2003組発3号    
                                  2003.8.11
 東京都人事委員会
  委員長 内田 公三 殿

               東京都立大学・短期大学教職員組合
                中央執行委員長 山 下 正 廣


     2003年度東京都人事委員会勧告についての要請書
    
 日頃から都職員の賃金・労働条件の改善に努力されている貴職に敬意を表します。
 さて、人事院は8月11日、内閣と国会にたいして、国家公務員の給与について、1.07%(4,054円)引き下げを今年の4月にさかのぼって実施するよう勧告しました。一時金についても、民間給与調査の結果(4.38月)に基づくとして、0.25月引き下げ、年間4.4月とする5年連続の大幅な削減を求めるものとなっています。さらに、住居手当や扶養手当についても「見直し」を求め、賃金水準では昨年比で、年収ベース約16万円減、5年連続の年収減で、史上最も引き下げ率の大きな勧告とする内容であり、現行の勧告制度の矛盾や問題点を放置し、公務員労働者の生活実態を無視した、極めて問題がある内容といわざるを得ません。
 またこの勧告では、教育職俸給表の検討を課題としたほか、公務員制度改革に関する報告が行われています。
 一方、都においては、人事委員会勧告の扱いとは別に、今年1月から、来年3月まで、3度目となる2%の「給与削減」を実施をしており、「労使合意」とはいえ、すでに実質的な給与削減を行っています。この結果、都職員の場合、大都市東京で生計費負担が日本で一番大きいにもかかわらず、国家公務員や他の地方公務員と比較して、さらに厳しい賃金水準となっており、都職員は従来にも増して厳しい生活条件におかれています。
 こうした中で、私たちは、都人事委員会が、職員の厳しい生活条件を直視し、職員の生活防衛と維持・改善のため責任を負う立場にたつことを強く求めるものです。
 今年度の勧告をめぐる状況も、今回の人事院勧告や民間の春闘を取り巻く状況から見て、厳しい状況にあることを否定するものではありません。しかし、私たちにとって、賃金水準の切り下げだけを押しつけられ、事実上、賃金・労働条件の改善の機会を奪うような事態は、何としても認めるわけにはいきません。是非とも、全職員への給与改善の具体策を打ち出すことを求めるものです。
 また、一時金について、現行の問題ある比較方式を改善せず、人事院に機械的に追随し、5年連続して見直しを行うことは到底理解できないことを強く申し入れておきます。
 さらに、都立の大学教員の賃金については、私立大学との格差が大きく存在するのみならず、国立大学と比較しても、@大学院手当が低額であることA91年度から初任給が大学院博士修了では1号下位となったこと等により格差が拡大しつつあります。この格差は、東京の住宅事情等と相俟って、人材確保の面からも憂慮すべき事態となっています。
 以上の点を踏まえ、貴職におかれましては、国の干渉や人事院に追随することなく、都職員の厳しい生活実態も考慮して、下記事項について十分配慮し、賃金・労働条件の改善になる勧告を行うよう強く要請します。
               記
1.勧告作業にあたっては、公民比較方式の抜本的改善を行い、大都市東京 の実態を踏まえ、率・額について国の勧告を上回る内容とすること。
 配分にあたっては、都職員の生活実態等を十分考慮し、給料表も含む改善 を行うとともに、全職員へ給与改善が行われるものとすること。
2.都においては、人事委員会勧告の扱いとは別に、今年1月から、来年3 月まで、「労使合意」とはいえ、3度目となる2%の「給与削減」を実施 しており、勧告給料表より低い給与水準となっています。公民比較を行う 場合は、調査時と同じ月に実際に支払われている給与と比較するなど、都 における特殊な事情を十分考慮すること。
3.人事院勧告では、給料表の引き下げ、住居手当・扶養手当の「見直し」、 通勤手当の6月定期分支給などを打ち出しているが、画一的に追随せず、 都の制度やこれまでの経緯を十分踏まえた対応を行うこと。また、実施時 期については、「不利益不遡及の原則」を踏まえた対応を行うこと。
4.大都市東京における調整手当制度については、年金・退職手当などで、 職員に極めて不利益な実態が続いており、「本給繰入れ」など抜本的な改 善をはかること。
6.特別給については、都の実態に即して、公民比較方式などを改善し、現 行支給水準を確保するため最大限努力すること。
7.諸手当については、都労連要求に基づき、額の引き上げ、支給基準や方 法の改善を行うこと。
8.職員の住宅対策については、東京圏における住宅実態を踏まえ、持ち家 支援、職員住宅の充実など制度の抜本的改善について提言を行うこと。住 居手当については、都の実態・経緯を踏まえ、国の動向に機械的に追随し ないこと。
9.年間総労働時間の短縮をはかること。このため超過勤務の削減、交替制 勤務者の労働条件の改善に向けた人員増など、具体的な対策を提言するこ と。また、休暇制度全般にわたって改善するよう勧告すること。
10.福祉制度・福利厚生制度の充実、男女平等の推進、セクシャル・ハラス メント防止対策に向けて、使用者責任を果たすよう提言を行うこと。職場 と家庭の両立支援策の拡充に向けて、具体的な提言も行うこと。
11.都職員の人事・給与制度については、労使協議事項でもあり、労使合意 が前提である以上、都労連の主張も十分踏まえるべきであり、制度改正等 について、一方的な勧告は行わないこと。
12.「公務員制度改革」については、公務員制度の経緯やあり方を踏まえる とともに、職員や労働組合の参画が不可欠となっており、国の動向に一方的 に追随せず、都労連の意見も十分反映した対応を行うこと。
13.大学教員の賃金については、私立大学との格差及び国立大学との格差(@ 大学院手当の低額による格差A大学院博士修了者の初任給1号下位格付に よる格差)を是正する改善を行うこと。また、地方独立行政法人法や地方 自治法の改正などに伴う賃金・勤務条件の扱いについては、労使間で十分 協議すべき事項であり、一方的な勧告は行わないこと。
14.勧告日については、適切な時期に行うこと。
15.現在、労使協議中の事項については、労使の自主的協議に委ねること。 また、都労連の従来からの諸要求事項を十分尊重した勧告内容とするとと もに、勧告前の協議に応じること。