三大学学長による「意見表明」を批判し,あらためて4大学連携した検討体制の構築を求める

2003年10月10日

 東京都立大学・短期大学教職員組合 中央執行委員会

 

10月9日付で、科学技術大学、保健科学大学、短期大学の三学長連名による「新大学開学準備に向けて積極的な取り組みを行う旨の意見表明」という文書が出されました。

 不思議なことに、三大学学長の連名であるにもかかわらず、いち早く大学HPに掲載されたのは科学技術大学だけで、他の二大学では当日には発表されておらず、しかも「学長」名であるにもかかわらず、三大学の教授会にその内容や発表の可否についての審議依頼は行われた形跡がない、という文書です(注)。

 しかしながら、「新大学開学準備に向けて積極的な取り組みを行う」という3学長の姿勢そのものは、10月7日付で発表された都立大学総長の声明と軌を一にしたものであり、教職員組合(保健科学大学の組合は当組合とは別組織であるが)は歓迎すべきものと考えます。

 ただし、この文書の内容と表現には、今後都立四大学教職員が団結して新大学の建設に協力してゆく体制を築く上でいくつかの見逃しがたい難点が存在することをも指摘しておかなければなりません。

 その第一は、本文書がいみじくも指摘しているように、「全教員挙げて今後の具体的な教育システム設計の作業に積極的に参画していくことが必要」な現在、それをなしとげるために最も必要な条件、すなわち現大学の教員が自由に意見を述べ、その知恵や意欲を反映させるための公正で開かれた討論の機会が阻害されていることに対する危機感や「大学組織の長」としての責任の表明が一切ないことです。教員の選挙によって選ばれ、教員組織と大学に責任を負っているにもかかわらず、母体である教授会になんら諮らずに本文書を発表した姿勢そのものが批判されなければならないでしょう。

 第二に、8月1日以前の新大学の検討過程の最も責任のある設立準備委員会のメンバーでありながら、まるで他人事のように、「新大学設立の意義や、社会貢献への意欲が十分感じ取れるものになってこなかったのではないかという思いを禁じえなかった」と述べていることです。では、なぜこの長期間の検討過程で三学長が結束してその見解を表明してこなかったのか、われわれにはまったく理解できません。みずからが最重要メンバーとして参加していた計画は不十分であったが、マスコミと同列に扱われてどこからか降ってきた計画の「主旨に賛同する」というのは自己批判なのでしょうか。ここには「大学組織の長」としての矜持がなんら見られないのが非常に残念です。

第三に、自分たちでは十分な計画立案ができないという自覚があるからかもしれませんが、「暫定的に情報を限定し作業を進めてきたことは、時間的制約やプライバシー保護の観点からは理解できるものであり、止むを得ないものと考えている」と、非常識な口外禁止条項を含む同意書を容認し、あまつさえ、「三大学においては,すべての教員から「同意書」が提出されている」と誇らしげに述べていることです。「「新大学構想」の主旨と今回の「同意書」提出の意義を十分に説明した」に至っては笑止といわざるを得ません。配置先の説明も理由も明らかにできず、不提出は重大な不利益につながるとのほのめかしさえして、ただただ回収を急いだことや多数の教員が抗議や保留つきでやむなく提出した事実は消えるものではありません。

 

以上に指摘したような問題点を抱えたこの文書で最も危惧されるのは、大学管理本部によって、あたかも都立大総長が新構想に不熱心で、他の三大学の学長は積極的に賛成だ、というフレームアップに利用されかねないという危険性です。組合は、三大学の学長の真意はともかく、大学間の分断と混乱を招来させることがないことを切に願っています。

三学長が直ちに教授会に対し真意を説明し、その意思を体した責任ある代表者として行動をとるよう強く要望するものです。そして、すでに新大学設計に強い意欲を表明している都立大総長と連携して、問題点が未解決の新大学計画を公正で開かれた検討体制で進める努力を期待するものです。

 

(注)科学技術大学では9日、教員懇談会が開かれ、その席上で学長から「意見表明」の公表が未来形で報告され、学長名はおかしい、という意見も出されたのですが、懇談会終了時にはすでにHPに掲載されていた,とのことです。