、組合が冒頭、「手から手へ2313号」に掲載した「大学管理本部の背信行為に怒りを込めて抗議する!!」を読み上げ、 当局に対して、この間の事態と経過について説明を求めるとともに、あわせて「制度選択に関する緊急要求」及び「緊急解明事項」を提出しました。
 当局のいう「新制度(任期制・年俸制)」か「旧制度(昇給及び昇任なし)」の制度選択の問題は、法人化後の教員の賃金労働条件そのものであり、組合 との交渉事項です。しかも、抗議文にも示したとおり、20日の団体交渉に向けて、組合は「制度選択に関する緊急要求」及び「緊急解明事項」を準備し、 合意した交渉ルールに則って20日に決定されていた団交の議題とするべく、双方の窓口において内容整理の話し合いを行っていたのです。その最中に、 組合に一切の説明もなく、12月16日に都立大学の部長会で事務局長が、大学管理本部長名の『任用・給与制度の選択について(依頼)』という文書の説明を し、「持ち帰ってください」としたことについて、組合無視の交渉ルール違反と抗議し、説明と謝罪を求めたのです。
 当局は、「正式に文書を出したのが、17日付けであり、16日のものは案の段階であった」「都立大学の部長会が、年内最後であったので、説明させてほしい とのことであった」とし、当局の提案の説明をはじめました。組合は、「交渉ルール無視について、説明を求めているのに、そのことに触れていない」 「確定もしておらず、実際にその後の変更があった文書を教授会を通して流そうとした責任をどう考えるのか」と説明の途中に抗議し、「16日の部長会での 事態について、どう考えているのか」を改めて問い質しました。
 当局は、「17日には、書記長に文書は送った。中身も一部修正されている。16日のものは案であり、部長会で説明することは了解した」「部長会は、管理職 であり、管理職内部の事務的検討」と言い繕おうとしました。しかし、組合は、「部長会後の各学部の教授会でも説明がされた」「事務局長は、『持ち帰れ ない』という部長がいたにもかかわらず、『持ち帰ってください』」と発言したことを指摘し、「管理職内部での検討とは言えない」「当局の説明には、 納得できない」「組合に対する信義違反であるばかりでなく、確定もしていない不正確な情報を教員に流したことで重大な誤解を与えることになった」と 詰め寄りました。当局は、「今後は、管理職内部の検討は別にして、組合に最初に説明をしたい」と非を認めました。
 しかし、組合は「昨年の夏に、組合が過って交渉整理中の内容を機関紙に掲載した時に、当局が組合に求めた態度とは違う」、「二ヶ月近くも窓口閉鎖し、 組合の要求を受け取らなかったではないか」、「事情の説明をすれば、それで終わりということにはならない」、「本来流れてはならない文書が流れてし まった。そのことについて、少なくとも経過説明と謝罪が必要ではないか」と納得しませんでした。そして、昨年秋に準じた処理を改めて要求しました。
 当局からは、「当局内部の意思統一に問題があった」との発言はありましたが、組合が求めた昨年秋に準じた処理については、「持ち帰って検討したい」 としたため、「今日は、これ以上進められない」と交渉を打ち切りました。あわせて、そうした処理が終わるまでは、所属長を通して、流されている『任用 ・給与制度の選択について(依頼)』という文書の配付を中止するよう要求しました。
 当局は「今後のことは、窓口で整理したい。本日出された組合の要求と解明事項については、できるだけ早く回答したい」と発言し、終了しました。

