開かれてもいない教授会が「賛意を表明」―大学管理本部の
   「経過」ねつ造を批判する

 11月18日、大学管理本部ホームページに「新大学の開学に向けて」というページが開設されました。そこには、「新大学の構想」(8月1日報道発表資料)、「新大学の検討状況」、「平成17年4月に新大学に入学を希望する皆様へ」とする新大学の構成と入試概要等、「現在都立の大学に在籍する皆様・平成16年度に入学を希望する皆様へ」とする経過措置などが掲載されています。これまでの秘密主義的な「改革」の進め方には、学生・院生・都民や都議会などからも再三にわたり批判されていました。そこでこれが今後は積極的な情報公開をおこなうという大学管理本部の姿勢の転換であるとすれば、大変歓迎すべきことです。
  しかし掲載されている内容には、重大な問題があります。なかでも「新大学の検討状況」の中に掲載されている「『新しい大学の構想』に至る検討の経緯とその後の経過」には、多くの誤りや事実のねつ造、恣意的なコメントが含まれています。

7月以前の構想は都立大学の抵抗で歪められた?

  「経過」の全体はおおよそ、「東京都大学改革基本方針」(13年2月)が、抜本的な改革方向を示したのに、「東京都大学改革大綱」(13年11月)を含む今年7月までの改革構想は、「現状温存」を図ろうとする都立大学の抵抗のため、それが実現できなかったので、8月1日の「新構想」は、「改革の原点への回帰」を図ったものと描かれています。例えば「基本方針」が「現在の学部・構成や従来の学問分野にとらわれず・・・・再編成をおこなう」と提起したのに、「改革大綱」では「現都立大学とほとんど変わらない縦割りの学部・大学院構成」になっているとされています。
 しかし7月までの学部構成等は経過を振り返れば、決して都立大学がこれを押しつけたわけではありませんでした。検討の過程では全学1学部案なども俎上に載せられました。そして教養教育の充実と専門教育における系統性の明確化など、大学教育のあり方についての真剣な検討が4大学の教職員と大学管理本部とを交えて積み重ねられる中で、6学部8研究科からなる構成が、受験産業などからの意見聴取なども踏まえて大学管理本部自身がまとめて提案し、決定されたものです。
 こうした経過を踏まえ、課題プログラムや外国語教育の抜本的な再編成などを含む教養教育改革構想が7月までに入念に検討・作成されていました。また、専門教育の再編成に関しては、人文学部・人文科学研究科では日本語・日本語教育学や文化関係学・言語科学などの新専攻が、法学部・経済学部では法科大学院やビジネス・スクールなどが、また理学研究科・工学研究科と科学技術大との間では先端技術研究科と新たな工学研究科がそれぞれ準備され、また都市科学研究科は社会科学研究科・工学研究科の一部を再編吸収して総合都市学研究科に編成替えするなどの構想が準備されていました。これらは、管理本部が前提条件として設定した、都立大B類と短大の廃止に伴う約2割の教員定数削減、日野キャンパスの放棄という悪条件の下で、今日の社会から求められる教育・研究課題に積極的に応えようとする構想となっていました。重要なことは、1年半にわたるこれらの検討作業の過程で、知事や管理本部側から方向性の誤りの指摘や修正の働きかけは一度たりともなかった、ということです。

新構想発表以降の経過―開かれてもいない教授会をねつ造

 もっとも悪質なのは「新構想発表以降の検討経過」図の中で、都立大学を除く3大学の教授会が「新構想」に賛意を表したとする記述です。その時期は図からは8月〜9月上旬とされています。しかし8月1日からこの時期までの間に、少なくとも科技大・短大では教授会すら開かれていません。したがって「教授会が賛意を表明」などあり得ないことです。各大学の教授会の開催の有無を大学管理本部が把握していない筈は無く、したがってこれは意図的な虚偽であるとしかいいようがありません。(なお、これらの大学の教授会においては現在に至るまで賛意など表明していません。)
 また8月29日には「学長意見聴取」と、あたかも4大学の総長・学長からの意見聴取がおこなわれたかのような記載があります。しかし8月29日は、都立大5学部長と科技大・保科大学長が、「個人」として大学管理本部に呼ばれ、「新構想」への賛意と教学準備委員会への参加が求められたもので、大学からの意見聴取の場ではありませんでした。大学からの意見聴取は8月1日以降、正式には1度も行われていません。
 さらに「検討経過」図の中には、このほかにも数多くの誤記が含まれます。例えば「都立大・短大教職員組合反対声明(9/12)」とされていますが、組合が「新構想」に対して中央執行委員会声明「『都立の新しい大学の構想について』に対して抗議する」を発表したのは8月4日で、これは朝日新聞都内版などにも報道されています。ちなみに9月12日の「新大学づくりに向けて今こそ全構成員が信頼しあい団結して民主的検討手続きを再構築しよう」は中央執行委員会から教職員への呼びかけです。
 また10月9日に「3大学学長声明」が出されたとされていますが、これは当該文書にも記載されている通り「意見表明」です。しかもいずれの大学においても事前も事後も教授会の承認を受けておらず、たとえば科技大ではその後の10月21日の教授会で、これが大学を代表しない学長の個人的意見の表明にすぎないことが確認され、正規の議事録にも記載されました。ちなみに9月22日、29日にそれぞれ都立大学総長が声明を発表したとされていますが、これらも大学管理本部長宛の「意見」の表明です。意見表明と声明とを混同して記載しているのも、大学の民主主義に則って評議会の了解のもとに10月7日に公表された都立大総長声明を目立たせないようにするための、意図的な誤記かもしれません。

学生、院生、助手等の意見表明、疑義の声は一切無視
 新大学の検討経過における管理本部の姿勢を鮮明に表しているのは、8月1日から11月14日までの間に数多くなされた、修学や進学に不安を抱える在学中の学生、院生および処遇がまったく不明なままに放置されている助手からなされた意見表明、解明要求を完全に無視していることです。主なものだけでも、都立大A類自治会・夜間受講生自治会執行部の声明(10月10日)、人文科学研究科院生会の公開質問状(10月15日)、史学科院生会の抗議声明(10月20日)、人文系助手会の要請と公開質問(10月27日)、工学系電気工学専攻・工学部電気工学科院生学生有志の意見表明(10月31日)、理学研究科生物学専攻・身体運動科学専攻院生研究生の抗議声明(11月6日)、理学研究科・工学研究科助手会の質問書(11月10日)、人文系助手会の再質問書(11月20日)、等々が出されていますが、これらについては回答することはおろかその存在すら記載されていません。
 管理本部は、「面白くて楽しい」のは新大学の学生だけで、在学中の学生院生の学習と研究の権利を侵害しても構わない、助手の生活と人生設計はどうでもよい、と考えているとしか思えません。

大学管理本部は実態をねじまげる虚偽の公表を直ちに中止し、都民と四大学全構成員に対する誠意ある説明を行え
 大学管理本部はこれまでにも、文科省には「改組・転換」手続きを進めながら、大学や議会・都民には「旧大学廃止」と「新大学設立」と、あたかも現四大学と新大学が不連続であるかのような虚偽の説明を行ってきました。その欺瞞や各大学の教職員や学生の声を無視している姿勢が11月13日の都議会文教委員会でも多数の委員から厳しく批判されたところです。にもかかわらず、逆に居直ってこのような実態をねじまげた情報操作をおこなうことは断じて許せません。直ちに多数の批判や疑義が存在することを認め、正しい情報に訂正するとともに、大学教職員・学生・院生と都民・都議会に対して、誠意ある説明と協議を行うことを強く要求します。