ホーム > 手から手へ

2389号

  


 「教員の新たな人事制度」の交渉経過と合意の内容について
−「全員任期制」撤回など、さらなる要求の貫徹のため、
組合員の団結と全教職員の運動への参加を訴える− 

  
2005年12月12日  東京都立大学・短期大学教職員組合中央執行委員会

*********************************
   
はじめに      
 11月30日、組合は当局の提案した「教員の人事給与制度」に示された内容について、法人がこれまでの「新旧制度」に代わる人事制度として提案することを 基本的に了解することで当局と合意した。このことをもって法人当局は内容の詳細には触れないまま事務ルートなどで「組合と合意した」と伝達しており、一部に 誤解も生じている。しかしながら、もちろん組合は全員任期制という当局の方針を認めたわけではないし、明確に反対の立場を堅持している。もとより現教員の 任期制移行については本人の同意が必要であることは、当局も指摘しているところであり、「全員任期制」は法人当局の願望であるに過ぎない。組合は、この新たな 人事制度が以前から求めていた「旧制度」教員の昇給・昇任問題を根本的に解決させるものではないことは認識しつつも、交渉に一定の進展がみられたことをふまえ 合意に至った。
 ここでは「合意」の内容と、今後の協議課題などについて組合中央執行委員会としての見解を述べるものである。

 1.交渉経過と合意内容
 法人の人事給与制度は、4月以来混乱した状態にあった。「新制度」は任期制における再任基準も決まっておらず、職務給、業績給などの算定の基準もはっきりしないうちに、 とにかく導入が強行された。また「旧制度」は昇給も昇任もないという、教員に任期制を強制するための前代未聞の懲罰的な措置である。当局が本則としたいと考えている「新制度」 は教員から支持されるものではなかった。そのことは制度選択を拒否し、「旧制度」を適用されている教員の方が多いことにあらわれていた。また教員の中には、こうした杜撰な 「新制度」と懲罰的な「旧制度」を作って教員に押しつけ、すでに他局に異動して責任を問われることもない旧大学管理本部参事、副参事等に対する怒りが渦巻いていた。
 組合は今年4月、「旧制度」教員の昇任、昇給を実施するように当局に要求した。しかし6月当局はこれに対して拒否の回答を行い、団体交渉は決裂したのである。その後、 7月にはそれまで交渉に当たってきた法人幹部職員がことごとく異動するという事態になった。
 以来組合は、当局に対し交渉再開の申し入れを行ってきたが、10月に入ってようやく団体交渉が再開された。組合は最重要課題として、「旧制度」教員の昇任、昇給について、 今年度定期昇給の実施を含む何らかの制度改善を行うことを前提として当局との交渉にのぞんだ。当局自身も4月以来の人事給与制度が極めて欠点の多いものであることを認めざるをえず、 これの改定を行い「教員の新しい人事制度について」をまとめ組合に提示した。
 2か月にわたる交渉を行ったが、「旧制度」教員の昇任、昇給は困難との当局の態度は変わらず、11月18日には交渉は膠着状態に陥った。その後、組合委員長と法人理事長との 会談を経て交渉が再開され、最終的に11月30日、全員任期制の押しつけは絶対に認めず、各論での相違点については継続的に対当局交渉を行うことを前提に、「教員の新たな人事制度」 に示された制度の大枠を基本的に了解することとした。
 すなわち年俸制・教員評価を全教員に適用することを容認し、他方、任期制選択は本人の自由意思で行うことの確約、任期の付く研究員(引き継ぎ教員)の再任回数増加と任期延長、 任期のつかない教員への昇給(当面2010年度まで)を認めさせた。また、制度の非合意事項については引き続いて協議することなどがその具体的な内容である。
 
