中央執行委員長就任にあたって

                      理学研究科化学専攻・山下正廣

 大学は言うまでもなく教育と研究の両輪からなっており、真理探究を目的とする最高の学府です。このために様々な権利が保障されています。ソフト面では「学問の自由」、「思想・信条の自由」、「信教の自由」等、またハード面では「大学の自治」、「全構成員自治」、「教授会自治」等、です。このような真理探究を究極の目的としている都立4大学が危機を迎えている。4大学統合による教職員のリストラ、給与カット、不当処分、地方独立行政法人化等、です。労働組合は思想・信条の違いを乗り越え、労働者の生活と権利を守るために団結することが重要です。都立4大学の研究・教育環境の改善と、教職員の待遇改善、生活と権利を守るために頑張ります。

 今期は、従来の運動を更に発展・強化するとともに、特に

1)「新大学憲章」制定

2)教職員の65歳定年延長

の実現を目指したい。

 

 「新大学憲章」制定に向けて

       全構成員による主体的で建設的な議論を期待する!!

                     中央執行委員長   山下正廣

 2005年には都立の4大学は新大学へ統合されるとともに、地方独立行政法人法に基づく「公立大学法人」となる可能性があります。この間の大学管理本部の出した案や地方独立行政法人法をみてみますと、1)理事長と総長の2人体制による教学と経営の分離、2)教職員の非公務員化、3)教員の20%削減、4)中期目標による評価と選別、5)教授会と評議会の形骸化、などトップダウン的な運営の方向性が明らかになってきました。本来、大学は時の政治権力や世俗的権威から独立して、憲法に保障された「大学の自治」と「学問の自由」の基に構成員の主体的で民主的な運営が行われるべきもので、この間の事態は非常に憂慮すべき状況であります。更に問題なのは、このような重要な改革案が大学構成員の合意も得られずに一方的に決められている点であります。

 都立の4大学においてこれまで、自由闊達、大学の管理運営への全構成員の自覚的参加と自治、各学問分野の協力と調和ある発展の志向という誇るべき伝統を築いてきました。そこで、今回の新大学の発足にあたり、都立4大学の全構成員、組合、学生自治会、生活協同組合、サークルなど民主団体が一堂に集まり、新大学の設置理念、教育目標、研究目標、社会貢献、大学運営等について自主的に規定を作り上げ、全大学構成員の総意に基づき「新大学憲章」として制定し、新大学の運営の指針にしようと考えております。

 皆様に一次素案(私の個人的なメモ程度でまだ不十分なものです)を提案させていただきます。これに捕らわれることなく自由に討論して、最良のものを作り上げようと考えております。皆様の積極的なご意見と討論を期待します。

 また、8月に発足予定の「新大学憲章」起草委員会にぜひ参加下さいますようお願いいたします。

                         2003年7月22日

 新大学憲章(一次素案)

 2005年に都立の4大学は新大学へと統合されるとともに、地方独立行政法人法に基づく「公立大学法人」となる可能性がある。これまで都立の4大学はそれぞれの大学の設立理念に基づき研究・教育を行い、多いにその両面で成果を上げ社会に貢献してきた。このたび、4大学が統合され、新大学が発足するにあたり、さらなる発展を目指し、新大学の設置理念、教育目標、研究目標、社会貢献、大学運営等について規定し、全大学構成員の総意に基づき新大学憲章を制定するものである。

「設置理念」

 憲法に保障されているように「大学の自治」と「学問の自由」は最高の学府である大学の基本的理念の両輪である。大学は、政治的権力や世俗的権威から独立して、人類の立場に置いて学問に専心し、人間の精神と英知を担うことによってこそ、最高の学府として自らを任じることができよう。「学術の中心として、深く専門の学芸を教授・研究するとともに、幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養する学問の府として、日本国憲法、教育基本法、ユネスコの高等教育に関する宣言等の理念をふまえ、教育・研究活動を通して地域と世界の平和と人類の福祉および文化と学術の発展に努める」ことを、新大学の設置理念とする。都立の4大学においてこれまでに、自由闊達、大学の管理運営への全構成員の自覚的参加と自治、各学問分野の協力と調和ある発展の志向という誇るべき伝統を築いてきた。新大学においては、このような伝統を継承し、大学の社会的責任を深く自覚し、新大学を21世紀の新時代にふさわしいものへと発展させるために全構成員で努力するものである。

教育理念」

1)新大学は学ぶにふさわしい資質を有するすべての世界中の者に門戸を開き、平和で豊かな世界の実現に寄与しうる人間の教育を目指す。また、科学的で民主的で総合的な判断力と高度な専門的知識と理解力、洞察力、実践力、想像力を兼ね備え、かつ、国際性と開拓者精神をもった各分野の指導者を養成する。このために、新大学は、学生の個性と学習する権利を尊重しつつ、世界最高水準の教育を提供する。

