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2488号

最大で120万円の差!
業績給への大幅成績率導入に反対する
国立大に劣る基礎的給与是正が先決


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 法人事務局は、組合に対し、本年度から実施する業績給への成績率導入について、規定上の最大値である最上位プラス15パーセント、上位プラス5パーセント、最下位マイナス15パーセントを提案してきました。 これは昨年12月、組合と多くの学内世論を押し切って決定された2007年度からの年度評価本格実施に基づくものです。 これにより各部局ごとに昨年度の年度評価結果に基づき、各部局ごとに最上位10パーセント以内、最上位と上位を併せて30パーセント以内の者に対して、今年度業績給(6月・12月支給)について上記の成績率を上乗せするというものです。 また年度評価結果Cの者については減額となりますが、C評価については人数枠はなく、絶対評価で該当する者がいなければゼロでもよいとされています。
  業績給の支給率は昨年度実績で基本給・職務基礎額の月例支給額の4.5ヶ月です。 したがってそれに基づけば、提案通り実施された場合、最上位と中位との差は月例支給額の0.675ヶ月分、一般教員で最大約51万円余、仮に最下位者がいたとするとそれと最上位との差は1.35ヶ月分、最大102万円余になります。 また管理職ではそれぞれ実に最大約60万円・120万円もの差となります。
  成績率については現行人事制度の確定時に、15パーセント・5パーセントは最大値であり、本格実施時にはその範囲内でおこなうこと、ならびに実施幅については組合と協議することが確認されていました。

 組合はこのような大幅な成績率を最初から導入することに反対し、成績率ではなく教員の基礎的給与そのものの是正にこそその原資を使用することを求めます。

見切り発車で50万.100万の格差は不当
  第一に、教員間の協力・協働が強く求められる大学という場において、このように大幅な給与格差を持ち込むことは、教育や大学運営などにおける教員間の関係を大きく損ないかねません。 確かに毎年各教員が担っている授業・学生指導や各種委員会などの負担には差があります。 そのためこうした負担の差に報いるために業績給成績率を利用すべきなどの声も聞かれます。 しかしこうした負担は、本来、すべての教員が平等に担うべきものであり、1年間の中での調整が難しくても、数年間のスパンで平等化が図られるべきですし、これまではそのような努力がなされてきたはずです。 逆にこのような大幅な給与格差を持ち込むことは、負担に不平等があってもお金さえ払われればそれでよいという風潮を生みだし、負担を固定化したり、教員間の協働を損なうことになります。 全員ができるだけ平等に負担することを原則とした大学組織を前提とするなら、このような大幅な業績給格差はとうてい妥当とは考えられません。
  さらに支給根拠となる年度評価自体、試行実施から僅か2年、しかも昨年度については、年度末近くに突然一方的に本格実施に切り替えられたという経過があります。 試行実施初年度には様ざまな混乱があり、その検証も満足になされぬままに見切り発車された昨年度の年度評価結果をもってこのような大幅な業績給格差をつけることは、法人側の論理においてすら公正なものとはとうていいえません。

国立大との実質給与格差是正こそ必要
  第二に、教員給与をめぐりこの大学が抱える最大の問題は、実質給与水準の低さです。 現行の給与体系は、国立大学の給与表を参照してつくられていますが、本学では教員への扶養手当・住居手当が廃止されたため、若手・中堅の層を中心に、実質支給総額が大幅に低下しています。 仮に配偶者と子ども2人の4人家族であった場合、東京都時代の規定では両手当併せて44万円あまりが支給されていたことになります。 また同じく国立大では最大62万円あまりとなります。本学の競争力の著しい低下は、この間の教員公募の応募状況などに顕著に現れています。 その最大の原因が「全員任期制」にあることは明らかですが、こうした実質給与水準の低さももう一つの大きな要因です。
 教員への成績率導入は都派遣職員(東京都職員)の制度(成績率原資分をあらかじめ全員のボーナスから一律カット)とは異なり、別途その分の原資を用意するとしています。 しかしそのような原資があるのであれば、まずおこなうことは国立大等との実質給与格差を是正することです。
  法人化後の各国立大学の状況を見れば、交付金の減額などに伴う財政難のため、非常勤講師数の抑制をはじめとした人件費抑制が広がっています。 都からの交付金の毎年2%ずつの減額が約束されている本学においても、こうした状況は遠からず無縁ではなくなる恐れがあります。 いまある人件費原資を、何にこそ優先的に振り向けるべきか、その見識が問われます。