2296号
 

東京都立大学・短期大学教職員組合が大阪府立大学教職員組合、全大教とともに公立大学の法人化問題について文部科学省と会見
      
 東京都大学管理本部が第4回経営準備室運営会議に提出した「法人組織(案)」、「定款(たたき台)」によると、次のような重大な問題があります;
○ 理事会規定が存在しないため、理事長がワンマンで全てを決定出来る
○ 事務局長を副理事長とし、実質的に学長を超える権限を持つ
○ 教授会が大学の組織上どこにも位置づけられていない
 地方独立行政法人法に基づく公立大学の法人化が全国的にすすめられる中で、大阪府立大でも設置者権限を振り回した、およそ「大学改革」の名に値しない行政主導で法人化が進められています。
 一方で、地方独立行政法人法の制定の際には、大学の教育・研究の特性に配慮した「公立大学法人の設立に関しては、(中略)、憲法が保障する学問の自由と大学の自治を侵すことがないよう、大学の自主性・自立性を最大限発揮しうるための必要な措置を講ずること」と付帯決議がなされています。東京と大阪で進められている公立大学の法人化の動きを、その認可の審査にあたる文部科学省の担当者が、地方独立行政法人法による大学の法人化の趣旨に照らして、審査の過程でどのようなチェックを行おうとしているのかについて見解を問い、また大学の現場で今何が起こっているのかを説明するために、組合は8月6日に文部科学省との緊急の会見を行いました。
 会見には、文部科学省から大学振興課の嘉藤課長補佐、公立大学係の堀内係長等が、都立大・短大教職員組合からは浜津委員長と乾副委員長、大阪府立大学教職員組合から中嶋書記長、全大教からは、森田書記長、藤田書記次長が参加しました。
 会見では、最初に全大教が、公立大学の法人化について、地方独立行政法人法で附帯決議がなされているにもかかわらず、東京都や大阪府はこれらを無視した形で法人化が進められようとしていることについて説明し、その後文部科学省とのやりとりが次のように行われました。(以下の発言者見出しで、「全大教」とあるのは、全大教、都立大・短大教職員組合、大阪府立大学教職員組合を指します。
 全大教:昨年11月に公立大学の法人化に関して会見した際、法人化に際しては大学の関係者と十分協議して決定することが当然に必要との認識が示された。このことを基本に対応してほしい。
 全大教:東京都の場合、大学設置認可については就任承諾書がそろわないことなどから審査継続となっている。昨年11月にも示された大学の自主性・自律性の尊重という点から、法人設置・定款審査にあたって、どのような手続き及び指導を行うのかを伺いたい。
また、11月に述べられていた大学の関係者からの意見聴取について是非お願いしたい。
 全大教:大阪府の場合も東京都と共通の問題が多い。たとえば人事委員会が設置されるなど、自主性・自律性に関わる人事に対する教授会権限の制限が見られる。人事委員会は、現在、設置者判断で不法な助手一律任期を付けたやり方と同じ枠組みを、法人内に再現しようとしている。自主性・自律性、民主的、大学主体の改革と言いながら、長期8年任期になる理事長予定者の決定をはじめ、法人化など様々な重要な問題が、評議会の議決もなく、学内の支持も得られていないのが実情である。
 文科省:公立大学の法人化については、国立大学法人の枠組みをならうものと考える。「地方独立行政法人法」も、教育・研究の特性に配慮しなければならないとしている。一方で地方自治体の判断もある。法人化はあくまでそれぞれの選択であり、やらないところに尻をたたいてやれということはしない。細かく法律で規定していないが、大学がよりよい教育と研究を行うことができるよう設置者と大学がよく話し合ったうえで行うことを前提としている。
 全大教:公立大学は地方自治体の実状とりわけ財政状況に強く影響を受けている。財政再建の方策のトップに大学法人化を上げているが問題とは認識しないか。地方の実情とは、地域貢献などは理解するが行財政の問題も含むのか。
 文科省:公立大学の法人化は一般の地方独立法人化とは異なる。より良い教育と研究が行えるようにすることが前提である。したがって地方自治体の実情とは、決して行財政計画とはとらえていないが、設置者がどう考えているかにまでは踏み込めない。それぞれが十分話し合ってほしい。
 全大教:申請にかかわって、どのような具体的チェック、手続きが行われるのか。
 文科省:3月末に決められた認可基準に沿ってやる。地独法及びその大学に関する特例にもとづいてチェックする。基本的には定款に基づき、法定事項をチェックする。定款にどこまで盛り込むのかは微妙な問題がある。法定事項以上に中身に踏み込むことは難しい面もある。