2)学部教育においては幅広い一般教養教育と多様な専門教育を有機的に連携させた柔軟な教育システムを実現する。大学院教育においては総合大学の特性を生かし多様な専門分野において、独創的な研究者や高度専門職業人の養成のために広範な高度専門教育システムを実現する。

3)新大学の教員は、それぞれの学問分野における第一線の研究者として、その経験と実績を体系的に教育に反映するものとする。また新大学はすべての学生に最善の教育・研究環境を提供し、人的且つ経済的な支援体制を整備することに努める。

4)新大学の教育活動及び広く教育の諸条件について自ら点検するとともに、学生及び適切な第3者からの評価を受け、その評価を教育目標の達成に速やかに反映させる。

研究理念」

1)真理を探究し、知を創造しようとする構成員の多様にして、自主的かつ創造的な研究活動を尊び、世界最高の研究を追求する。研究が人類の平和と福祉の発展に資するべきであることを認識し、研究の方法及び内容を絶えず自省する。研究活動を自ら点検し、これを社会に開示するとともに、適切な第3者からの評価を受け、説明責任を果たす。

2)研究の体系化と継承を尊重しつつ学問分野の発展を目指すとともに、萌芽的な研究や未踏の研究分野の開拓に積極的に取り組む。また、広い分野のまたがった学際的な研究課題に対して、総合大学の特性を生かして組織および個人の多様な関わりを創り出し、学の融合を通じて新たな学問分野の創造を目指す。

3)学問・研究は人間の尊厳が保障される平和で豊かな社会の建設に寄与しなければならない。そのために、他大学、他の研究機関、行政機関、産業界、地域社会、国際社会など社会を構成する広範な分野との有効な協力が必要である。

4)学問・研究の成果が人類社会全体のものとして正しく利用されるようにするために、学問と教育をそのあらゆる段階で公開する。

社会的貢献」

1)研究成果を地域・社会に還元するについて、成果を短絡的に求めるのではなくて、永続的、普遍的な学術体系に繋げることを目指し、また、社会と連携する研究を基礎研究に反映させる。また。教育を通じて研究成果を社会に還元するために、最先端の研究成果を教育に生かすとともに、これによって次の世代の研究者を育成する。

2)地域・社会への情報公開と広報活動を通じて、社会に対する説明責任を果たし、学外からの声に恒常的に応え、社会に開かれた大学を目指す。

3)国際的な学術連携と留学生教育を進め、世界とりわけアジア諸国との交流に貢献する。

4)活発な情報発信と人的交流、および国内外の諸機関との連携により学術文化の国際的拠点を形成する。

大学運営」

1)憲法で保障されている「学問の自由」と「大学の自治」の理念をふまえ、教育と研究の活性化が図れるように、民主的・自主的・自立的な運営をする。

2)「大学の自治」と「学問の自由」の根幹が教員の人事にあることに鑑み、各教授会が公正な評価に基づき自立的にこれを行う。

3)運営にあたっては、総長、役員会、経営協議会、教育研究評議会等がそれぞれの役割・機能を充分に果たすとともに、全学的な検討事項については、学生・教職員を含めた全構成員の議論をふまえた合意形成に努める。また「教授会の自治」を尊重し、その役割の重要性について十分配慮する。全ての構成員が、それぞれの立場において、大学の諸活動へ参画することを保障し、民主的運営に努める。構成員は大学の自治を発展させるための活動を相互に尊重するとともに全学的調和を目指す。

4)役員等については、新大学の教育研究に高い見識を有し、新大学の発展に貢献しうるものを選任するとともに、選任理由等を全構成員に明らかにする。

5)総長選考にあたっては全構成員の意志が反映されるようにする。

 65歳定年延長の提案(案)

 既に新聞等でご存じのように日本人の平均寿命が4年連続で世界一であります。今後もますます伸びる可能性があり、日本はまさに高齢化社会を迎えています。各大学においてはこのような状況と、年金の満額支給年齢の引き上げや、法人化を視野に入れて定年を65歳に延長する動きが盛んになってきております。東京大学、東京工業大学、分子科学研究所などです。新大学においては、教員だけではなく(雇有)職員も65歳定年にしてはどうでしょうか?

 定年延長のメリットとして、

1)より長く勤められる(当然)

2)年金の支給年齢とつながる

3)他大学からの教員を採用する場合に有利になる

4)職員にとっても就職希望者が増える

 デメリットとして

1)過員計画の見直し

2)若手研究者の昇格の遅延

 これ以外にも、いろいろなメリットやデメリットがあると思います。皆さんのご意見をお待ちしております。