 2.合意内容に対する評価 
 もちろん組合の要求がすべて貫徹できたわけではないが、今回の交渉過程と合意内容については一定の積極的意義があると考えている。まず組合が人事給与制度についての労使協議の 前提条件としてきた「旧制度」教員の昇給・昇任の具体的措置、助手・研究員の処遇に関する慎重な検討、評価制度を一方的に押しつけないこと、の三点に関して成果があったといえよう。
 しかしその一方で、「旧制度」教員の昇任問題について回答がないことが基本的問題として残っている。また任期なし教員の昇給が「基本給」に限定され、かつ2010年度までの時限措置 であること、研究員制度の引き続き協議などを得られたとはいえ、任期つき研究員の処遇が再任回数などにとどまり、「流動化促進」という当局の基本姿勢に変更がないということも問題である。 さらに給与水準の低下という不利益がありうることも事実である。
 とはいえ、「新制度」など人事・給与制度の現状に欠陥と混乱があることを、法人が事実上認めたことで、大学管理本部時代以来はじめて、人事・給与制度に関する一定程度誠実な交渉と なったことは重要な前進であると評価している。大学管理本部時代の団体交渉は、担当参事らの高圧的な態度、欺瞞的説明など、とても誠実な交渉態度といえるものではなかった。従って、 当局の対応における一定の変化の意義もふまえ、組合は今回の合意を帰着点ではなく、今後のさらなる改善につながる出発点として認識し合意したのである。      
 なお、教員評価制度の詳細は、教員組織で自治的に検討されるべきものであり、法人と組合の合意による決定になじまないと判断し留保した。ただし今後、年俸制・業績制度検討委員会等に対し、 透明性・公平性・公正さなどの重要な点について組合の意見を表明する所存である。特に、部局単位の評価を実施する場合には、その責任者については、選挙などの方法で、評価される者の信頼を 得た者が就任することは、大学が健全な発展をとげる上で極めて重要な要件であると認識している。

 

3.今後の課題
 今後の課題は以下の通りである。 
 まず今回法人が提案した制度の詳細についてさらに検討し、1月の制度選択に向けて継続的な交渉を行っていく必要がある。特に評価制度における異議申立の仕組みを人事委員会外の機関として 整備すること、住居手当・扶養手当・単身赴任手当などの回復を求めること、また当局の責任で教員に対して制度の十分な説明を行うことを求めていきたい。
 さらに任期制選択については、あくまでも各教員の自由意思を尊重し、強制的誘導は許さない立場でのぞむことをここであらためて強調しておきたい。また4月昇任、新規採用者について制度 選択権保証の要求を行うことなどが必要であると考えている。さらに「同一労働同一賃金」という原則から、任期の有無にかかわらず教員の昇給を同一条件のもとに行うことを求める。
 また任期のつかない教員の「昇任差別」の撤回を求める協議・交渉を進め、かつ「全員任期制」という法人側の態度の根本的転換を求めていきたい。そのためには、法人の最高責任者が大学の 現状を正しく認識し適切な判断を行う姿勢と、自らの責任の所在を明確にする姿勢とが不可欠であり、この点を組合は注視していることも付け加えておきたい。

 

展望 〜さらなる団結と運動へ参加を訴える〜
 われわれは、教員の人事給与制度をめぐる闘いが、通常の組合活動である教員の労働条件改善の目的の枠を越えたものであったと認識している。なぜならば「全員任期制」導入という当局の かたくなな姿勢は、本学の人事給与制度を魅力のないものとし、教員の流出と優秀な人材確保の行き詰まりをもたらした。従って、人事給与制度改善の闘いは、同時に大学の質の低下を食い止め、 大学の活性化をはかるという役割をもたざるをえなかったのである。獲得できたものはまだまだ満足のいくものではないが、組合員の団結と粘り強い運動があったからこそ、一歩前進が可能であった。闘いの新たな段階にあたり、引き続き組合員のさらなる団結と全教職員の運動への参加をお願いしたい。中央執行委員会はその先頭に立って奮闘する決意を表明する。