2002組発第10号
2003.2.17
東京都立大学総長
荻 上 紘 一 殿
東京都立大学・短期大学教職員組合 中央執行委員長 大 串 隆 吉
2002年度処分問題に関する申し入れ
1 都当局、308名を処分し、大学にも教員の処分要請
都当局は2月3日、2002年度に行われた賃金確定闘争などを理由として、都労連と各組合の役員等、308名に対して、停職18日を最高とする不当処分を強行しました。
私達の組合に関しては、前都労連執行委員であった青木財政部長が停職4日、現在の都労連執行委員である小林書記長が停職3日、後藤中央執行委員、田口中央執行委員、三浦中央執行委員がそれぞれ停職1日の処分が強行され、さらに、教員の執行委員である、大串委員長、源川副委員長、鷲見執行委員に対する処分を実施するようにという要請(「知事部局における処分程度」として、「東京都立大学・短期大学教職員組合 中央執行委員長 停職3日」「同 中央執行副委員長 停職3日」「同 中央執行委員 停職1日」という資料付き)が、都当局から大学管理本部を通して、大学事務当局に来ています。また、科学技術大学、都立短期大学に対しても、同様の処分実施要請が来ています。
2 2002年度賃金確定闘争での行動は、「四%給与削減に人事委員会勧告のマイナス上積み反対」、「給与削減措置の延長反対」、福祉関連要求の実現などを求める正当な行為で処分は不当
都当局は組合役員に対する処分理由として、11月15日の29分職場集会と都庁における座り込み行動(1回)に対する指導責任をあげています。
都労連は2002年度賃金確定闘争において、「4%給与削減に人事委員会勧告のマイナス上積み反対」、「給与削減措置の延長反対」、「一時金の4年連続削減反対」、「人事給与制度改悪反対」、「休暇制度改善」、「福祉関連要求の実現」などの要求を掲げ、都当局と交渉してきました。これに対して、都当局は都労連の要求に応えないばかりか、2度にわたる労使合意を無視して、「4%給与削減に人事委員会勧告のマイナス上積み」、「給与削減措置の延長」、「一時金の4年連続削減」、「人事給与制度の見直し」などの改悪攻撃をかけてきました。
都労連と各組合は、当局との交渉とともに所属長要請、都議会議員要請、都庁早朝宣伝行動、都民宣伝、決起集会、都庁座り込みなどの行動を行ってきました。これらの行動の結果、@現在実施中の4%の給与削減措置については、12月で終了、1月以降は、平均1.64%引き下げた新たな勧告給料表に基づき、2%の給与削減措置を平成16年3月まで実施、給料表を4月に遡及させず、「減額調整措置」は行わない、A業務職給料表は、従来どおりの考え方で実施、B調整額は給与改定率に合わせた額の引き下げ、勧告関連手当は、勧告及び従来の考え方で実施、C一時金は、勧告通り、0.05月引き下げ、D人事考課制度については、検討の場(「人事考課制度検討会」)を設置し、協議する、E人事給与制度の見直しについては、任用・級格付は、都側の当初提案を修正して、資格基準などの見直しと経過措置の導入、普通昇給は実施時期を1年もしくは2年延期、F子どもの看護休暇制度新設の実現と妊娠障害休暇の改善、G調整手当と特地・へき地手当の併給調整停止の解除については、平成15年度の早い時期に結論が得られるよう引き続き協議、H特別昇給及び職務段階別加算制度の見直しなど人事制度の「見直し提案」は「遅くとも平成15年度の給与改定交渉期に結論が得られるよう引き続き協議」という到達点を獲得しました。
到達点は、最大の課題であった「給与削減措置」が延長され、3度にわたる都当局の「労使合意不履行」が行われた点や、「人事考課制度」の労使協議を事実上引き出した一方で、「人事給与制度の見直し」に踏み込まざるを得ないなど、不満や問題の残る内容も含まれるものでした。一方、「給与削減措置」を圧縮し、ダブル削減を阻止したことや、「減額調整措置」の見送り、子どもの看護休暇制度の実現など、改悪の歯止めや要求の前進もありました。
都労連と各組合は、都当局の「労使合意」無視に対して交渉の席では激しく抗議しましたが、問題解決に向けては、ねばり強く、かつ誠実に交渉を重ねてきました。
都当局の2度目の「労使合意不履行」の結果として、8月から「4%給与削減の時限措置」が実施されている状況のもとで、3度目の「労使合意不履行」となりかねない前述のような、都当局のさらなる賃金条件改悪攻撃に対して、労使合意の履行を求めつつ、反対の立場を明らかにし、その撤回を求めて行動することは、労働組合として極めて当然であり、正当な行為です。糾弾されるべきは、労使合意不履行を重ねた都当局です。
処分理由としてあげられている11月15日の29分職場集会は、「労働基本権制約の代償措置である人事委員会勧告に基づいて、民間給与との格差是正を目的に決定され実施されてきた給与」を削減する措置が、労使合意のとおり終了されず、継続のおそれが現実にあるときに、労使合意遵守を求めて一定の行動を行うことは、労働組合として極めて正当な行為です。その行動も、29分職場集会という、短時間かつピケを張ってのストライキとは異なる任意参加の職場集会であり、業務への支障は皆無と言ってよく、その目的や態様からいって、なんら処分されるいわれはないものです。また、都庁舎での座り込み行動は、「給与削減措置終了」の労使合意の履行を求め(01年度3月)、あるいは「再延長」などの理不尽な攻撃に対して(02年度)、労使合意の履行に責任を持つ立場にある総務局人事部・勤労部前等で、労使合意の履行等を求めたものです。座り込みは、極めて静穏に行われ、業務や都民生活に対して、なんら支障を与えませんでした。この座込み行動を理由として、都当局は、処分の「加重」を行っていますが、その目的や態様からいって、これもまた、なんら処分されるいわれはないものです。
