新大学定数530名 「必修科目をおかない」など欠陥だらけの構想案

       ―第4回教学準備委員会の状況―

 10月23日の教学準備委員会の様子について、すでに教授会(懇談会)、委員会などで報告された大学、学部もありますが、それらを総合すると以下のようでした。
 同日午後4時半から始められた教学準備委員会では、冒頭、西澤座長より、文部科学省に提出する入試科目および設置申請事前相談のための時間がきわめて切迫しているとの発言があった後、管理本部より、以下のような資料が提出・説明されました。

 @新大学設立までの主なスケジュール

 A新大学の定数の考え方

 B新大学の基本構成

 Cエクステンションセンター、基礎教育センターの概要について

 D各作業チームの検討状況

 E各学部・コースのコンセプト等

 F都市教養プログラム・基礎ゼミおよび都市文明の概要

 G入試コンセプトに基づく入学者選抜制度の検討結果

 H単位バンク(仮称)システム

 I教学準備委員会各部会の設立について

大学管理本部提案の主な内容

<スケジュール>

 主な内容として、スケジュールでは教学関係では10月末〜11月はじめに新大学概要公表、11月前半にチャレンジ等入試要項配布、11月後半〜1月上旬新大学説明会、10月下旬〜12月末教育課程等の決定、11月26日〜1月5日文部科学省事前相談・書類提出、1月19日〜同審査などとなっています。また法人関係では、10月下旬〜11月はじめ勤務条件概要決定、10月末〜11月上旬組合交渉、2月中旬勤務条件提示、2月末〜3月上旬就任承諾書提出、11月〜2月末学長・理事長予定者決定、3月中・下旬学部長・その他部局長内定などとなっています。

<定数など>

 定数等に関しては、6割となっている人件費比率を圧縮することで運営交付金圧縮をおこない、他大学との競争可能な人件費比率にすべきとした上で、新大学の教員定数を530名としています。また、人件費圧縮のため英語教育について可能な分野のアウトソーシングをおこなうべきとしています。

 また「基本構成」では、各学部・学系・コースの学生定員、専任教員数(定数の誤りか?)が示されています。詳細は省きますが、教員数では、都市教養学部人文・社会系64、法学系40、経済学系38、理工学系119、都市環境学部66、システムデザイン学部60、保健福祉学部(名称未定)61となっています。このほかに基礎教育センター10(学部教育コーディネーター1、語学5、情報3、体育1)、エクステンションセンター25(文化・言語10、身体健康10、経営・会計5)、その他(学長・入試・新分野等)47が示されています。助手については、いまだなんら言及がありません。なお人文・社会系各コースの専修は認めない、経済学系は当初の3コースから2コースに変更などとなっています。

<カリキュラム・部会など>

 カリキュラムなどに関わっては、単位バンクとの関係などから、必修科目をおかない、履修年次を設けない、とされています。

  また、部会については単位バンク検討部会、入試検討部会、新分野検討部会、都市文明・基礎ゼミ、教員公募委員会、移行期の検討の6つが提案されています。

17年度入試と基本構成の大枠を決定──提案に多くの批判が集中

 今回の準備委員会では、17年度入試科目(但し人文・社会系は10月27日提出予定)が決定されたほか、基本構成の骨格が承認されたといいます。大学管理本部からの提案は、様ざまな問題点や矛盾を含んでおり、委員会の場でも都立大委員などから、様ざまな指摘・批判・修正要求が出ました。

  例えば必修をおかず履修年次指定をおこなわないなどは、各コースでの教育責任という点から重大であるばかりでなく、JABEEなどの資格取得を不可能にします。また人文・社会系に専修を設けないというのも同様に様ざまな資格取得を困難ないし不可能にするものです。

 またセンター定数の内訳については、質問などの中でいまだ暫定的であることも明らかにされました。

都立大提案も今後検討対象に 大学院の設置時期と構成など

  大学院設置時期については、大学管理本部は18年度開設に固執しており、学部と同時開設を強く求める委員からの主張にも一切態度を変えませんでした。また構成については、都立大からの提案については、期限内に届かなかったとして提出されず、管理本部案と川勝外部委員案の二つを検討対象とすると管理本部は主張しました。しかし、都立大案も検討対象とすべきという都立大委員らの強い要求の中で、西澤座長も、今後検討対象にすると発言したと伝えられます。

「同意書」に固執できず 資料は全てオープンに

 「同意書」および「口外してはならない」という点について、今回の委員会で大学管理本部はそれに固執できませんでした。先週半ばまでに都立大の一部の学部から部分的な提出があったとはいえ、人文学部・理学研究科がゼロであることをはじめ、都立大の大多数の教員は未だに「同意書」提出を拒んでいます。それにもかかわらず管理本部は、委員会の場ではさらなる提出も求めず、また、配付資料については教員には完全にオープンにするという扱いとなりました。

新大学検討の遅れは管理本部の責任である

 冒頭の西澤座長の発言の通り、文科省申請を目前にした今になっても,管理本部の提案は、明らかに思いつき的で検討不十分な案のままです。それをなりふりかまわず四大学の教員に無理やり具体化させ、実体化させようとしているのです。

 この検討の遅れは誰に責任があるのでしょうか。

 管理本部は10月以降も期日をずらしてまでも執拗に「同意書」提出を各教員に迫りましたが、提出したにもかかわらず詳細設計に何ら関われないでいる教員が多数いる一方で、未提出教員にも作業が要請されるなど、まったく無意味・無原則な状況がすでに広がっています。したがって「同意書」が不当であるばかりでなく、まったく無意味であることはこうした状況からも明らかです。

 そうした中で管理本部は、都立大学では総長や学部長を無視して事務局長・事務長を通じて直接、個々の教員に提出を迫り、科技大など3大学学長には教授会等に諮ることもないままに意見表明を求めるなどをおこなってきました。こうした行為は、大学内に大きな混乱を生みだし、学長と教授会、事務局と教員などとの間の信頼関係を大きく損なうものとなりました。大学改革をめぐるこの重要な時期に、このような混乱と不信を生じさせた大学管理本部の責任は重大です。にもかかわらず、管理本部は混乱の責任を「同意書」に反対する「総長をはじめとする一部の教員」に帰そうとする宣伝をマスコミに流していますが、事態の経過はそれがまったく虚偽であることをますます明らかにしています。管理本部は「同意書」強要が正常で迅速な検討を遅らせたこと認め、四大学の全教員に直ちに謝罪するべきです。

  「同意書」が実質的に無効になったとはいえ、大学管理本部の不当な進め方の基本は未だに変わっていません。さらにすでにお知らせしたように、組合の解明要求では、文科省には「改組・転換」と説明し、大学や議会、都民には「廃止」「設立」と言い張る詐欺的な対応も明らかになりました。私たちは、引き続き、大学自治に則った民主主義的な検討体制の回復を、強く求めていきます。