2318号
 

2004.12.20新法人における賃金雇用制度に
関する緊急解明事項に対する回答

[当局が称するところの旧制度について
  1.現行の給与条例では、「良好な成績」をおさめている場合に定期昇給の機会があるが、当局の提案に変更がなければ、昇給がないとされている。いくら業績をあげても昇給がないとする合理的な理由は何か。
業績をあげている教員、昇任を希望する教員は、新制度の方を選択できる仕組みとなっている。

 2.当局の提案に変更がなければ、旧制度を選択した者には、旧制度のまま昇任する機会がない。新制度を選択する教員との明らかな差別であると考えるがいかがか。また、いくら業績をあげても昇任できないとする合理的な理由はなにか。
旧制度を選択した後でも、業績をあげている教員、昇任を希望する教員は、新制度の方を選択できる道が開かれている。従って、差別にはあたらない。

 3.上記のような措置は、現行4大学教員に対する労働条件の不利益変更と考えるがいかがか。
旧制度については、現行の給与水準を切り下げていないので、不利益変更にはあたらない。

 4.労働基準法第15条及び同施行規則では、昇給に関する事項について明示しなければならないと定めているが、旧制度の昇給に関する事項は就業規則にどのように明示されるのか。
労働基準法第15条及び同施行規則では、昇任に関する事項については、労働契約の締結に際し明示すべき事項とされており、契約締結時に昇給がないことは明示する。就業規則には昇給に関する条項は記載しない。

[当局が称するところの新制度について
  5.当局の提案に変更がなければ、新制度を選択すれば、任期制を選択することになるが、制度選択にあたって、教員個々人に根拠となる法律(大学教員任期法の3条件のうちのいずれか、または労働基準法第14条なのか)を明示すべきと考えるがいかがか。
第7回経営準備室運営会議で示しているが、大学教員任期法に基づき「多様な人材が求められる組織」を指定、そこに属する専任教員は原則1任期5年以内となる。研究員については、研究を主たる職務としないと申し出がない限り原則1任期5年以内となる(再任の場合は原則3年以内)。

 6.当局の提案に変更がなければ、新制度を選択すれば、任期制を選択することになるが、その再任基準が明らかでない。(当局はこれまで、通常の勤務成績・業績をあげていれば再任されるとしているが、「通常の勤務成績・業績」について具体的な説明はない。)制度選択を求めるならば、具体的な再任基準が示されるべきと考えるがいかがか。
再任基準も含めた業績評価制度については、教員も参加した「年俸制・業績評価検討委員会」において検討を開始したところである。委員会メンバー、検討スケジュール等は別紙のとおりである。検討結果を受けて具体的な制度設計を行っていく。繰り返すが、通常の勤務成績・業績をあげていれば再任は可能となるよう制度設計を行う。

 7.当局の提案に変更がなければ、新制度を選択すれば、年俸制を選択することになるが、基本給5割、職務給3割、業績給2割とした根拠はなにか。また、現行の給与条例では、休職期間の給料について、8割を保障している。年俸制で基本給を5割としているのは不利益変更と考えるがいかがか。
生活給的なものの支給(基本給)は全体の5割という考え方である。なお、現行の休職期間の給与は、一律に2割の減額が課されている訳ではなく、病気休職(2年まで)は2割、刑事休職は4割、学術休職は3割などその休職事由により減額率は異なる。新制度では、現行の減額率の水準を勘案し、年俸についても一定の減額をして支給する制度としたい。休職等による職務給、業績給の減額率の考え方については「年俸制・業績評価検討委員会」での検討を踏まえ、あらためて示す。

 8.年俸制を選択し、休職した場合、支給されるのは基本給のみか。
現行の休職期間の給与は、一律に2割の減額が課されている訳ではなく、病気休職(2年まで)は2割、刑事休職は4割、学術休職は3割などその休職事由により減額率は異なる。新制度では、現行の減額率の水準を勘案し、年俸についても一定の減額をして支給する制度としたい。休職等による職務給、業績給の減額率の考え方については「年俸制・業績評価検討委員会」での検討を踏まえ、あらためて示す。

