2341号
  


【声明】
法人発足に当たり、新たな段階に入った運動と組合への結集を訴える

2005.4.1 東京都立大学・短期大学教職員組合 中央執行委員会

 本日、2005年4月1日公立大学法人首都大学東京が発足します。一昨年8月以来の石原都政による大学破壊、教育と民主主義への攻撃との闘いも ひとつの重大な節目を迎えることになりました。このときに際して、教職員組合中央執行委員会は4大学のすべての教職員に、新たな段階に入った 運動と組合への結集を強く呼びかけます。

 1年半の闘い ―― 失ったもの、得たもの
  この間に私たちは様々なものを失いました。まず、知事と大学管理本部の横暴、差別と偏見を振りまく教員抑圧方針によって、多数の有能な 研究者、教育者が大学から去ってゆきました。それによって我が国有数の研究教育機関として蓄積されてきた成果や経験が継承の危機にさらされ ています。また、これまでの大学の自治と学問の自由の基盤であった教授会の自律機能と権限が法人の定款と新学則で消し去られ、少なくとも文 言上は、知事によって送り込まれた少数の法人トップが強大な権限を振るう組織に変質させられました。
  しかしながら、苦しい闘いの過程で得たものもまたありました。ことに法人化を目前にして、全教員一律の任期制・年俸制押しつけが、組合の呼 びかけに応えた多数の教員の抵抗でくじかれたこと、また、当局が企図した教員組織の上意下達組織への変質策も各所で破綻し、実質的に教員組織に よる大学運営を再建する動きが始まっていることは重要です。そして、就業規則、労使協定をめぐる過半数代表の選出、当局との交渉の過程で、これ までになく広範に教員と職員の情報交換、討議の場が形成されつつあります。さらに、「署名の会」や「開かれた大学改革を求める会」などに象徴さ れる運動の結果として4大学の教員の様々な交流、協力の基礎が作られたことは今後の大学再建の運動にとって重要な土台として残っています。

 法人化――残された問題、今後の課題
  こうして、法人は発足するものの、私たち教職員にとっても、大学支配をたくらむ勢力にとっても未解決、中途半端な課題山積の出発となりま した。私たちは直ちに、一年半にわたる大学破壊の傷跡の修復と再建に立ち上がらねばなりません。
  第一に、未完かつ容認しがたい就業規則の民主的な修正の運動です。その主な獲得目標は、大学教員の特性にふさわしい、学校教育法や教特法 の趣旨を受け継ぐ「教員就業規則」の付加、未規定で労働基準法違反状態にある「昇給規則」を作成、記載させること、「集会条例」「治安維持法」 まがいの非民主的条項の撤廃などです。とくに、旧制度の「昇給機会の明示」は必ず成し遂げなければならない課題です。
  次に、締結し残した労使協定を、大学という職場の実態に即して検討することです。過労や不払い労働を生まずに教育現場を円滑に支えるための 歯止めを持った「時間外・休日労働に関する協定(36協定)」、「休憩時間の一斉付与の除外に関する協定」、そして教員の自由で創造的な研究、 教育活動を阻害しない勤務時間制度を、労使対等かつ教員と職員の相互理解のもとで十分議論しなければなりません。
  できたての法人は、知事や送り込まれた学外者のかけ声とは裏腹に、公務員時代の硬直した官僚主義が色濃く残っています。呆れるほど数多い 「規則」の中の「都条例」の残滓の無用で煩雑、形式的な部分を払拭し、合理的で働きやすい規則に修正するには時間がかかるでしょうが、ここに こそ法人化の唯一のメリットがあるのですからやり遂げなくてはなりません。これが第三の課題です。
  これらの「宿題」を解決する過程で、私たちはまた、今後の大学の民主的再建を行う運動を開始しなければなりません。
 