 組合は、20日の団体交渉が中断したことについては、第一に組合との交渉事項である賃金労働条件(制度選択)について、組合を無視し、未確定文書を一方 的に部長会で説明し、持ち帰ってくださいとした当局にあげて責任があると考えています。とりわけ性格の曖昧な未確定情報をあたかも確定したかのごとく 各教員に伝えるよう、当局の一員である都立大学事務局長が部長会で求め、教員各人に重大な誤解を与えた責任は重大です。にもかかわらず、昨年秋に当局 が組合に謝罪を求めた態度とは、異なる対応をしたことについて、当局の責任を追求したものです。
 第二に、組合はいたずらに交渉を引き延ばそうとしてはいないことを表明します。時間が限られているからこそ、これまで以上に交渉ルールを厳格に守るこ とが必要なのです。
 第三に、組合は、四大学の教員に、当局が求めようとしている『任用・給与制度の選択について(照会)』に対して、あわてて回答しないよう呼びかけます 。20日の交渉の中で、組合は提出した「緊急要求」「緊急解明事項」について、当局はできるだけ早く回答することを組合に約束しました。「緊急要求」 「緊急解明事項」への回答を注視していただき、軽々に「照会」への回答をしないよう、要望します。別掲の組合顧問弁護士のアドバイスにもあるように、当局の求める制度選択に回答することが、四月以降の労働契約を拘束してしまう可能性があります。また、異議を唱えることを放棄したと受け取られるおそれがあります。慎重のうえにも、慎重を期す必要があるのです。
 第四に、各大学の学長に求めます。当局と組合との交渉が正常に戻るまでは、大学管理本部長名の『任用・給与制度の選択について(照会)』の配付を中止 してください。
 最後に、組合は賃金労働条件については、粘り強く交渉重ねて、主張すべきことを主張し、要求すべきことを要求し、あくまでも交渉を中心にして、組合員 の権利を護ることを表明します。このことは、「法人と大学の役割が曖昧である」ことなどを示して、反対をしたにもかかわらず、12月議会で定款が議決さ れたことなどを踏またうえでの態度です。いろいろな制約はありますが、組合員が団結してことにあたれば、交渉を通して、多くの成果が挙げられると考え ています。組合は、依然として、「新制度」「旧制度」ともに現状の勤務条件の不利益変更と考えています。(不利益変更でないという説明がなされていない。また地独法によって「身分が継承」されるのに不利益変更はできない)。まだ、組合に加入されていない教員のみなさんには、「組合は団結が唯一の力」であることに、理解をいただき、教職員の権利と労働条件、教育・研究条件の維持・向上のために、組合への加入を呼びかけるものです。

あわてて提出する必要はありません
――組合弁護団からのアドバイス――

 昨日20日から、12月17日付の『任用・給与制度の選択について(照会)』が各個人に配布され始めています。中執がこれまでに把握したところでは、科技 大は午後3時半より事務局長が個別に手渡し、短大(昭島)では教員ポストに配られ、また都立大法学部、経済学部でも配布されているようです。
 この「照会」に対して、中執は、組合員の疑問に基づいて要求している解明事項が明らかにされておらず、また、団交さなかの論争点をあたかも決まった ことであるかのように記述していることに強く抗議しています。百歩譲って、管理本部が「照会」を行うにしても、組合の「少なくとも1ヶ月の熟慮期間を 」という要求を無視して当局が一方的に決めた1月14日という締め切りの必然性については何の事前説明もなく出されているのは許せないことです。
 組合中央執行委員会は、あらためて4大学の教員が、あわてて提出に応じる必要は全くないことを、すべての組合員と教員に訴えます。
 一方で、不安を抱く教員も出ると思いますので、組合弁護団からこの文書について寄せられているアドバイスを中執の責任で要約して紹介しておきます。
1. この文書は、これまでに出されている組合の要求、弁護団の意見書の本質的な問いかけに答えていない。
 ・ 相変わらず、「新制度」「旧制度」ともに現状の勤務条件の不利益変更と考えられる(不利益変更でないという説明がなされていない。また地独法 によって「身分が継承」されるのに不利益変更はできない)。
 ・ 「旧制度」という表現自体が誤導的で、給料月額の「固定」の根拠が示されていない(生計費や業績蓄積等への評価がない)。
 ・ スケジュールが重要な選択、判断をするには無理。
2. 十分な判断材料が示されていない以上、また、新・旧どちらも権利侵害の可能性が強い以上、任期制も含めて、みずから積極的に「新制度」をとり たいと考える人以外は、たとえ「旧制度」を選択しようと思う人も、進んで照会に応じる必要はない(異議申し立てを放棄した、とみなされる可能性がある )。
3. 「注意事項(1)」によれば、提出期限までに回答のない場合は「旧制度の適用を選択したものとみなして取り扱う」のであって身分それ自体には 影響しないこととなっているので、現状を下回らない条件提示を求めて要求、交渉を継続するべきである。

 今後の勤務労働条件を決定する重要な時期です。すべての教員が組合に団結して闘うことを強く訴えます。