さらに、昨年11月に出されたILO結社の自由委員会の中間報告では、「日本の公務員制度そのものが87号条約(結社の自由)、98号条約(団結権・団体交渉権)に違反しており、日本政府に対して法律改正を求める」、公務員の争議行為に対して「この権利は労働者および労働者組織の基本的権利であること。(中略)労働者および組合幹部は正当なストライキを実施したことにより処罰されるべきでない。(中略)したがって、委員会は(日本)政府に対し、これらの原則に合致するよう法律を改正するよう要請する」との勧告を出しています。今回の不当処分は、世界の常識からも逸脱したものです。日本政府及び東京都は、国際的な労働基準に合致するよう法律、条例、規則を直ちに改めるべきです。
都当局は、処分の根拠として地方公務員法第37条第1項違反をあげています。組合は従来から、争議行為を禁止した地方公務員法第37条は、憲法違反と主張してきました。都立大学当局も、1973年の第420回評議会で、「最高裁44.4.2都教組事件判決に示された法理(組合注)を尊重する」との決定を行い、山住前総長もそれを再確認しています。(組合注・地方公務員法第37条をいっさいの争議行為を禁止すると解するのは、憲法違反であり、争議行為禁止により保護しようとする法益と労働基本権保障により実現しようとする法益との比較考量と、争議行為の態様によって判断すべきとした判決理由。)
ところが、荻上総長となった2000年度賃金確定闘争に対する処分問題では、当時の五十子副委員長に対して、「最高裁44.4.2都教組事件判決に示された法理を尊重する」とした従来の評議会決定をくつがえし、地方公務員法第37条第1項違反を理由として、停職1日の処分を行いました。ILOの勧告は、地方公務員法第37条が87号条約(結社の自由)及び98号条約(団結権・団体交渉権)に違反であると勧告しています。2000年3月の評議会決定は、極めて遺憾と言わざるを得ません。
3 組合に対する従来の処分との均衡を著しく失する処分
今回の処分と大学への教員に対する処分要請は、従来に比べて非常に重い内容となっています。それは今回と同様の行動に対しては、従前、都労連執行委員である組合役員に対してだけに行われてきた(教員の場合も都労連執行委員である組合役員に対してだけに処分要請が行われた)処分が、すべての中央執行委員に及んだことです。
都労連闘争に対する私たちの組合に対する処分は、92年度以前はせいぜい委員長に対する口頭注意どまり、93年度は都労連執行委員が戒告処分・単組三役(委員長、副委員長、書記長)が訓告・口頭注意、94年度以降は都労連執行委員だけが処分対象とされてきました。単組執行部の機関責任は不問に付し、都労連執行委員の機関責任だけ問うことの理由として、都当局は「組合の規模が小さいから」と説明していたということです。それが、今回は、組合の規模は定数削減等で以前よりは小さくなっているのに、一挙に単組執行部全員にまで処分対象を拡大しています。
昨年、労使協議の末にとり決めた、いわゆる「ながら条例」問題では、私たちの組合は、同じ知事部局の都庁職の支部と同規模の組合との当局提案を受けて、妥結した経緯があります。今回、処分問題だけは、都庁職本部と同様の取り扱いを行うことは、当局の処分権の濫用と言わざるをえません。
従来の処分との均衡を著しく失する処分であり、そういう点でも不当極まりないものです。
4 評議会は大串委員長、源川副委員長、鷲見執行委員に対して不処分の決定を
組合は、都当局による今回の処分に厳重に抗議し、その撤回を要求しています。同時に大学教員の処分は評議会の審査を経て行うという、教育公務員特例法の規定によって、これから評議会に処分問題が発議されようとしている大串委員長、源川副委員長、鷲見執行委員に対しての不処分を要求するものです。
私たちの組合はこれまでも組合活動を理由とする処分に対して、不当処分反対の立場から、知事によってストレートに処分が発令される職員系役員の処分撤回と、教育公務員特例法の規定によって大学管理機関の審査を経て処分を行う教員系役員の不処分を要求し、運動を行ってきました。その結果、組合にとって不満は残りますが、教員系役員の処分に関しては、2000年度を除いて、いずれも都の判断と異なる判断を得ています。
また、評議会での審査にあたっては、教員の処分という人事上の重要な事項、特に争議行為のように処分の妥当性が争われる事柄の性質からいって、当該教員の所属する教授会での審議を経ることが必要であると考えます。
よって、組合は貴職に下記の申し入れを行うものです。
記
1 大串委員長、源川副委員長、鷲見執行委員に対して処分を行わないこと。
2 処分問題について、所属教授会の審議を経ること。
3 処分の決定の際しては、2000年度のように総長に一任することなく、評議会で決定すること。