  大学再建に向けての運動を構築しよう
  法人の下での大学、という職場を働きやすくするためには、乱暴に持ち込まれた「新旧制度」という差別的かつ不安定な雇用制度の撤廃は不可欠 です。同じ仕事、同じ職責を果たしながら、一方は「雇い止め」の不安を抱え、他方は低賃金に甘んじなければならない不満を持っているのでは、 大学の将来はありません。来年までに、外からの押しつけを排して、私たち教職員自身で「任期制」のメリット、デメリットを検討しましょう。導入 の是非、制度のあるべき姿を追求し、不幸にも始まってしまった二重賃金制をそこに接続してゆく方途を工夫しましょう。教員相互の不信を煽り、 分断を狙う策謀を許さず、オープンで公正な教員評価制度と、平等で将来設計が可能な給与制度の両方を確立してこそ優秀な教員の確保と円滑な世代 交代が可能となるのです。
  また、学生の期待、都民の負託に応えられる大学づくりには、教員と職員が互いの役割を理解し尊重し合う職場づくりをする必要があります。その ための課題はたくさんあります。
今後、都からの派遣職員が減じ、固有職員の比率が増大することが確実である中で、その有期雇用が大学運営の重大な桎梏になるでしょう。永続的に 勤務し経験を積んだ固有職員の確保は教員の要求でもあります。常に「雇い止め」の恐れがある彼らは職場の中でもっとも弱い立場にあることも考 えるべきです。大学が差別、不平等の横行する場になってはなりません。少なくとも中核的な職員を「期限の定めのない雇用」とする運動を開始し ましょう。また、長期的には教員と職員の定年の差をなくしてゆくことも必要です。大学事務手続を合理化する工夫し、勤務時間を尊重する風潮を 育て、教員と職員が互いの特性を理解し合い、協力する労働環境を作りましょう。

 何よりも大学の自治と民主主義の回復を
定款や学則などの中で奪われた大学の自治と民主主義を回復し、教職員、学生・院生ら大学の全構成員に開かれた、真に都民の期待に応えられる大学 そのものを再建していくことは、何よりも重要な課題です。
定款・学則などの規定にかかわらず、人事やカリキュラム、研究費配分などの重要事項について教授会における民主主義的な討議に基づいてその実質 を決めていくこと、学生自治会や院生会などがこれまで持っていた大学との間の交渉権を引き継がせ、学生・院生らに開かれた大学運営を継承させる ことなどは、法人のもとの5つの新大学・現大学にとって決定的に重要です。そのためには、私たち教職員をはじめ、大学構成員の一人ひとりが、 大学の自治と民主主義について、一層自覚的になることが必要です。そして最終的には、定款や学則など法人と大学の仕組みそのものをも、大学にふ さわしいものに変えていくことです。
大学の自治と民主主義なしに、真に都民に応える教育・研究は生まれてきません。知事らの押しつけた薄っぺらな新大学理念ではなく、「都立の大学 を考える都民の会」などとも力を合わせ、真に都民の期待に応える大学づくりを私たち自身の手で、進めていこうではありませんか。

 この4月に健康被害をうまないために
大学は新入生を迎え入れ、1年でもっとも忙しい時期となります。今年は、さらに新大学の発足とそれに伴う組織改編、法人化と繁忙を極める要因を 多く抱えた出発となります。しかし、当局の「既存の大学とは協議を行わない」とした弊害で、十分な準備がなされているとは、到底言えない状況で す。集団で議論し、調整をはかる教員組織も解体され、それにかわる組織が機能するかも疑がわしい中で、問題解決のために、膨大な仕事に追いまく られる職員がでることも予想されます。1年前に法人化された国立大学では、一月に190時間という超過勤務が生じた例も報告されています。
組合は、この繁忙期を一人の健康被害者も出さないことを目標に、未整備の就業規則の交渉と平行して、労働条件の改善、整備を当局に要求していき ます。職場で起った些細な問題でも、組合に相談をしてください。みんなの力で、健康被害を防止しましょう。

 過半数組合へ
これら多くの課題を成し遂げてゆく運動の中核を担うのが教職員組合です。
法人化に伴い、組合は「職員団体」から労働組合法に基づく「労働組合」へと脱皮します。それは単に「争議権をもつ」だけでなく、勤務条件法定主 義の公務員の労使関係から、使用者と対等に交渉し、自らの労働条件を創造しうる組織に変わることを意味します。しかしながら、その力は当然、ど れだけ多数の教職員が結集し、団結するかにかかっています。この間の闘い、運動においても組合は様々な局面で教職員の多数の意思を代表し、その 先頭に立ってきたと自負していますが、大学そのものと職場の新たな段階に際して、その力量をさらに飛躍させなければならないと自覚しています。 そして、ぜひとも過半数の教職員が参加した組合へと成長しなければ、と痛感しています。
当面する就業規則、労使協定をめぐる運動、そして、攻撃を跳ね返して真に民主的な大学を再建するために、将来の生活と働く環境を守るために、 すべての教職員が労働組合「東京都立大学・短期大学教職員組合」に参加することを心から訴えるものです。


