2419号
  

 17億円の利益は、教育・研究条件、教職員の待遇改善に向けるべき
組合―「固有職員の常勤化と待遇改善を」
当局―「新たな固有職員制度の整備は、重要課題」
―2007年度予算要求書を提出―

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      組合は、8月4日に、「2007年度公立大学法人首都大学東京の予算・人員に関する要求について」を法人当局に提出しました。この中で、組合は、「17億円の利益は、教育・研究条件の改善とそれを支える教職員の待遇改善に振り向けること」や「固有職員の常勤化と待遇改善」を要求しました。
 また、教員の人件費については、扶養手当と住居手当等を改めて要求しています。4月からの新しい教員の給与制度では、扶養手当、住居手当、単身赴任手当は、経過措置給として、2004年度若しくは2005年度の支給実績の多いほうを支給することになっています。しかし、これでは、22歳以上で扶養の要件を満たしていない子どもに対しても支給する一方、今年度になって生まれた子どもや結婚して配偶者を扶養する場合や、配偶者が仕事を辞めても扶養手当が支給されないなどの矛盾が生じています。また、今年度採用された教員については、扶養手当、住居手当、単身赴任手当のいずれも支給されておらず、不満の声が組合に寄せられています。
 当局は、組合の要求に対して、具体的な回答は示していませんが、教員の人事制度と固有職員制度の整備については、重要な課題であるとの認識を、組合に対して示しました。
8月11日には、東京都総務局首都大学支援部に対しても、同様の要求書を提出します。
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(総務部長発言)
 本日は、東京都立大学・短期大学教職員組合の皆さんから予算・人員に関する要求を提出されたい旨、お話がございましたのでこの場を設定させていただきました。早速ですがはじめてまいりたいと思います。

(組合側発言)
 2007年度の予算人員要求提出にあたり、私から一言申し上げます。
 2006年度の公立大学法人首都大学東京の決算について、「業務コストを最小限に抑制するなどの経営努力に努めた結果、17億円の節減効果による利益を計上した。」と、法人は6月30日に発表しています。懲罰的な「旧制度」の教員賃金や、基本研究費の削減、マスコミでも「格差」を社会問題として取り上げていますが、年収2000万円を超える法人役員の報酬が支払われている一方で、年収250万円に満たない固有職員を100名近く雇用してきた結果です。組合は、こうしてあげた「利益」を、教育・研究条件改善や大学の業務を支えている教職員の待遇改善にふりむけるべきだと考えています。
 具体的には、100名近く減った教員の待遇改善、特に扶養手当や住居手当、単身赴任手当などの生活給に振り向けること、来年度から新たに設けられる助教職をはじめとする、教員全体の給与水準の改善などです。
 固有職員については、「同一労働・同一賃金の原則」に基づいて、契約更新時の昇給も含めて、都派遣職員との均衡を失しない賃金の改善が必要です。今年度末には、「団塊の世代」の大量退職に伴い、都派遣職員の削減なども予想されることから、固有職員の常勤化は、喫緊の課題です。これまでの経験を活かすためにも、現在働いている固有職員を常勤化すること、その選考にあたっては、現在従事している職務によって、不利益がないよう、早急に選考方法を明らかにすることや、事前の研修などを行い、大学の事務・教育支援体制を支える人材育成に取り組む必要があります。常勤の固有職員の待遇については、労使交渉事項です。6月27日の団体交渉で、当局は、早ければ来年度から一部を常勤化すると回答しており、選考方法や待遇について、早急に組合に示す必要があります。
 また、東京都は、7月31日に「東京都次世代育成支援プラン(東京都特定事業主行動計画)に基づく取組の推進について」という通知を各局長宛に出しています。東京都の取組も私たちの立場からみると、十分ではありません。残念ながら、法人は、次世代育成支援推進法に基づく、「一般事業主行動計画」を作成しておらず、次世代育成支援対策を行う責務を十分に果たしているとは言えません。いうまでもなく、少子化は大学という教育機関にとっては、その将来の顧客となる子どもが減少するということです。また、看護師や助産師を養成する本学こそ、他に先駆けて、次世代育成支援に取り組む必要があると思います。固有職員の多くは女性で、出産や育児を担う世代が多く、次世代育成支援のための制度は、都派遣職員と比べて極めて劣悪です。こうした点も含めて、固有職員の待遇改善を求めるものです。
 次に、学校教育法が改正され、来年度より、現在の助手が助教と助手に分けられることになりました。現在、人事制度等検討委員会でこの問題が検討されていますが、組合は、現在の助手の勤務実態と本人の希望をふまえた、必要で十分な検討を求めます。現在行われている調査の結果については、まとまり次第、組合に対しても説明することを要求します。いずれにしても、助教とされる教員の勤務条件の悪化と、「新助手」の待遇を引き下げることは、断じて認めることはできません。
 学部再編に伴う、南大沢キャンパスと日野キャンパスの間、及び短大教員の研究室の移転問題が今年度の重要課題です。組合は、都立4大学の学生が在学している期間については、これらの学生の学習権を十全に保障することがなにより大切で、研究室の移転によって、学生の勉学条件が悪化することのないように十分に配慮することは当局の責任であると考えています。その点で、日野キャンパスの新棟の容積が現状の4割程度しかないということは、極めて問題だと考えています。新設されたインダストリアルアートコースや来年度新設の観光ツーリズムコースの教育も含めて、十分な学生教育と教員の研究ができる環境整備は法人が果たす最低限の責務であり、冒頭申し上げたように、17億円の利益は、教育・研究条件の改善とそれを支える教職員の待遇改善が必要で、まず「業務コスト削減」ありきという姿勢では、本学の発展はおろか、大学の将来が危ういとの認識を組合は持っています。
 私からは、以上です。
(組合側から要求書を提出し、説明)