 9.病気休職、介護休暇、育児休業等の取得期間は、任期から除算されるべきと考えるがいかがか。
任期からは除算しないが、再任期間の制限(研究員8年、准教授10年)の期間の算定からは除算する。なお、教授の場合も含めて、病気休職、介護休暇、育児休業等の取得が再任審査に何ら影響させないような審査基準としていく。ただし、病気休職については、再任審査の時点で病状が重とくで回復する見込みがないと判断されるような場合の取扱いについては別途討したい。

10.職務給について、詳細が明らかにされていないが、個々の教員の職務内容によっては、現行の給与を下回ることはないのか。
同じ専門分野の教員と比較して平均的な職務の量が明らかに少ない場合は、年収の3割程度を下回ることもある。

11.業績給についての評価基準が明らかにされていないが、制度選択にあたって、業績評価の方法やその評価基準とそれに基づく支給率、苦情処理方法などが明示されるべきだと考えるがいかがか。
業績評価制度については、教員も参加した「年俸制・業績評価検討委員会」において検討を開始したところである。業績評価の方法やその評価基準等については、その検討結果を受けて制度設計していく。

12.現行4大学の教員が昇任した場合、新制度しか選択できない理由はなにか。任期制の押しつけと考えるが、いかがか。
制度として昇任できる仕組みを備えているのは新制度のみである。そのため、昇任する場合、新制度を選択して頂くことになる。昇任の場合、もれなく新制度となることについては、昇任審査前に文書で明示しているところである。

13.新規採用の教員は、新制度しか選択できないのか。選択できないとすれば、その理由はなにか。
新大学の任用・給与制度の本則は新制度であり、新規採用の教員にはもれなく新制度を選択して頂いている。既存教員には、経過措置として旧制度の選択も可としている。

14.当局の提案に変更がなければ、新制度を選択すれば、任期制となるが、期限の定めのない雇用から、有期雇用となるのは、現行4大学教員に対する労働条件の不利益変更と考えるがいかがか。
新制度の選択は各人の判断で行われるものであり、有期雇用になるとしても、本人が了解の上での選択であれば、不利益変更とは言えない。旧制度という期限の定めのない雇用を選択する道もある。

15.当局の提案に変更がなければ、新制度を選択すれば、任期制を選択することになるが、制度選択にあたっては、個々の教員に任期満了時に受取ることが予想される退職手当の額の試算を提示すべきと考えるがいかがか。
既に第4回経営準備室運営会議で示しているように退職手当の額は、平成16年度末に退職した場合と比較し、不利益とならないよう調整するため、現行より支給額は高くなることはあれ、低くなることはない。従って制度選択にあたって、個々の任期満了時の試算をする必要性はない。

[その他
16.当局が求める制度選択に回答しない教員も、地方独立行政法人法に規定されているように、その身分は労働条件とともに新法人に包括的に移行すると考えるがいかがか。仮に、その身分と労働条件が新法人に包括的に移行されないことがあるとすれば、どのような場合か、また、その理由はなにか。
地方独立行政法人法第59条第2項は、「移行型一般地方独立行政法人(一般地方独立行政法人であってその成立の日の前日において現に設立団体が行っている業務に相当する業務を当該一般地方独立行政法人の成立の日以後行うものをいう。以下この章において同じ。)の成立の際、現に設立団体の内部組織で当該移行型一般地方独立行政法人の業務に相当する業務を行うもののうち当該設立団体の条例で定めるものの職員である者は、別に辞令を発せられない限り、当該移行型一般地方独立行政法人の成立の日において、当該移行型一般地方独立行政法人の職員となるものとする。」と規定している。従って、「その身分は労働条件とともに新法人に包括的に移行する」訳ではない。地方独立行政法人法第47条の反対解釈から、一般地方独立行政法人の職員は、公務員としての身分を有しないし、労働条件は、地方独立行政法人法第57条の規定に基づき法人が定める就業規則によることとなる。

