2338号

 
【声明】
管理強化・大学の特性無視の就業規則を許さないために、全教職員が過半数代表団を支え、交渉を成功させよう
「就業規則」の意味を再考し、働きやすい職場と都民のための大学づくりを可能にする改善を 要求しよう
                                                    2005.3.22 東京都立大学・短期大学教職員組合中央執行委員会

 法人発足は10日後に迫っています。都当局は明日にも「就業規則」案を6事業場の労働者代表に提示しようとして います。その内容は、私たちがこれまで再三指摘してきたように、これまでの勤務労働条件を改悪し、管理強化のみを めざして公立の大学としての特性や責務を無視したものです。にもかかわらず、時間の切迫を口実に、当局が労働者 代表(団)と十分な協議もなしに押し切ることも予想されます。組合中央執行委員会は、当局の逃げ切りを許さず、 あくまでも就業規則本来の意味に沿い、都民のための大学づくりを進めるための改善に向けた奮闘を全教職員、とりわけ 各事業場労働者代表団に要請するものです。


1.就業規則を評価する視点
労働基準法の精神に則っているか

  まず考えておくべきことは、労働基準法がなぜ使用者に「就業規則」の作成を義務づけ、しかも、作成に当たっては労働者代表の意見を聞き、その意見書を添えて労働基準監督署に届け出ることを命じているのか、という点です。
同法は第2条で、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」としています。ところが、雇うものと雇われるものが自然に対等にはなり得ず、放置すれば本来的に強い立場にある使用者が解雇や賃下げを武器として労働者に過酷な労働条件を押しつけることになってしまいます。そこで、法は使用者に対して義務として労働者保護を明文化させ、それを職場のルールとして確定する証として「就業規則」の作成と届け出をさせるのです。このことは、労基法が様々な「最低限の労働条件」を記した後に、第89条で就業規則に記載しなければならない事項としてあげている項目が、すべて労働者を恣意的かつ不利益に扱わないための「使用者の義務」であることを見ても明らかです。つまり、就業規則は単なる職場の規則集ではなく、ましてや、その職場の「労働者の義務事項集」ではないのです。したがって、「就業規則」を評価する視点の第1は、その就業規則が労働基準法の精神に則ったものであるのか否か、です。

教育公務員特例法の精神に則っているか
 また、公務員時代は就業規則の代りに地方公務員法や各種条例が私たちの人事や「服務(公務員特有の表現です)」を規定していました。それでもなお、教員である公務員に対しては、時々の為政者が恣意的な「公的利益」を盾にして教育や研究を歪めないように、主権者である国民や住民に直接責任を負った勤務がなされるように、教育公務員特例法が優越的規範として存在しています。その関係は「懲戒」や「異動」に関する同法の規定を見れば誰の目にも明らかでしょう。
法人化されようとされまいと、私たちは都民の税金で運営される大学の教職員であることに変わりはありません。今までは都民に責任を負っていたが4月からは理事長のために教育研究を行え、とはさすがの知事でも言わないでしょう。また教育公務員特例法が悪法だったから国公立大学が法人化されたのでないことも明らかです。大学の経営形態が法人組織になっても純然たる私立大学と違って、納税者である都民と大学との関係は法人化によっていささかの変化もないのです。したがって、私たち公立大学の教職員、とりわけ教員の(「服務」に代わる)勤務規範は相変わらず教育公務員特例法であるべきです。「公務員」ではないという形式的な理由で適用除外になるにしても、新たな勤務規範であるべき「就業規則」は、少なくとも教員に関しては教特法の精神に則ったものである必要があるのです。これは、教員に有利か不利か、という問題ではなく、公的資金で運営される教育機関の職員に課せられた勤務規範なのです。具体的には、教特法が重視している、教員の採用、昇任、懲戒、評価の手続きと主体がどう規定されているのか、この点が第2の視点です。