(総務部長発言)
 それでは、私から申し上げます。
 ただ今、東京都立大学・短期大学教職員組合の皆さんから、「2007年度公立大学法人首都大学東京の予算・人員に関する要求について」を承りました。
 内容が多岐にわたるほか、経営的事項に係る内容も多く盛り込まれておりますので、今後精査してまいります。
さて、先般ご説明したとおり、法人は、これまでの取組成果と課題を踏まえ、中期計画の達成に向けた大学の基盤整備を行うため、「大学改革を加速する新たな取組〜改革加速アクションプログラム〜」を策定いたしました。
改革を支える教育・研究体制、事務組織体制、施設・設備など法人・大学運営の基盤を強化していくため、教職員が一丸となって取り組んでいくことが必要と考えています。
とりわけ、教員人事制度の諸課題については、引き続き、重要な課題であると認識しており、現在、精力的に人事制度等検討委員会で検討しているところです。加えて、新たな固有職員制度の整備についても、私ども事務局として早期に取り組むべき重要な課題と考えており、精力的に検討を行っています。
 これらの喫緊の課題に関して、協議すべき事項につきましては、しかるべき時期に精力的に協議をさせていただきたいと考えております。
 このほか、先の団交でご発言をいただいておりますが、勤務時間に関する課題についても早急に解決を図る必要があると考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 いずれにいたしましても、皆さんからの要求については真摯に受け止め、今後、よく検討していくとともに、法人教職員の勤務条件については、充分な協議を重ねてまいりたいと考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
私からは以上です。

(組合側発言)
 勤務時間問題に関しては、これまでも交渉を拒否したことなどはなく、超過勤務の縮減のために、いつでも交渉のテーブルつく用意があります。
 超過勤務の縮減に向けた、より具体的な方針を提示されることを要望します。

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                              2006組発第2号

2006年8月4日
公立大学法人首都大学東京
理事長 橋 宏 殿
東京都立大学・短期大学教職員組合
                       中央執行委員長  大串 隆吉