17.「研究員」の基本給の上限は375万円とされているが、退職金を算定する場合の基本給も同額であれば、大幅に退職金が減額される「研究員」が生じる可能性があると考えるがいかがか。不利益変更にあたらないか。
第4回経営準備室運営会議で基本給額をベースにした退職手当の算定方法を提示している。その際、平成16年度末に退職した場合と比較し、不利益にならないよう調整することとしている。

18.法人の人件費は、運営費交付金の物件費と別枠で交付されるのか。ベースアップのための予算は考慮されているのか。また、適切な人件費率とは、どの程度と考えているのか。
運営費交付金は、人件費相当と物件費相当が別枠で交付される訳ではない。ただし、法人の予算としては人件費と物件費の区別をする必要はあると考えている。社会経済状況を勘案し、ベースアップが必要となれば、その時点で予算措置をすることとなる。また、人件費率については、公立大学と私立大学で算定根拠が異なるなどその概念自体に様々なものが存在する。同じベースで他大学と比較できるよう算定根拠について今後、整理した上で、どの程度の水準が適切か検討していく。

19.雇用保険の掛け金が新たな負担増となるが、「17年3月時点での給与を下回らない。」というのであれば、雇用保険の掛け金相当額は、給与に上乗せされるべきだと考えるがいかがか。また、任期満了で退職する場合の雇用保険の取扱いは、自己都合退職となるのか、法人都合退職となるのか。
新制度では、任期満了の際に、求職のために1年更新で2年まで雇用継続を行うこととしている。厚生労働省では、雇用保険の取扱いについて、労働者が次の仕事を探すための時間がどれだけ担保されているかを勘案し、厚生労働省が個別案件ごとに判断するとしているが、一般論としては、求職のための雇用継続の制度があれば、自己都合退職の扱いになるとの見解である。

20.新規採用者や現行4大学の教員が昇任する場合の初任給の決定方法が明らかでない。現行の決定基準に変更はないと考えて良いか。変更があるとすれば、どの点か。
平成17年度の新規採用者の年俸決定方法は、前職の給与水準等も踏まえた年俸に格付ける方法を検討している。昇任については、平成17年度は現行の給与決定方法で算定した額の直近上位の額となる。平成18年度以降は、都の給与条例から大学教員について規定する部分が削除されるので、平成17年度のような方法では算定できなくなる。昇任時格付けなど新たな方法による年俸算定を検討する予定である。

21.選択する制度によって、勤務時間、研究費、教育・研究条件、相当する校務などに差異を設けるのか。設けるとすれば、その内容を明示すべきと考えるがいかがか。また、選択する制度によって上記の事柄についての差異を設けるとすれば、その合理的な理由はなにか。
選択する制度により、勤務時間、研究費、教育・研究条件、相当する校務などに差異は設けない。

22.制度選択にあたって、少なくとも以下の事項が明示される必要があると考えるが、いかがか。また、いつ示されるか。
  @労働契約の期間
  A就業の場所・従事すべき業務
  B始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働(早出・残業等)の有無、休憩時間、休日及び労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  C賃金の決定、計算・支払いおよび賃金の締め切り・支払いの時期
  D退職に関する事項(解雇の事由を含みます。)
  E昇給に関する事項(上記6項目は「必ず明示しなければならない事項」)で、また@〜Dは「書面によらなければならない事項」)
  F退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法および支払時期
  G臨時に支払われる賃金、賞与および最低賃金額に関する事項
  H労働者に負担させる食費、作業用品などに関する事項
  I安全・衛生
  J職業訓練
  K災害補償・業務外の傷病扶助
  L表彰・制裁
  M休職
労働基準法第15条及び同施行規則は、労働契約の締結に際し明示すべき事項を規定しており、就業規則に明示する事項ではない。なお、労働契約は年度末に配布し、法人設立後、正式に締結の手続きを行う。

