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2457号

任期評価の検討開始にあたっての組合の見解と要望

2007年8月1日 公立大学法人首都大学東京労働組合 中央執行委員会

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 私たちは法人化の過程で教員の任期制、とりわけ本法人がめざしている「全員任期制」には強く反対してきた。教育研究を担うスタッフがめまぐるしく交替するのでは学生にも都民・国民に対しても無責任であり教育研究機関としての大学の自殺行為だからである。
  またこれまで期限なしの雇用の中で瑕疵なくつとめてきた労働者に、納得できる勤務条件の改善もなく期限付雇用に切り替えるのは明らかな労働条件の悪化だからである。
  にもかかわらず、法人は応じないものには懲罰的な給与制度と昇任停止措置で臨み、昇任者と新規採用者にはすべて任期制を強行してきた。その際に法人はこの合理性のない任期制を『公正・公平な「教員評価」を軸に、教員のステップアップと組織の活性化を図る「任期制」』(『教員の新たな人事制度』(平成18年1月))であると称した。
  この任期制が始まってすでに1年半も経過しようとしている現在、ようやく法人は人事制度等検討委員会に「任期評価」策定を提案しようとしている。
  私たちは教職員の雇用と労働条件に責任を持つ組合として、「全員任期制」という基本方針にはあくまで反対だが、現に「任期付教員」が多数いる以上、さし迫った再任判定で不当に職を奪われる教員がひとりでもでてはならないと考えている。また任期評価を巡って労働条件の悪化が生じることも許さない。
したがって、以下に任期評価に関する組合の基本的見解を改めて示し、法人当局および評価方法策定に関わる学内諸機関がこれらの点を十分に考慮した上で検討に入ることを要望する。

1.首都大学東京における任期制の現状
 @ ごく最近の新規採用者以外のほとんどの任期付教員の任期がすでに1年半過ぎようとしている。5年目の前半までで評価を行うことから、最初の再任判定まであと3年を切ろうとしている。したがって、『教員の新たな人事制度』に謳われている「目標−到達度」評価であるなら、だれひとりに対しても評価を行うことはできない。だれも「任期目標」を提出していないからである。
 A もともと評価の基準も方法も検討しきらないまま、「評価を軸とする任期制」が出発してしまったところに根本的な欠陥がある。しかも『教員の新たな人事制度』によれば、
『「年度評価」で毎年度の取り組みを評価する一方、教育研究成果には一定の期間が必要であること等を考慮して、別に一任期を対象に「任期評価」を実施する』
とされているが、「一方」という言葉は何も関連性を伝えておらず、「任期計画の中の各年度」なのか、「各年度の積み重ねの任期評価」なのかまったく分らない。同じ4カテゴリーによる「領域評価」とそれを総合する「総合評価」、という方法上区別しがたい評価を二重に行おうとしているのだからなおさら両者の視点の違いを基準の違いとして明示しなくては無意味である。
 B 任期付教員、とくに新規採用教員はこの「基準なき再任評価」に大きな不安を抱えている。まったく個人的な感触で「良好な勤務成績なのか否か」憶測しなければならないからだ。本来「目標−到達度」評価は途中での指導やサポートが不可欠なはずだが、教員の全活動を把握し、理解し援助できる「管理職」を望む方が無理である。OU所属の教員のように組織上からもそれが不可能である場合すらある。
「後出し」の基準で職を失うかどうかが決まるのでは継続的な教育研究ができるわけはない。
 C 本法人の雇用制度でとくに指摘しておきたいのは、法人化以後の2年半、任期付教員と非任期教員との間で職務上の差異は全く存在しないという事実である。同様に働き、同様に法人と大学に貢献している。法人が主張しているように「任期を付けなければ教員はさぼる」だろうか。試行された年度評価や日常の事実が明らかに否定しているではないか。ところが、非任期教員は年度評価でいかに高く評価されても(職務を立派に遂行しても)職務給は据え置きである。したがって業績給も低くなる。さらに加えて扶養手当も住居手当も削られてゆく。これが懲罰的給与制度でなくして何だろう。現在の評価制度が、不合理な差別の上に行われるがために根本的な信頼感が生まれないのだということを法人当局は認識すべきである。
 D 一方、任期付の教員が頑張ったとして、「ステップアップ」が約束されているだろうか。法人化以後も「人件費抑制」で、昇任は以前とまったく変わらず「空きポスト」ができなければ部局は昇任を起案できない状態は変わっていないのだ。
 E また再任基準の一つとして、准教授1回目M○合、准教授2回目及び教授D○合などが示されている。しかし、OUや基礎教育センター所属教員の一部など、大学院所属となっていない教員が存在する以上、この基準自体に問題があることは、すでに組合ばかりでなく人事制度等検討委員会においても指摘されてきたとおりである。
 
2.再任評価に関する組合の要求
大学の基本的な教育・研究に持続性・継続性が求められること、したがってそれを中心的に担う教員スタッフにも継続性が求められることはいうまでもない。法人が現行「任期制」の基本を「ステップアップ型(再任型)」と称し少なくとも准教授・教授については再任を基本としていること、また旧東京都大学管理本部が再三にわたって「通常の勤務成績・業績を上げていれば再任は可能」と説明してきたことは、東京都及び法人自身が、教育・研究の基本は継続的にそれを担う教員スタッフによって担われなければならないことを認めていることに他ならない。また再任時に大幅な昇給がなされる仕組みなどからから、「ステップアップ型」への採用・任用は1任期を越えた継続的な雇用を双方が期待して行われたものといえる。したがって、例えば懲戒解雇に相当するような教員として継続するのにふさわしくないと判断される事例を除き、全員の再任が行われることこそ、法人自身の想定している制度の考え方であるはずだ。このことをふまえ、当面、以下のことを要求する。
 @ 法人はこれまで団体交渉や教員説明会の場で何度となく、「普通に働いていれば再任する」と言ってきたことをふまえ、再任基準を検討する過程では「普通に働いていれば再任」される分りやすい基準を具体化することが義務である。
 A 基準もないままに経過した時期の長さを考慮し、任期付教員の第1回目の再任は原則的に可とし、例外的に再任されない場合の客観的基準を示すべきである。
 B 長期的な視点に立った再任基準、判定方法については、時間をかけて教員組織で検討するべきである。その際に、部局、分野の教育研究の多様性、特徴を活かすことを第一とするべきである。したがって、全学画一的な「大学院審査」を義務化しないこととするべきで、少なくとも今回の再任審査においては、この基準を保留すべきである。
 C 助教に対する「研究員型」任期制は「使い捨て」にならぬよう、とくに慎重に検討することを要求する。また、助教の定義上、独立したスタッフとして「ステップアップ型」に含め、昇任機会を保証するものに変えるべきである。
 D 試行の総括がなされていない年度評価との関係を分りやすく明示するべきである。また、再任審査を「一、二年分の年度評価の総合」で替えるなどという安易なごまかしを行うべきではない。

3.教員人事制度全般の根本的見直しを
 @ 任期制を法人が言うような「ステップアップ型」で、教員の活性化と教育研究の発展に資するものとするなら、任期付教員の「テニュア・トラック」を制度化することが不可欠である。組合はすべての教育研究スタッフとくに若手教員の「使い捨て」任期制にあくまで反対する。
 A 働き方に差がない以上、任期付、非任期を問わずすべての教員の給与体系を一本化せよ。任期付教員に給与以外のメリット を付与する制度はあっても、本学のような非任期教員に対する懲罰的給与制度は他大学に例を見ない。
 B 「全員任期制」という無責任かつ不合理な制度を改め、選択的、限定的な任期制とするよう、あらためて要求する。