ホーム > 手から手へ

2352号

  


差別的な傾斜的研究費配分に抗議する!
―5大学の基本的教育・研究を維持できる抜本的見直しを求める―    
  2005年6月16日   東京都立大学・短期大学教職員組合中央執行委員会

 本年度傾斜的研究費における旧大学所属教員の差別的扱いについて、厳重に抗議し、様ざまな問題点を持つ研究費配分方式についての 抜本的な改善を強く要求する。

 1.傾斜的研究費からの旧大学所属教員除外は許されない
 
 法人は本年度の研究費配分において、昨年度同様、基本的研究費を大幅に圧縮して傾斜的研究費を大幅に とるとともに、傾斜的研究費の応募は研究代表者・研究分担者とも新大学所属教員に限るとした。
  旧大学所属教員を傾斜的研究費から除外する扱いは、「意思確認書」未提出者を除外した昨年度の差別的扱いに 通じるものである。
  昨年度の研究費配分は、新大学への移行を教員一人ひとりに強権的に迫る管理本部による「意思確認書」提出要求 から新大学設置申請のための「就任承諾書」提出という緊張した期間の中で行われた。四大学との間に協議も行われず、 構想についてまともな説明もなければ発言の機会さえ与えられない、そのような新大学に就任するかどうか、多くの教員 が戸惑い、迷い、悩む中で、大学管理本部はその疑問に応えるのではなく、行政の言葉遣いとはとうてい思えないような 恫喝的言辞さえ用いて、「意思確認書」「就任承諾書」の提出を迫った。昨年度の傾斜的研究費は、そのような一連の強 要手段の重要な一つとして用いられた。例えば、新大学就任予定者以外は認めないとしながらも、就任予定のない定年退 職予定者でも新大学に「寄与する意思」があれば応募を認めるなどは、まさに大学管理本部に協力的であるか否かで教員 を差別したことの端的な表れであった。
  このような研究費配分を含む一連の新大学設置・法人化の進め方は、四大学教職員の中に大学管理本部と発足する 法人に対する強い不信を生み出したばかりでなく、この過程は、各学部・研究室などの中にも、教職員相互の様ざまな 亀裂を残すことになった。
  本年3月末、新大学と法人の発足を目前に、大学管理本部は組合に対し、新たに発足する法人は教職員との間の信 頼関係の回復に努力を払うことを表明した。組合はそのような表明を受けて、3月29日、覚書を大学管理本部との間に 交わし、良好な労使関係づくりを目指して、就業規則・労使協定をはじめとした懸案事項について引き続き協議を行っ ていくことに合意した。4月以降の交渉過程は、そのような信頼関係の回復に向けての並々ならぬ努力の積み重ねで あった。
  しかるに今年度傾斜的研究費をめぐる扱いは、そのような期待を裏切り、昨年の大学管理本部の強権的な態度と一 連の事態の「苦い記憶」を蘇らせるものであった。法人の主観的意図が仮に昨年の主旨や目的とはちがうものであると 説明されても、昨年の強烈な体験を経た教職員にとって、法人の姿勢を疑わせるには、十分すぎる行為である。組合は これを容認することはとうていできない。
  新大学就任を保留して旧大学に残留した者ばかりではなく、新大学に就任したなかでも少なからぬ教員がわだかまり を持ち、将来的な見通しを未だに留保している。すでに近々に他大学転出を表明したり希望している教員も少数にとどま らない。そういう状況を十分に認識することなく、このような措置がとられたのだとすれば、法人のその判断は、大学の 将来をきわめて危うくするものである。
  組合の旧大学所属教員除外撤回要求に対し、研究分担者には旧大学教員も加わることができるとのわずかな修正が行 われた。組合の指摘に少しでも応えようという姿勢は評価できないわけではないが、今回の措置が多くの教員にもたら した意味の大きさに比べ、この修正はあまりにわずかのものである。組合は、このような措置が教職員の法人への信頼を 大きく損なうものであることを法人が十分に認識し、今後再びこのような措置をとらないことを強く求める。

 2.基礎的教育・研究活動を維持できない基礎研究費を抜本的に改善すること
 今年度の研究費配分をめぐって、もう一点、指摘しておく必要があるのは、研究費全体に占める基礎的研究 費 の割合である。昨年度よりはその割合がやや増えたとはいえ、その実態は、教育・研究の基礎単位における基本的な教育活動 ならびに経常的な研究条件維持に必要な額からはかけ離れている。
  昨年度の傾斜的研究費についても、そのほとんどが重点研究にではなく、実質的には基本的な教育ならびに基礎的研究 条件維持のために使われたことは、法人幹部を含め学内の皆が周知のことである。それにもかかわらず、今年度再び、抜 本的な修正を行うことなく、このような方式がとられたことは重大である。
  とりわけ今年度は、基礎研究費部分に実験系・非実験系の格差がつくられ、実験系・非実験系の指定のされ方さえ不明瞭 という事態の中で、突然、非実験系に指定された研究室を中心に、その領域の基礎的な邦文学術雑誌の購読継続さえ困難に なるなどの混乱が生じている。こうした事態は、教員の研究以前に、学生・院生の学習の基礎的条件そのものを著しく損な うものである。
  今年度も傾斜的研究費の多くは、実質的には、こうした基本的教育活動と基礎的研究条件維持のために使われざるを得な いことは、誰もが認めていることである。そうだとすれば、それにふさわしい、十分な基礎研究費配分を前提とした研究費 配分に直ちにあらためられるべきである。
  さらに付け加えれば、傾斜的研究費が、実質的には学生・院生のための基礎的学習条件整備に使われざるを得ないこと、 学生・院生の大多数は未だ旧大学所属であることを考えても、傾斜的研究費から旧大学教員を除外することは不当である。 旧大学所属学生・院生の教育の十分な保証は、都議会における答弁等でも、大学管理本部が再三にわたって表明してきたこ とであり、差別的配分は、実質的にはこうした学生・院生への差別にもつながるものである。
  さらに来年度に向けては、新たな危惧も存在する。東京都並びに法人は、来年度、さらに新たに産業技術大学院を、法人 の下におかれる新大学として計画している。法人の傾斜的研究費を新大学に厚く配分するという今年度の考え方が踏襲された 場合、来年度は、旧大学教員はおろか、首都大学東京所属教員に対する研究費ですら、産業技術大学院への優先配分により減 額させられることはないだろうか。
  東京都からの運営費交付金について、3月以前、大学管理本部は、産業技術大学院など都の政策に基づく新たな大学・部局 等の設置にあたっては、別途予算措置が行われ、現大学運営のための財源に影響を与えることはないと説明してきた。法人と 東京都がこの見解を引き継ぐのであれば、産業技術大学院等、新たに設置される大学・部局があろうとも、それが研究費財源 を含め現存する5大学の教育・研究条件に一切影響させないということを明言すべきである。
                            以上