2004.12.20新法人における賃金雇用制度に
関する緊急要求に対する回答

1.設立本部ならびに新大学法人の経営責任者は現4大学に在職している教員に「新制度」「旧制度」の選択を求める前に、労働基準法が求める「労働契約に際して明示すべき労働条件」15項目(注1)の内容(文案)を組合に対して提示し、協議すること。
緊急解明事項の22の回答に同じ。

2.さら「任期・年俸制」については労働基本法に定める「契約締結時の明示事項等」の3項目(注2)に加えて、新法人における「評価基準」「評価法」の案を示し、組合と協議すること。
再任基準も含めた業績評価制度については、現在、「年俸制・業績評価検討委員会」において検討を開始したところであり、その検討結果を受けて具体的に制度設計する。評価基準や評価法の策定にあたっては、専門分野ごとの特性に配慮し、策定後、組合に提示する予定である。

3.当局が称するところの旧制度を選択した場合も、現行通り昇給できる制度とすること。
昇給は実施しないが、社会経済状況をみてベアの改定は行う。また、扶養家族が増えれば扶養手当の変更は行うなど手当は状況の変化等を反映させるものとする。

4.当局が称するところの旧制度を選択した場合も、現行通り昇任できる制度とすること。
昇任は実施しない。

5.任期制の導入は、教育研究に責任を持つ部署で慎重に検討し、「大学教員任期法」に基づいて慎重かつ部分的に導入すること。
「大学教員任期法」に基づき、「多様な人材を必要とする教育研究組織」には1任期原則5年以内の任期制を導入する。それ以外の組織には労働基準法第14条に基づく有期雇用、任期制を導入する。この場合、博士号を有していなければ1任期原則5年以内、それ以外は1任期原則3年以内となる。なお、どの組織が「多様な人材を必要とする教育研究組織」であるかについては、第7回経営準備室運営会議において提示している。

6.病気休職、介護休暇、育児休業等の取得期間は、任期から除くこと。
任期からは除算しないが、再任期間の制限(研究員8年、准教授10年)の期間の算定からは除算する。なお、教授の場合も含めて、病気休職、介護休暇、育児休業等の取得が再任審査に何ら影響させないような審査基準としていく。ただし、病気休職については、再任審査の時点で病状が重とくで回復する見込みがないと判断されるような場合の取扱いについては別途検討したい。

7.上記の要求項目を満たした上で、制度選択を求めるとすれば、個々の教員に自らの生活設計を考慮する熟慮期間(少なくとも一ヶ月程度)を設けること。
熟慮期間は設ける。

(注1)労基法第15条、同施行規則第5条
  @労働契約の期間
  A就業の場所・従事すべき業務
  B始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働(早出・残業等)の有無、休憩時間、休日及び労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  C賃金の決定、計算・支払いおよび賃金の締め切り・支払いの時期
  D退職に関する事項(解雇の事由を含みます。)
  E昇給に関する事項(上記6項目は「必ず明示しなければならない事項」)で、また@〜Dは「書面によらなければならない事項」)
  F退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法および支払時期
  G臨時に支払われる賃金、賞与および最低賃金額に関する事項
  H労働者に負担させる食費、作業用品などに関する事項
  I安全・衛生
  J職業訓練
  K災害補償・業務外の傷病扶助
  L表彰・制裁
  M休職
(注2)
  @使用者は、有期契約労働者に対して、契約の締結時にその契約の更新の有無を明示しなければならなりません。
  A使用者が、有期契約労働者を更新する場合があると明示したときは、労働者に対して、契約を更新する場合の判断の基準を明示しなければなりません。
  使用者は、有期契約労働者の締結後に@またはAについて変更する場合には、労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければなりません。