新大学における助手制度についての要請および質問書(公開)

東京都大学管理本部長 山口一久 殿

 去る8月1日に大学管理本部から公表された「都立の新しい大学の構想について」により、「四大学統合」から「四大学廃止・新大学設置」へと突如として方針転換が図られました。この根拠薄弱な方針転換によって示された大学像、そしてその後の経過には、人文学部の実質的解体、透明性のない意思決定過程など、看過し難い多くの問題点が含まれています。助手制度の今後のあり方を巡る問題もその一つです。
 助手問題については、東京都立大学・短期大学教職員組合の「新大学構想に関する解明要求事項について」(9月25日)、都立大総長の声明「新大学設立準備体制の速やかな再構築を求める」(10月7日)でも触れられています。
 しかし、大学管理本部は、前者に対して、助手の定数および配属は「教学準備委員会と経営準備会で検討し、大学管理本部の責任で決定する。」という極めて形式的な回答を与えるに止まっています。さらに大学管理本部は、「現在、助手の実態を調査中で、それを踏まえて、議論の素材を整理したい。大学によっても学部によっても、実態が異なる」と説明していますが(以上、組合情宣部「手から手へ」第2224号による)、踏まえるべきは当事者である助手の意見であり、当事者の意見をきちんと踏まえた開かれた議論こそ、求められていると考えます。ここに改めて、東京都立大学人文・社会科学系助手の集まりである「東京都立大学文系助手会」として、新大学における助手の処遇、位置づけについて、若干の意見を申し述べると共に、検討を要請いたします。
 学校教育法第58条に定める通り、大学には助手の配置が必要であり、その役割は文系・理系を問わず不可欠のものです。同条第8項によれば、助手の職務は「教授及び助教授の職務を助ける」ことであり、具体的には、学部生・院生に対する教育のサポート、専門性を要する資料・機器の管理、科学研究費補助金による研究課題等の各種プロジェクトへの参加、研究室運営に関する実務など、さまざまな仕事を行っています。このように、学内での助手の役割は、多様であるが故に重要なものです。
 また助手制度の存在意義は学内においてのみ見出されるものではありません。教育基本法第10条第1項により、教育は「国民全体に対し直接に責任を負」うものとされています。そして、大学教育の責務の一つが次世代への知的財産の発展的継承であり、その一環としての研究者の養成であるとすれば、研究者の出発点としての助手の地位を確保することは、大学が国民に対して直接負っている責任を遂行するうえで欠かせないものと言えます。
 このように、学内的にも学外的にも、助手制度の役割ないし意義は重要であり、最高水準の研究教育を担うはずの平成17年度以後の新大学においてもそれは変わらないはずです。しかしながら、数年前に始まった新大学を巡る議論の中でも、そして新大学発足が一年半後にせまったこの段階に至ってもなお、助手制度に関する具体像は全く提示されていません。
 このような事態が、私たち助手に様々な危惧を抱かせ、私たちの研究計画あるいは人生設計に対する不安をかき立てています。この危惧ないし不安を解消して本来の職務を全うするため、以下のような質問をさせて頂く次第です。

1.「助手の実態を調査中」であるとのことですが、いつ、どのような方法で調査を行ったのでしょうか、またはこれから行う予定なのでしょうか。その調査方法と結果は公開されるのでしょうか。
2.もし助手の現在の身分・配置が継承されない場合、地方独立行政法人法第59条等関係法規に違反すると考えますが、この点について大学管理本部の見解をお示しください。

上記の質問に対して、11月7日までに文書にて「東京都立大学人文学部気付東京都立大学文系助手会」宛てにご回答を頂きますよう、よろしくお願いします。
 なお、この「要請および質問書」、並びに、これに対する回答は、全て公開させていただくことをあらかじめお断りしておきます。

  2003年10月27日

                    東京都立大学文系助手会

                  宛先
                   〒192-0397
                     東京都八王子市南大沢1−1
                     東京都立大学 人文学部気付