東京都大学管理本部の情報操作に対する抗議声明

東京都大学管理本部長 山口一久殿

 2003年11月18日、東京都大学管理本部ホームページに「新大学の開学に向けて」と題するページが追加された(http://www.daigaku.metro.tokyo.jp/shindaigaku.htm)。このページの「『新しい大学の構想』に至る検討の経緯とその後の経過」の記述は、事実経過を正確に記さず、都立大学人文学部の主張を孤立したものと描き出そうとするものであり、行政の中立性を大きく損なうものとなっている。このことに我々は強く抗議し、不正確な表現をただちに改め、訂正文を掲載することを要求する。
 まず、同ページ内の「新構想発表までの検討の経緯等」に問題がある。ここでは、2003年7月までの検討体制が「都立大学教員を中心」とするものであったとし、さらにそこで検討されていた改革案が「現都立大人文学部の現状追認」であったと書かれている。その上で、こうした改革案に対し、8月1日に大学管理本部によって発表された「新構想」を、「改革の原点への回帰」であると対置する。このような構図は、都立大人文学部だけが改革に後ろ向きであり、それゆえに、東京都が7月31日までの検討体制を突然覆し、「新構想」を提示したことに正当性があったとする像を結ぶ。しかし、2003年7月までの検討体制は都立大学だけではなく、他の都立3大学、そして大学管理本部自身も参加し、2年間協議を積み重ねてきたものであった。今次問題は、そうした一定の手順を踏んで進んできた改革を、その手続きに参加していた都が一方的に破棄し、独断的な案を強権的に押し付けてきたことにある。これをあたかも都立大学人文学部に原因があるかのように描くことは、問題のすり替えである。
 さらに、同ページ内の「新構想発表以降の検討の経過」の記述にも問題がある。ここでは、都立大総長と人文学部教員の反対の動きのみ記載し、都立大以外の3大学、また都立大学の内部でも人文学部以外は「新構想」に積極的に賛成しているかのように記されている。しかし実際には、「新構想」に反対しているのは都立大学人文学部だけではない。例えば、10月9日の「3大学学長声明」に対しては、教職員組合科技大支部が、科技大学長が教授会を通さず「声明」を出したことに対する批判声明を出している。また都立大学の内部でも、「新構想」に反対しているのは人文学部のみではない。理学部・工学部の助手・院生・学生も「新構想」に反対し、次々と質問状・抗議声明を提示している。このことは、それら文書の提出先である大学管理本部が最もよく知るところである。それにもかかわらず、あたかも都立大学総長と人文学部教員だけが「新構想」に反対しているかのように表記することは、全く事実に反している。
 このように同ページの記述は著しく公平性を欠き、とりわけ都立大学人文学部を孤立させ攻撃する意図を持っていると断じざるを得ない。これは公権力を執行する行政として、極めて重大な問題である。我々は、こうした大学管理本部の行為に対して厳重に抗議し、直ちにこのページの記載内容を改め、訂正文を掲載することを要求する。

    東京都立大学史学専攻の危機に関するOB会有志および賛同者一同