2294号
 

危機意識を共有し、提案を支持するとともに、法人化への備えを着実に進めよう
──「4大学教員声明呼びかけ人会」声明を受けて──

2004.8.4 東京都立大学・短期大学 教職員組合 中央執行委員会
 
  8月3日、「4大学教員声明呼びかけ人会」から、声明『新大学を巡る危機的状況に対し、すべての関係責任者に緊急対応を求める』が発表されました。教職員組合中央執行委員会は、この声明が現状の問題点を的確に指摘していること、また事態打開のために積極的に提案していることを高く評価し、真摯に受け止めていることをまず表明いたします。

 共有できる現状分析と危機意識
  「声明」は、文科省・設置審が7月早期認可を見送った原因として、多数の教員が新大学構想に大きな不安と懸念をもっていることを指摘し、とくに構想の具体化が進むにつれて明らかになってきた運営に関わる基本的問題点を4点にわたって指摘しています。
  それらは、@ 教授会の教員人事権を否定した学則、A 任期制・年俸制、B 都から派遣される事務局長が学長を超える権限をもつことを可能とする定款案、C 固有職員のすべてを任期制とし、これとアウトソーシングでまかなおうとしている事務組織案、です。
これらのプランが、大学の自律性を損ない、教員の地位をおとしめ、学生の安定的かつ系統的な教育を損なう可能性が高いことは、組合もつとに指摘してきたことです。
 「声明」は、このような構想に基づく新大学が、それを担うべき教員と、入学してくるべき未来の学生をいかに失望させているかを、現4大学教員の大量流出(この2年間で100名以上)と受験産業のデータを示して明らかにし、この結果をもたらした原因が、管理本部と理事長・学長予定者が、現行大学の教員組織を排除し、学生の要望を無視して、見識も知識もないままに一方的に行政側の上意下達手法で作業を進めてきたことにある、と述べています。
 次いで「声明」は、開学、法人発足まで半年となった現在の移行、準備作業が危機的な状態にあることを次の2点について述べ、管理本部がそれを正確に認識し、誠意をもって対処するように強く要望しています。その一つは、新大学が現大学との継続性を無視していることと、一方的上意下達手法に起因する全体的見通しのない分断された作業であることによる複雑さと困難さに、担当させられている教職員が失望しており、作業自体が混乱していることです。二つめはさらに深刻で、東京都が再三表明しているはずの、現四大学の学生、院生の教育あるいは研究を保障するためのカリキュラムの整備、教職員の確保に対して手が打たれていないことです。
ここに指摘されている混乱や作業の不整合性は、組合にも多数の不満や不安が寄せられています。もともと、短大の廃止を含む、現4大学の組織替え、学部組織の整合性に欠ける新大学の発足だけでも非常に周到な準備が必要であるにもかかわらず、それに加えて新大学院を1年ずらして複雑な経過措置を加え、かつまた法人化への準備を同時に行うわけですから、全教職員が一丸となってあたっても困難な作業なのです。大学にそぐわない「上意下達方式」を至上とする管理本部はみずから教員集団の協力を得る道を閉ざしてきて、その強引さがここにきて大きなツケとなって現われてきたのです。そのしわ寄せが、現4大学の学生にくることは断じて許してはなりません。とくに廃止されようとしている都立大B類学生、短大学生の学習権を犠牲にしないよう厳重に監視する必要があります。
この状況に対して「声明」は、この状態が継続するなら、新たな就任承諾書の撤回という事態に至ることも想定されると警告を発しています。

 道理のある提案 
「声明」は、危機的状況を打開するために、新大学の責任者たちがこの状況を認識し、根本的な打開を目指す立場に立つよう促しています。すなわち、@理事長および学長予定者が新大学運営の基本問題についての教職員の懸念を認識し、その解決策を提案して現大学との協議を開始すること、A管理本部は現学生の学習権保障のために十分な教職員の確保を措置し、継続性を保障した準備作業を開始すること、B新大学学部長予定者は公平で透明な運営を図る立場に立つこと、です。
以上を提案した上で、「声明」は、新大学への移行時期について、「時間がないことを唯一最大の理由にして拙速に開学し、今後の長期に及んで禍根を残すのではなく、1年間の準備期間を追加して、新大学と法人のあり方に関して十分に事前検討を行って将来の発展の見通しをもった新大学を目指すことも選択肢に入れること」を理事長・学長予定者に対して求めています。
組合は以上の提案を道理のある、積極的なものと受け止め、この提案を、新管理本部長、理事長・学長予定者ならびに「指名」されている新学部長予定者が誠意をもって応じることを強く求めます。

 とくに法人化準備に関する組合の立場
組合は、昨年7月の地方独立行政法人法の国会成立以来、この法律が公立大学に適用された場合の危険性について訴えてきました。国立大学法人法に比較して、設置者の恣意的運用への歯止めが小さく、大学の本質を破壊して、単なる行政の一機関におとしめてしまう可能性が高いからです。不幸にして、現在計画されている「首都大学東京法人」は、その地独法悪用の典型例になろうとしています。
  成立してしまった法律によって、知事権限で法人化は可能となってしまった現在、教職員組合は、現4大学の教職員の地位と権利、生活を守ること、それを通して大学のあるべき姿と学生、院生の学び、研究する権利に全力をあげています。現に昨年来、数多くの団体交渉を重ね、多数の未決着事項の解決を目指して、任期制や助手の再配置などでも当局の提案を一定押し戻してきています。
そして、これらの諸権利、勤務、教育研究環境は、就業規則や各種労使協定の締結という形で実体化されるのです。それらの法的な締結は法人化された4月1日ですが、それ以前に法人に対する正しい認識を学内に形成し、強固な組合を作り上げておかなければ、悲惨な無権利状態と違法な労働状態が横行してしまうのは、先行した国立大学法人の実態が示しています。
したがって、組合の基本姿勢としては、最短の法人化、すなわち来年4月を想定して準備を進めていかなければなりません。
  「声明」が正確に指摘しているように、来春の新大学の正常な発足を危ぶませる事態が次々に生じており、果たしてこのまま開学をさせてよいのかという懸念が教職員のみならず学生、院生、卒業生等大学関係者の中に広がっています。組合もまったく同じ危機意識をもっています。その点で、当局および新大学、新法人の責任者が、「声明」の提案を受け入れて、現状を根本的かつ詳細に検討し、移行に必要な各分野の準備作業を有機的、合理的に進める方策をとること、その前提として、これまでの姿勢を改め、直ちに現大学の教員組織と対等で実効の上がる協議を行うことが決定的に重要であると考えます。私たち組合が来春の新大学発足に反対することになるのか否かは、当局および新大学、新法人の責任者の今後の行動にかかっているのです。

 私たちは新大学を巡る状況を打開する運動を立場の違う他団体と共同して進めながら、教職員の諸要求の実現と、今後急速に具体化が進むであろう法人構想に対して、機敏に、周到な準備で対抗し、すべての働き学ぶ者の権利が尊重される組織を実現させる立場でいっそう奮闘することを表明いたします。