地独法の趣旨に則っているか
 私たちは国立大学法人法や地方独立行政法人法には、その成立過程で広範な反対運動がなされたことに示されるように様々な問題点があると考えていますが、少なくとも、この法人化の根拠法規には、職員の身分、雇用に関して『・・・職員である者は、別に辞令を発せられない限り、当該移行型一般地方独立行政法人の成立の日において、当該移行型一般地方独立行政法人の職員となるものとする』(地方独立行政法人法59条2項)と、職員の同意なしに自動的に継承されると規定されているのです。当局は、この規定は「雇用、身分は継承するが勤務条件が継承されると保障していない」としていますがそれは明らかな欺瞞です。現に、参院附帯決議では『地方独立行政法人への移行等に際しては、雇用問題、労働条件について配慮し、関係職員団体又は関係労働組合と十分な意思疎通が行われるよう、必要な助言等を行うこと』と、明らかに労働条件について職員が不利な扱いを受けることがないように釘を刺しているのです。およそ「身分は引き継がれるが労働条件は変わる」などと言ったときの「身分」とは一体何でしょう。法律によって本人の同意なしに継承される「身分」が労働条件、勤務条件を含むのは当然のことです。少なくとも、労働者の側からその継続を要求するのはあらゆる労働法規の観点から見て当然の権利なのです。したがって、「就業規則」を評価する第3の視点は、地独法およびその成立過程での国会論議、決議の趣旨に則っているか否か、なのです。

2.容認しがたい問題点
  私たちはすでに「手から手へ」第2335号で現在提案されている就業規則案ならびにその下位規則である給与規則等について多くの問題点を指摘しました。また、組合弁護団からも、@「旧制度教員給与規則」が重大な不利益変更であること、A「文書配布等」に関わる条項が人権侵害に当たること、B「懲戒手続規定の不備」、すなわち懲戒処分の発動に関しての適正手続が欠けていること、の3点にわたる意見書が出ています(「手から手へ」第2337号参照)。
全教職員と労働者代表団の皆さんが、ぜひこれらの指摘、意見をもとにして就業規則案等を熟読されるようお願いいたします。いかに職責を果たし、業績を上げても昇給も昇任もない、という、明らかに社会的常識に反する「旧制度教員給与」は論外にしても、その他にも要約以下のような問題点があることがすぐに判明するはずです。
・ なぜか無理やり「教職員」と一括してしまうために、教員と職員の勤務形態、職務内容の違いが無視され、教育・研究活動を強く阻害する条項が多数存在すること
・ 教職員に不利な処置処分に対抗する権利保障、手続規定がまったく存在しないこと
・ 基本的に教職員の「義務」の羅列、「規制」の列挙に終始しており、就業規則を設ける意義である「使用者の義務」が記載されていないこと
・ 具体性が必要な箇所でも文言が曖昧で、いくらでも恣意的な解釈が可能となっていること
  組合は度重なる交渉の中でこれらの是正、改善を要求してきましたが、現時点では当局はそれに応じていません。したがって、このままの内容であるならば組合は「容認しがたい提案」と判断しています。
  膨大な内容に辟易して、十分に目を通さずに「組合中執は過大な要求をしている。4月が迫っているのだからまとめるようにしないといけない」と考えておられる教職員も、果たして、この就業規則でまともな職場環境が作れるのだろうか、と思いを巡らせていただきたいのです。

3.容認できない就業規則の押しつけにどう対抗するのか
 明白に当局の責任ですが、タイムリミットは迫っています。当局は労働者代表団に「協議」と称して容認を求めてくるでしょう。もともと、就業規則は使用者が作るもので、労働者側には「意見」を述べる権限しかありません。しかしながら、国立大学法人の例を見ても労働者側が「まったく容認できない」という意見書を出した例はなく、そうなった場合に当局は困惑し、提出された労基署は驚愕するはずです。就業規則策定の根本理念に反するものだからです。
組合は労働者過半数代表(団)に対して以下のように対抗することを要請します。また、すべての教職員がそれを支持し、応援してくださるようお願いいたします。
(1) 当局に徹底的に疑問、質問、要求を出しましょう。1回の「説明」で済ませることなど論外です。
(2) 労働基準監督署、厚生労働省や東京都産業労働局、総務省等の関係監督官庁に働きかけ、訴えましょう。これまでの組合の要請行動などでも「新旧制度」給与などは誰もが首をかしげます。
(3) 具体的な改善がなされないなら、当局の欲する、教員の「裁量労働制協定」や「36協定(時間外労働・休日労働に関する協定、この協定なしに使用者が時間外・休日勤務を命じることは違法となる)」への調印拒否を通告すべきです。これらは、就業規則と違って、「双方の合意」がなければ発効しません。労使協定交渉は弱い立場の労働者の強い武器になるのです。

 緊迫した状況ですが、組合中央執行委員会は、組合の権利である当局との団体交渉を通じ、また全教職員への宣伝活動、情報伝達を担うことで、過半数代表団の取り組みを支え、またその先頭に立って活動する決意です。