2299号
 

          多数の問題点をそのままにした設置認可は遺憾

      ―管理本部・学長予定者らは設置審の問題点指摘に誠実に応えよ―

                            2004年9月24日 東京都立大学・短期大学教職員組合中央執行委員会

 大学設置・学校法人審議会は9月21日、首都大学東京の設置を認可する答申を、留意事項及び付帯意見とともに文部科学大臣に答申しました。留意事項は以下の5点です。

1.既設大学の教育研究資源を有効に活用し、統合の趣旨・目的等が活かされるよう、設置者及び各大学間の連携を十分図りつつ、開学に向け、設置計画(教員組織、教育課程の整備等)を確実かつ円滑に進めること。

2.名称に「都市」を冠する「都市教養学部」の教育理念を一層明確にし、これにふさわしい特色を持つ体系的な教育課程の編成に一層の配慮をすること。特に分野横断型の「都市政策コース」や「都市教養プログラム」等、要となる科目群の教育内容について独自性が十分発揮されるよう、その充実を図ること。

3.関係組織間の適切な連携の下、単位バンクシステムや学位設計委員会等の新たな試みが円滑かつ有効に機能するよう努めること。

4.学生の選択の幅を拡大するコース制等を導入するに当たっては、大学設置基準第19条に掲げる教育課程の体系的な編成に十分留意すること。また、学生が科目等の選択を円滑に行えるよう、きめ細やかな履修指導体制の一層の充実を図ること。

5.平成18年度開設に向けて構想されている新たな大学院については、新大学の趣旨・目的等にふさわしいものとなるよう十分に配慮した上で、その構想を可及的速やかに検討し、示すこと。

 またこれらに加え、「その他意見」として以下のようなものが付されたと伝えられます。

 第一に、都市教養学部の学部名称について、普遍的性格を持つ「教養」と限定的な「都市」とを組み合わせた名称には違和感を感じる向きもあるとして、学部名称の今後の変更を示唆しています。

 第二に、教育研究の質を確保するためには教員の意欲・モラルが重要で、そのために設置者からの正確な情報提供等、設置者と教職員が一致協力して開学準備にあたるなどの体制を確立すべきことを指摘しています。

 第三に、新大学の掲げる使命にとっては様ざまな学問的アプローチが必要で、学問分野間の均衡のとれた教育研究体制を求めています。

 認可にあたりこれだけ多くの留意事項と意見が付せられたのは、国公立大学としてはきわめて異例のことで、このこと自体が、新大学の設立準備が、内容面・手続面の双方にわたって、きわめて重大な問題を含んでいることを示しています。

 設置審が指摘している問題点の第一は、設置準備の手続についてです。都立大学総長・評議会、四大学教員声明、開かれた大学改革を求める会など、四大学の圧倒的多数の教職員が、現大学の機関及び教職員との「開かれた協議」を強く求めてきましたが、いまだ明確な形では実現していません。「設置者及び各大学間の連携」や設置者と教職員が一致協力した体制の確立などは、まさにその問題を指摘しています。ちなみに留意事項第一項目は、既設大学の統合などにより設置される他の大学にも共通に付せられたものですが、昨年までは動揺の同様のケースでもこのような留意事項は付いておらず、今回の東京都の進め方が念頭におかれていることは明らかです。

 第二は、教育課程編成等をめぐる問題です。「教育課程の体系的な編成」という留意事項4の指摘は、学生の選択のみを一方的に重視して教員組織の教育課程編成に関わる責任と権限を直接間接に大きく制約しようとしている現在の構想への厳しい批判といえます。さらにこの項目と「単位バンク」に触れた項目3を併せて理解すれば、その「円滑かつ有効」な機能とは、現在示されている構想のそのままの実施を求めているのではないことも明らかです。

 第三は、都市教養学部の名称です。これが歪んだものであり学部名称としてふさわしくないことは再三にわたって指摘されており、以前の教学準備委員会でも都立大から参加している委員らからがその変更を強く求める意見が表明されていました。「その他意見」のなかではその名称変更についても示唆されていますが、当然の指摘です。

 第四は、教育研究領域のバランスの問題です。新大学の「使命」をはじめ行政や「都市」への貢献だけが一方的に強調され、学部・研究科構成や研究費配分などで総合大学として本来備えるべき基礎的な教育研究領域がおろそかにされている状況に対しては、やはり強い批判が学内外からおこっていました。学問分野間の均衡のとれた教育研究体制の構築とい「その他意見」の指摘は、まさにこの問題を指しています。

 教職員組合は、これまで設置審及び文科省への数回にわたる会見や設置審各委員への要請書送付などを行い、に対して昨年8月以来の新大学構想に関わる数々のな問題点を指摘した上で、、慎重な審査を求め安易な認可を行わないよう要請してきました。異例な量のこのような留意事項・意見が付せられたことは、設置審も私たちの指摘した問題点の多くについて、同様の認識を示したといえます。設置審が問題点の多くについて深い認識に立ったことに敬意を表します。

 しかしながらこれらの問題点を認識しながらも、それらがいまだ解決しないままの現時点で設置認可を認める判断を下したことについて、私たち教職員組合は強い遺憾の意を表します。これらの重大な問題点を孕んだままの認可は、私たち都立4大学教職員にとって、来年度以降も在籍する4大学の学生院生にとって、また日本の大学全体の将来にとって重大な禍根を残すものです。

 教職員組合は以下のことを各方面に対してあらためて強く求めます。

 大学管理本部及び新学長予定者・新理事長予定者らには以下のことを強く求めます。

 第一に、文科省・設置審から指摘された留意事項等について、文科省が公開しない「その他意見」や面接審査の際に口頭で指摘された内容等を含め、四大学と教職員に対して性格に正確に包み隠さず公開することを求めます。

 第二に、設置審が指摘する問題点、とりわけ単位バンクを含む教育課程編成、学部名称、・教育研究体制の基礎領域を含む均衡のとれた構成などについて、4大学教員組織等との十分な協議に基づいて抜本的に修正することを求めます。

 第三に、とりわけ4大学との開かれた十分な協議体制の確立は、上記のことや、現在深刻に滞っている新大学及び現大学のカリキュラム・時間割編成、入試、事務組織等の準備のためにも決定的に重要なことで、その実現を強く求めます。

 文科省及び設置審には以下のことを強く求めます。

 第一に、文科省には設置審が認可答申をしたとはいえ、様ざまな問題点が指摘されており、安易な認可を与えることなく、引き続き必要な指導を加えることを強く求めます。

 第二に、設置審に対しては、留意事項をはじめとする諸意見が確実に実施されるか否かについて、必要な監視と必要な指導を今後とも十分に行うことを求めます。