大学管理本部による「新大学」設計の予備校への外注を糾弾する

 12月5日付「朝日新聞」によれば、大学管理本部は新大学の設置趣旨・設計等に関して河合塾に調査委託するといいます。8月1日以降大学管理本部は、一方的に発表した「新構想」を押しつけたばかりか、教学準備委員らへの「就任承諾書」や教員への「同意書」などを強要し、新大学に関する理念や全体構成、カリキュラム原理など構想の中心部分に関する大学側での検討を、一切締め出してきました。そのあげく、これらについて外部の、それも予備校に委託することは、とうてい許すことのできない暴挙です。また管理本部がその理由として、あたかも大学教員側にそれらについて検討する能力がないかのように説明していることもとうてい容認できません。
  まず何よりも重大なことは、新大学の設置申請に係わるきわめて重要な部分について外注すること、それも予備校に委託するということです。
 すでに指摘しているように、大学管理本部は大学や議会には「廃止・設立」といいながら、文部科学省に対しては「改組・転換」で手続きを進めようとしています。「改組・転換」である以上、新大学に係わる基本的な部分は、四大学との協議によって進めることは当然です。しかるに、対等な協議に応じないばかりか、重要な部分について何らの検討・協議もないままに突然外注に出すということは、大学の自治を二重三重に踏みにじる暴挙に他なりません。
 しかも予備校を委託先にしていることも重大です。民間企業でかつ大学合格のための受験指導を主たる業務とする予備校と公立の新大学との間に、このような基本部分での結びつきが作られることは、公正という点から多くの疑問を呼ぶものです。さらにかねてから石原知事は「受験競争による弊害」をさんざん批判してきました。それにもかかわらず、受験競争にもっとも深く関わる予備校にこれを委託するということも、全く節操を欠いた振る舞いです。
  次に、委託に至る理由とされていることについてです、同報道によれば、大学管理本部は委託理由について、「大学の先生方は・・縦割りの検討は得意だが、学際的に横断するのは苦手」と、あたかも教学準備委員会などで大学側が十分な案を提出できなかったかのように述べています。しかし、8月1日以来の経過を見れば、これが全く事実に反することは明らかです。
 第一に、「新構想」に示された「大都市における人間社会の理想像の追求」という「理念」は、「外部検討会」の検討を経て設定されたものとして、大学側からの検討の余地のなく一方的に押しつけたものでした。また「単位バンク」など全体に係わる重要なカリキュラム原理なども同様です。さらに都立大学の現行5学部すべてと科学技術大学の一部にまたがる都市教養学部についても、その構成は大学管理本部が一方的に「決定」したものでした。
 第二に、大学教員側から教学準備委員としてその設計検討に加わることになった5学部長・2大学長は、「新構想に積極的に賛同する」個人として「知り得たことを他に口外しない」こととされており、基本理念や基本構想について根本から検討する権限は大学側教学準備委員にも他の大学教員にも、当初から一切与えられていませんでした。そして大学教員各委員は、それぞれが個別の学系ないし学部(人文学部長=人文社会学系、法学部長=法学系、経済学部長=経済学系、理学部長=理工学系、工学部長=都市環境学部、科技大学長=システムデザイン学部、保科大学長=保健福祉学部)の設計作業を担当させられ、大学管理本部が一方的に取り仕切った教学準備委員会そのものの中にさえ、新大学全体の設置理念・趣旨や都市教養学部全体の設置理念・趣旨、全学の教養教育のあり方、エクステンションセンターなどについての検討体制は、これまで一度も設けられてきませんでした。また、これまで実質3回行われた教学準備委員会においてもその「会議次第」に見る限り、新大学全体の設置理念・趣旨などは一度たりとも議題に上っていません。
 第三に、このように一切の議論を受け付けない大学管理本部側の姿勢にもかかわらず、大学側はこれらの多くの問題について、自発的な検討を進めてきました。12月3日に都立大学総長の主催で行われた全学説明集会では、大学院の全体構成や全学的な教養教育に関する都立大学内で検討されてきた対案が報告されました。また、新大学の全体理念やカリキュラム原理などに関しても、教授会その他で様々な議論が行われており、それらの意見や批判の一部は、教学準備委員会の場にも学内委員から伝えられています。しかしそれらの意見は大学管理本部からは一切無視し続けられています。
 これらの経過を見れば、大学教員に検討する力がないという管理本部の説明は明白に事実に反します。とりわけ新大学の設置理念・趣旨や都市教養学部の設置理念・趣旨などは、大学管理本部が外部検討会の検討を経て、揺るぎのない理念として議論の余地なく押しつけたものです。しかも教学準備委員会には、「新構想」作成に大きく寄与したはずの外部委員も参加しています。したがって、その理念が設置申請上不十分だとすれば、それは大学管理本部と外部検討会の能力のなさを示すもの以外のなにものでもありません。
 大学管理本部は、新大学設計に関する予備校への外部委託を直ちに中止すべきです。そして四大学との間に、新大学設計に関する対等な協議体制を早急に再構築することを、再度、強く要求するものです。