 全大教:原則論として、教員人事にかかわることは教育研究の特性として重要事項と認識しているか。
 文科省:重要事項である。
 全大教:大阪・東京とも教員人事に関して強力な権限を持つ「人事委員会」という組織を、定款にも学則にも示されない形で設置しようとしている。しかもその構成は経営の発言権が非常に大きいものとなっている。このようなことは教育研究の特性を侵すことにならないか。
 全大教:教員人事は学校教育法上は教授会が行う重要な審議事項の一つであり、教員人事については定款あるいは学則で規定されることが想定されているはずである。しかしこのような重要事項を司る「人事委員会」が、定款にも学則にも現れないことで、形式的チェックがすり抜けられるとすれば、まるで抜け道である。このようなことにどう対処するか、十分に工夫をお願いしたい。
 文科省:東京都と大学との間では、どのような体制で制度作りがされているのか聞きたい。
 全大教:法人の仕組み及び定款案はもっぱら都大学管理本部で実質的に作成されている。4月以降、形式的に大学の意見を聴くということはあるが、協議は依然として行われていない。
 全大教:大阪府の定款によれば、「地方独法」の「公立大学の特例」の仕組みに沿って教育研究審議機関と経営審議機関の定めがある。ところが実際にはその上位規定にある人事委員会の定めが全くされていない。また、「任期制」についても「教育研究審議機関」が教員の人事に関することも司るということになっているにもかかわらず、そこでは審議されず、教員任期法の趣旨にも反する形で助手全員に任期制を適用するということで極めて乱暴なやり方になっている。「地方独法」の附帯決議にも「大学の自主性・自律性が最大限発揮しうる仕組みとすること」と明記されている。これは公立大学を法人化する際きちんと対処するよう政府に対する要請でもある。審査では、是非実態も踏まえて行って頂きたい。
 文科省:大阪府立大の定款の審査はこれからである。法の基準に沿って審査することになるが、おっしゃっているお話も踏まえてやっていきたい。
 全大教:教員人事は重要事項である以上、定款あるいは学則に明記されるべきと考える。定款審査の際、学則等と照らし合わせて全体としての不備をチェックするなどは行うのか。
 文科省:首都大学の設置についてはまだ審査中であり、定款(案)はまだ提出されておらず見ていない。設置認可は一旦、法人化前の形で行った上で直ちに設置者変更の手続きがなされる。その時に学則の提出もしてもらう。そのうえで中身を見る。(組合注:首都大学設置については既に学則案を提出してあるが、法人設立については現時点では学則案の提出を求められていない。)
 全大教:大阪の場合、「人事委員会」に関する詳細は就業規則で初めて表に出ることになっている。これもチェックの対象になるか。
文科省:学則については、府立のような直営の大学からの移行では、設置者変更手続きを経て法人化されるが、学校教育法上の変更申請時で学則がチェックされる。就業規則についてはすべてをチェックするのは難しいが、事情は理解する。就業規則の人事部分についてはチェックが必要かもしれない。
 全大教:首都大学東京は地方独立法人法の例外的な理事長/学長分離型である。理事長は知事が選任・任命し、理事会の規定も無い。理事長が絶対的な権限を持ちうる制度となっている。また、事務局長=副理事長とされていて、教学とバランスを欠く。このような形は、教育・研究の特性への配慮という点で好ましくないのではないか。
 文科省:制度の中味については個々の事例を見なければわからないが、理事長と学長がそれぞれ、経営、教学とうまくバランスをとりつつすすめることが望ましい。(一般論としては)バランスが確保できる担保があるかどうかをチェックしたい。
 全大教:大阪の場合、自治体の財政的観点が先行したいびつな形の制度設計となっていることを充分認識して頂きたい。その点から実態重視で十分な精査をお願いしたい。
全大教:法人制度は、本来よりよい大学をつくるためにあるはずである。しかし、聞いて頂いたように実態は、大学のあるべき姿が論じられず財政困難を理由に行政から強権的に行われている状況を認識して頂きたい。公立大学の法人化については、総務省だけの認可ではなしにわざわざ文科省との二重のチェックをするということにした趣旨を十分ふまえ審査を行って頂きたい。
 文科省:大阪府立大にしてもあらたな大学としての認可だとするならば、完成時の実地調査などのチェックも行われる。実状は理解したつもりである。

 最後に、引き続き今後とも必要に応じて会見の機会を持っていくことを確認して会見を終えました。