大学の自治と民主主義を回復させ、早急に正常な協議体制のもとでの改革検討を
  ―四大学間の協議に基づく開かれた対案策定を要望する―

        2003年10月20日 都立大学・短期大学教職員組合中央執行委員会

   都立四大学の教職員の皆さん

 私たち東京都立大学・短期大学教職員組合は、8月1日以降の事態について、大学管理本部の不当な「トップダウン」を強く批判するとともに、四つの大学が、教授会・評議会などを通した大学としての正規の意思決定のプロセスを早急に回復させ、大学の自治と民主主義を取り戻してことに当たるよう、広く訴えてきました。

  教学準備委員会に出ている委員らに守秘義務が加えられ、教授会など大学の正規の意思決定機関に新大学をめぐる情報が伝えられず、審議も行えないという、大学としてきわめて異常な事態は、多くの教職員の努力の中で、少しずつ回復に向けての歩みがはじまりました。10月2日の教学準備委員会では、都立大学から出ている委員らの奮闘により、「同意書」とそれに象徴されるこの間の管理本部の進め方の異常さを、出席者の多くが認めざるを得ない状況がつくられました。また、その場では都立大委員側からは、今後は個人としてではなく学部長・研究科長として参加するということも通告されました。

 こうした過程を踏まえ、都立大学では10月7日の臨時評議会において、新構想に対する大学としての姿勢が初めて正式に論議され、評議会の一致した了解のもとに総長声明が出されました。またさらに、10月15日には学生・院生に向けた、同16日には教職員に向けた説明と意見を聴く集会が、総長により大学として正式に行われました。

 これらの出来事は、都立大学において、8月以降大きく侵されていた大学としての正規の意思決定ルールや執行プロセスが回復されつつあることとして、歓迎すべきです。

 しかし都立大学においても、完全な回復に至るためには、まだ多くの課題が残されているほか、他の3大学では、未だ大学自治と民主主義は大きく侵されたままになっています。とりわけ10月9日の「3大学学長意見表明」はそのことを象徴しています。これについてはすでに10月10日付中央執行委員会声明において詳しく述べているので繰り返しませんが、それぞれの大学の教職員からの選挙によって選ばれた学長であるにもかかわらず、教授会などに何ら諮らずこのような「意見表明」が行われたということ自体、大学自治が重大な麻痺状態になっていることを示しているのではないでしょうか。そのような状態から大学としての民主主義を回復していくことは、緊急の課題です。

 都立大学では10月7日の総長声明に基づき、「新構想」への対案を、大学院構成と教養教育の二つの問題を軸に、学内のワーキンググループを中心に準備していると伝えられます。教職員組合は、これまでも4大学改革について、8月1日以降の「トップダウン」による進め方を改め、四大学と管理本部との対等な協議という体制のもとで、早急に取り組むことを訴えてきました。そのような点からは、都立大学が大学と管理本部との対等な協議のための具体案として、このような対案を用意することを歓迎します。

 しかし同時に、教職員組合としては、都立大学の準備しつつある対案は、都立大学だけの案とするのではなく、四大学全体に、さらに都民に対してより開かれた案として作成・提案されるべきと考えます。これは、大学管理本部の四大学間分断の企図をくじく上でも極めて重要なことではないでしょうか。その観点からは、上記対案にはさらに検討すべき問題があるのではないかと考えます。例えば以下のような点です。

 現在準備中の対案は、大学院構想と教養教育という二つの課題に絞られています。とくに大学院構想のポイントの一つは、基礎教育センター・エクステンションセンターの両センター配置の教員を土台として、大学院の専攻を新たに加えていくことにあると伝えられます。このようにして構想される大学院新専攻は、教育・研究の新たな分野を積極的に切りひらく点で重要な意味を持つと考えられます。

 しかし大学院とともに、その基礎となる両センターについても、より積極的な対案が構想されるべきです。その理由は次の点にあります。

 第一に、大学側が提起する対案は、都民に対してより開かれたものであるべきと考えられるからです。例えば管理本部側の構想するエクステンションセンター案は、定数配置もほとんどなく、「将来独立採算を目指す」など、きわめて曖昧・無責任かつ不安定な内容になっています。しかし、都立の新しい大学がこれまでと同様(例えば「都民カレッジ」のように)都民に開かれた大学となるためには、こうした管理本部案の欠点を克服する、より積極的な案こそが提案されるべきではないでしょうか。

 第二に、大学管理本部側仮配置案では、両センターには都立大内部の語学・文学系、身体・体育系、情報系などの教員ばかりでなく、他の三大学の外国語など一般教育担当教員、経済経営系、健康栄養系などの教員も多数配置されることになっています。したがって、提起されるべき対案は、こうした四大学すべての教員のこれまでの経験と意欲とが十分に生かされるものであるべきです。

 なおいうまでもないことですが、二つのセンターについての大学管理本部案は、定数もほとんど確保せず、そこに配置される教員のほとんどを「過員」扱いにする、きわめて不当なものです。したがって私たちの提起は、このような案を前提にするものではありません。そこに十分な定数を配当し、配置される教員の身分を安定させるとともに当初配置された教員の退職後も教育・研究がセンターとして継続できるものにする必要があります。両センターともそれを基礎とした大学院専攻を構成することは、センターの教育研究機能を充実させる上で不可欠です。さらにエクステンションセンター配置教員についても、社会人教育等とともに学部教育などを担当できるようにすることが、大学の教育活動全体を豊かにしていく上で重要です。また、センター配置教員と学部配置教員との定期的な相互異動なども行われるべきです。「独立採算」などは、公立大学が都民に対して果たすべき社会的使命そのものを大きく歪めるものであり、認められません。

 私たちの提起は、あくまで両センターについての抜本的な対案を、大学がその自主的創造性を発揮して行うべきであるということです。

 私たち教職員組合は、各大学が大学本来の自治と民主主義を早急に回復させるとともに、都立大学以外の三大学からも、大学自身の案(教学準備委員個人の案ではなく)として積極的な対案が出され、四大学間及び管理本部との間の対等な協議に付されることを望みます。それとともに都立大学には、四大学と都民により開かれた対案を提起し、積極的に大学間の協議を行うことを、強く望みます。