2293号

「再審査をしなければ研究費を執行させる状況にない」

──賃金闘争処分に関する管理本部の不当介入に断固として抗議する──

        2004年7月20日 東京都立大学・短期大学教職員組合中央執行委員会 

驚くべき事態が起きています。
 7月15日の都立大学部長会等の情報によれば、7月14日に大学管理本部は都立大学総長と事務局長を呼びつけ、13日の評議会での2003年賃金闘争に関する組合執行委員に対する処分決定のうち、A執行委員に対する「訓告処分」は人事部の示唆した「戒告処分」の軽減で「都民の理解を得られない」と決めつけ、再審査を強要しました。しかも、そうしなければ、「傾斜配分分の今年度研究費の執行を行える状況にない」と、筋も何も通らない脅しをかけてきたのです。

信じがたい法無視の大学自治への不当介入
 この強要を行った管理部長はいったい教育基本法、学校教育法、地方公務員法、教育公務員特例法などの規定を知らないのでしょうか。あるいは知った上で無視しているのでしょうか。いずれにせよ、公務員、しかも大学教育を管掌する部署の管理職公務員として完全に失格です。引用するまでもないのですが、教育公務員特例法は「第9条 学長、教員及び部局長は、学長及び教員にあってはあつては評議会、部局長にあってはあつては学長の審査の結果によるのでなければ、懲戒処分を受けることはない」と明記しています。したがって、評議会決定を覆そうとする管理本部の「再審査要求」はこれを公然と否定しているのです。
  もとより組合は今回の評議会による処分決定を承認するものではありません。処分の根拠とされた昨年の「大衆的要請行動」は一片の違法性もない平穏かつ正当な公務員組合としての行動です。したがって、先月に行われた前委員長に対する評議会の処分に関してもただちに撤回を求める人事委員会提訴を、法的に適正な手続きで行っています。しかしながら、今回の管理本部の評議会決定への横やりはいかなる点でも権限も根拠もない暴挙です。
  第一に管理部長は処分を発令する立場にも口を出す立場にもありません。完全な越権行為です。
  第二に管理部長は調査委員会の調査結果も評議会での討議も、さらに本人の陳述も聞いておらず判断できる資格はなく、明らかに予断による横車です。
  第三に評議会のなすべきことは、人事部の処分案を承認するのではなく、処分の可否、程度を予断、偏見無く決めることです。人事部の「戒告」という示唆は例示に過ぎないのですから「軽減」云々を言うことは基本的認識の誤りです。

許しがたい税金私物化と思い上がり
 さらに許し難いのは、再審査をしなければ「傾斜的配分研究費」の執行を差し止めることをほのめかし、評議会決定を覆そうとしていることです。いったい、研究費は管理部長の私財だとでも言うのでしょうか。
この脅しには明らかに税金の私物化の思想があります。また、管理部長には各大学の決定機関や設立本部の研究費配分検討委員会を超える権限があるという認識が吐露されています。そして何ら関係の無い、組合の賃金闘争と教員研究費を結びつけて大学と教員を思うままに支配しようという意志が現れています。
  組合は当初から、「傾斜配分」という方式が管理本部の恣意的な研究誘導に利用される懸念を指摘してきました。しかし今回の事態はこの方式が研究誘導どころか露骨な大学支配管理に使われることを暴露したもので、東京都大学管理本部が私たちの予想を超えて荒廃した思想に汚染されている実態を示してしまいました。

「都民に理解されない」のは誰の行為か
 昨年8月以来の管理本部の数々の暴挙は広く社会の批判に曝され、「円滑な移行」が保障されていないと設置審に判定されたばかりです。その事態を悪化させるとしか思えない今回の強要、脅しにたいして、私たちは管理本部の状況認識の能力を根本的に疑わざるを得ません。貴重な都民の税金を教員の処分の取引材料に使い、教員を支配することが「都民に理解される」でしょうか。私たちは都議会、国会、文科省、マスコミにたいして今回の事件を広く訴えていきます。広く公の問題になってから管理本部が、たんなる感想を述べただけだ、とか管理部長の個人的要望だとか誤魔化すのは許されないことです。
  組合は今回の管理本部の暴挙にたいして満腔の怒りをもって抗議します。管理本部はただちに管理部長の発言を正式に撤回し、陳謝するべきです。またそうでなくてさえ遅れている傾斜的配分研究費の決定と執行をただちに開始すべきです。
同時に各大学教授会、評議会が不当な圧力に屈することなく大学の自治の本旨にもとることなく行動することを要望するものです。