働契約時の制度選択、「発令」について
   〈給与制度の変更、新たな選択機会を確認〉
  本日のよりの法人化にあたっての教員の給与制度等について、大学管理本部は昨日、組合に対し、これまでの4大学教員については労働契約にあ たって、いわゆる「新制度」「旧制度」間の変更を認めることを回答してきました。管理本部の回答は以下の通りです。

@ 今後各教員に送られる、労働契約書依頼文の中で、新旧制度選択の変更を申し出たい人があれば、受付する旨記載する。
A 労働契約書は年始に新制度を選択した人には新制度の労働契約書を、旧制度を選択した人は旧制度の労働契約書を、未提出の人には旧制度の労 働契約書を送付する。変更を申し出た人にはすぐに変更後の労働契約書を送付できる体制をとる。
B 変更の申し出は、平成17年度においては契約書締結時の年度当初のみとする。
C 制度変更の事務処理が完了するのに相当な時間がかかるため、給与支給は、当面選択変更前の支給額により支給するものとする。
  昨年末の制度選択に関する意向調査の際、管理本部は、1月に提出を求めているのはあくまで給与支払い準備のための意向調査であり、最終的な 契約に代わるものではないこと、最終的な選択の確認は労働契約書締結時に行うことを表明していました。したがって1月時点ではあくまで暫定的な 判断として回答した人や、未決定のことが多く決断できないので回答を保留にした人も決して少なくありませんでした。
  組合は、この点について2月の交渉でも再度確認し、そのことを手続も含めて全教員に周知するよう求めていました。しかし、4月1日を迎えた 現時点でも、未だ労働契約書さえ送られてきておらず、最終的な選択の機会がはたしてあるのかとの疑問と不安がこれまでに大きく広がっていました 。
  労働契約書締結時に変更を含む最終選択(ただし本年度末には「新制度」から「旧制度」への変更を含めて変更が可能、「旧制度」から「新制度」 への変更は今後毎年度末に可能)を受け付けることを認めたこの回答は当然です。それとともに、本来4月1日までに交わされるはずの労働契約につ いて、未だに契約書すら送られてこず、このような重要な事柄についてさえこれまで伝えられなかったことは、極めて遺憾です。

 〈違法な「発令通知」の撤回を求める〉
  労働契約も交わされず、任期付き雇用への変更についての本人同意もないままに、「准教授」「准教授B」「研究員」などの「発令」が一部で各 教員に対して行われています。大学管理本部は、これまでに各大学に対して、法人に移行する全教員について職層・配属先等を示した一覧を送り、 これを持って発令にかえるとしています。一部の大学・学部ではすでにこの一覧が各教員に送られていますが、これを見ると助教授・講師・助手に ついては誰が「新・旧」どちらの制度を選んだかが一目瞭然であるばかりか、一部には誤りさえあり、ひんしゅくを買っています。そもそも、先に 指摘したように、1月の回答は、本人の最終的な選択ではないのですから、そのことの確認もないままに、このような「発令」が行われ、しかも、 本人の最終選択の結果ではないことや明白な誤りまで含めて、一覧としてみんなに配られることは常識を越えたことです。
  さらに重大なことは、「准教授」「准教授B」「研究員」は法人規則に明記されているように任期付きの「新制度」のみの職層ですが、労働契約も 交わされず、本人同意が得られていない今日現在、任期付きの「発令」を行うことは、労基法に明らかに違反する行為です。設置者の法人への変更に したがって、所属の変更になる教員がいる以上、配属先を本日、各教員に発令することは当然必要です。しかし、合法的な発令は、「准教授」「准教 授B」「研究員」ではなく「助教授」(「講師」)「助手」という学校教育法上の職名でしかできないはずです。
  組合は、この一覧を直ちに撤回し、合法的な発令を行うよう強く求めます。また、一覧を送って発令にかえるなどの粗雑な方法ではなく、常識的な 方法をとることを求めます。

 〈「旧制度」教員の昇給を直ちに行うことを求める〉
  都条例とこれまでの慣行に基づけば、この4月に昇給が予定されたはずの教員が多数存在します。すでに指摘したように、就業規則等のなかでは 「旧制度」について「昇給できない」という規定は存在しません。当然、4月に昇給させるべきです。組合は、こうした4月昇給予定者について、 直ちに昇給を実施することを、強く求めます。