2293号

大学管理本部はいまこそ四大学との開かれた協議に誠実に応ぜよ

    ―設置構想の審査継続決定にあたって―

       2004年7月20日 東京都立大学・短期大学教職員組合中央執行委員会

 文部科学省は7月15日、首都大学東京の設置に関して、早期認可を見送り引き続き審査を継続することを発表しました。継続審査となった理由は、4月末に提出された申請書類と7月2日に提出された教員の就任承諾書等の追加書類との間に教員数等で変更が生じているため、構想実施が円滑に進められるか、さらに審査を継続する必要があるため、と都のことです。
  私たち教職員組合は文部科学省と大学設置・学校法人審議会に対し、この構想には様ざまな問題点があることを指摘し、設置認可にあたっては慎重な審査を行うとともに必要な修正等を指導することなどを求めてきました。今回の審査をめぐっては、規制緩和等の様ざまな圧力が文科省・設置審に加えられているとも伝えられていました。しかしそうした中で、慎重な判断を下した文科省・設置審に対し、私たちはまずとりあえず敬意を表します。審査の継続は、9月に予定されていた各研究科の入試延期をはじめ、様ざまな問題を生じさせるとはいえ、重大な問題点を多々孕む今回の申請について、このような判断が下されたことを、東京都の横暴に対する社会的批判の表われとして私たちは歓迎するものです。

とうてい「円滑な構想実施」ではない
  継続審査の最大の理由となった教員数の不一致は、4月末書類作成時に新大学への移籍が予定されていたうち、都立大学人文学部を中心に20数名の教員が就任承諾書の提出に応じなかったためです。しかし現大学在籍で、新大学に移籍する意思を表明していない教員は、経済学部近代経済学グループや法学部などを含め、さらに多数に上ります。また3月末に他大学等へ移籍するなどで現大学を去った教員は保健科学大学なども含め四大学すべてでて異例な数に上りましたが、その中にも新大学構想に問題を感じてそのような選択をした方々が少なくありません。また、就任承諾書を提出した教員の多数も決して現在の構想に積極的支持を与えているものではなく、人文学部教授会決議にもあるように、今後の推移次第では就任承諾書を撤回することも考えている教員は少なくありません。このような状況を見れば、現在の状況が「円滑な構想実施」とは、未だにほど遠いところにあることは、明らかです。

混乱の責任は管理本部、設立準備本部にある
  新大学への円滑な移行を妨げている責任は、いうまでもなく大学管理本部と学長予定者・理事長予定者ら新大学設立準備本部の責任者にあります。大学管理本部等は、都立大学評議会など現大学教職員が求める現大学との開かれた協議を一貫して拒否し続け、単に形式だけの経営準備室や教学準備会議で一方的な案の押しつけに終始し、さらに教授会の人事権を否定する学則や、教授会の教育課程編成権限を侵す「単位バンク」、英語教育の外部委託など、大学教育に関わる教員組織の責任遂行の上で重大な問題を孕む内容を設置構想に盛り込みました。また2005年度改組予定の新大学院の内容についても、現大学大学院の研究・教育が十分に継承できるものであるか否かについて、多くの教員が未だに懸念をもっています。さらに、教育と研究の安定的継続を不可能にする任期制・年俸制などの不当な雇用条件を、教員に対して押しつけようとしています。こうした大学管理本部等の強権的で不当な進め方こそが、今回の事態を招いたものです。今回の審査継続という事態が招いた大学院入試延期なども含め、その責任は重大です。

今こそ開かれた協議を行うべき
 教職員組合は審査の継続にあたって、以下のことを強く望むものです。
 第一に、大学管理本部と新大学設立準備本部は、今度こそ現大学との形式だけでない開かれた協議に誠実に応じ、構想にたいする必要な修正を加えることを要求します。とりわけ、雇用条件や教授会権限など重大な問題について、十分民主的な協議を行い、現大学教職員の道理ある主張に応えるべきです。
 第二に、文部科学省・大学設置学校法人審議会に対しては、円滑な移行を妨げている大学管理本部等の不当な姿勢について十分な指導を加え、現大学と新大学の学生・院生らの教育を十分に保障するという観点から必要な修正を要求するよう求めます。
 第三に、四大学教授会・評議会には、この事態を十分に受けとめ、円滑な移行のため必要な修正を、大学管理本部等に対して再度明確に示していくことを求めます。