2007年度公立大学法人首都大学東京の予算・人員に関する要求について

 公立大学法人首都大学東京が発足し、1年が経過しました。
 この法人のもとに、法人発足時より新大学の首都大学東京と既存の東京都立大学、科学技術大学、保健科学大学、短期大学が併存し、今年度から新たに産業技術大学院大学が設置され、来年度は高等専門学校の法人化が予定されています。
 これらの大学における教育・研究を維持し、発展させるためには、教育関係費はもちろんのこと、1998年度から毎年10%程度削減され、現在は1997年度の40%台にまで減少している基本研究費の増額などを含めて、財政的保障が不可欠です。
 また、教育研究を担う教職員数の確保と教育研究環境の改善も不可欠です。
 先頃発表された法人の決算報告では、17億円の利益(黒字)があったとされています。この利益(黒字)は教育研究の充実とその担い手である教職員(特に固有職員)の待遇改善に充てることが至当であると考えます。
教職員組合は貴職に対して、来年度予算・人員について、下記事項の実現を強く要求するとともに、個別事項についての細目協議を十分行うことを要求します。
T.予算について
1.運営費交付金について
 学生増、高等専門学校の法人化に見合う運営費交付金の増額を東京都に要求すること。
2.人件費について
(1)教員について
@ 現在の全教員の定期昇給分及び住居手当、扶養手当、単身赴任手当等を含む給与額を確保すること。
A 非常勤講師の賃金(交通費、集中授業のために遠方から来る非常勤講師の宿泊費も含む)を十分に確保すること。
B 特任教授の賃金を確保すること。
C 助教制度の導入にあたっては、その待遇を改善すること。また、助教制度の導入を口実とした助手の待遇改悪を行わないこと。
(2)事務職員について
@ 現在の固有職員、派遣職員全員の賃金を確保すること。
A 組織変更・事務処理方法変更に伴う事務作業の増加に見合う期間的な追加職員を確保すること。また事務作業増加に対する残業手当を確保すること。
B 固有職員について、賃金を引き上げるとともに期限の定めのない雇用に改めること。また、休暇等についても、都派遣職員と均衡を失しないよう改善をはかること。
3.教育研究経費について
(1)研究費総額における基本研究費の割合を増やし、額を増額すること。
(2)傾斜的研究費は、ごく一部の重点分野に限定してそれに見合うだけの額に抑え、その他は極力、基本研究費に回すこと。また、応募資格について抜本的に見直すこと。
(3)図書費、特に雑誌費については、現在の水準を下回らないように共通経費として、基本研究費とは別途確保すること。
(4)「新分野創設」などの戦略的経費は、今年度運営交付金水準額とは別途確保すること。特に来年度開設予定の観光ツーリズムコースおよび法人化が予定されている高等専門学校の施設・設備経費は確実に別途確保すること。
(5)教育経費について、学生数の増加に応じた額を十分確保すること。
(6)減価償却を正確に見積もり、現有の教育設備・備品と同等以上の水準が確保されるよう、修繕・更新のための費用を十分確保すること。
(7)TA、RAの経費を十分に確保すること。
(8) 傷害保険、損害保険等の各種保険に加入するための経費を別途確保すること。
(9)学費の値上げを行わないこと。
(10)短期大学を含む都立4大学の学生の在学期間中は来年度以降もその教育を完全に保障する経費を確保すること。
4.旅費について
   異なるキャンパスでの授業及び会議のための出張費を十分確保すること。
5.教員組織変更に伴う費用について
(1)南大沢、日野、荒川、昭島、晴海キャンパス間の教員研究室・実験室移動に伴う移転費用には、単なる移動費用のみならず、各キャンパスにいる学生及び大学院生の研究活動に支障のないよう、実験機器については仮移設場所の確保ならびに機器の調節経費も含め、全額確保すること。
(2)他キャンパスから授業に来校した教員の居室を確保すること。
6.施設整備費について
(1)マルチキャンパスに対応したネットワーク回線の増強費用を確保すること。
(2)事務処理合理化のための電算システム導入経費を確保すること。
(3)昼食時の食堂混雑の緩和のため、増築など必要な措置をとること。
(4)アスベスト対策を行うこと。
(5)南大沢、日野、荒川キャンパスについて、中長期的な大規模改修を行うこと。この経費は、通常の法人予算とは別枠で措置するよう東京都に要求すること。
7.その他
(1)教員・学生が南大沢−日野キャンパス間を移動するためのバス運行経費を引続き確保すること。利用者の要望を聞き、運行回数を増やすこと。
(2)生協施設等への援助を施策化し、賃借料等を値上げしないこと。
U.人員について
1.人員削減を行わないこと
2.慢性的な超過労働を解消できる人員措置を行うこと。
3.必要で十分な都派遣職員を確保すること。
4.任期の定めのある固有職員を期限の定めのない雇用に改めること。
5.新旧両大学の教育を保障する必要で十分な非常勤講師を確保すること。